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アキバ探偵シリーズ 秋葉原八十八ヶ所お遍路事件 #3

「この数日、秋葉原界隈で不審な人物が多数目撃されているのだそうです」
ピアニストのように美しい人差し指を立てながら言う小林少年。

「不審な人物なんて、秋葉原では珍しいものじゃないだろう」
眉をひそめながら言う秋葉探偵。

「全く無礼千万だと言わざるをえないが、この秋葉公太郎も世間一般的には不審者として扱われる人間だ」
何故か誇らしげな様子を見せながら、全く自慢にもならないことを告げる。

「先生が不審な人物であることは、まあ妥当な評価というところでしょう。危険人物として即座に拘束されないのは、法治国家にあるまじき行為ですね!」秋葉探偵の世迷い言を即座に毒舌で返す小林少年。意外と辛辣である。

「…話を戻しますが、この秋葉原で目撃される不審な人物たちの行動にはとある"ルール"のようなものが見受けられるそうです」

「ふーむ、続け給え」

「はい。第一に不審な人物たちは毎日毎日、一日も欠かさず秋葉原の各地をで目撃されていること。雨の日も風の日も雷の日もRADストームが起こっている日もだそうです」

「…..不毛な小ボケはやめたまえ。小林くん」

「これは失礼」小さい舌をちょびっと出して、じぶんのおでこをコツンと叩いて謝る小林少年。可愛い。

「第二に不審な人物たちは一緒に行動しているわけでもなく、それぞれ単独で行動していること。同じような行動を見せながらもその行動に連携のようなものは見えないそうです」

「ふーん…..スタンドアローンコンプレックス…」意味不明の相槌を打ちながらも、道の傍らで呼び込みをする猫耳メイドさん…悲劇にも、今眼の前を通り過ぎたオタクには無視をされた….に目を向ける秋葉探偵。

しかし、小林少年はその目線がいささか下に向けられたのに気づいた!サイハイソックスとミニスカートの間に備えられた絶対領域に目を向ける秋葉探偵。

その目線の先に目がけて舌打ちをする小林少年。

「っち!あんな端女の格好をした女の、あざとさ全開のムーブのどこがいいんですかね….」

「口が過ぎるぞ!小林くん!そのあざとさにホイホイ釣られるのがJapanese O☆TA☆KUというものなのだ!」

我らの小林くんからの思慕を省みず、別の女に目を向ける秋葉探偵、ブッダファック!「….ああ、ついでにこっちへ曲がるよ」リバティー5号店の傍らの路地へ入っていく秋葉探偵。神よこの者に天罰あれ。

「先生!あんな女のものより、僕のこの美脚のほうが何倍も価値があります!全く….第三にですが」

「秋葉原で目撃される不審者達は、買い物も食事もせず一心不乱にアキバを練り歩いている…そうだろう?」秋葉探偵がチェシャ猫のような笑みを浮かべながら指摘する。

「!…先生どうしてお分かりになったんですか!ま、まさか僕への倒錯した執着から"秋葉原商工振興会"に話を聞きに行っていた際、逐一この小林を監視していたんじゃ….」

もう、先生のヤレヤレ系病みコミュ障ストーカー男子~!と体をくねらせながら、嬉しそうに惚ける小林少年。少なくとも秋葉探偵は男子と呼べる年ではない。

「世迷い言はやめたまえ!小林くん!….そして、この私を誰だとおもっているんだね?」

アイドルのガチャガチャが敷き詰められた日の差さない裏路地で、いきなり腰を下げた姿勢で両腕を振り回し、ポーズを取り始める秋葉探偵。

「他の場所ならいざ知らず!この秋葉原において、この私に解き明かせない謎は一つもなし!」

「秋葉探偵、秋葉公太郎!この事件も解決すると宣言しよう!」
宣言と同時に両腕の位置を広げ、両手の指を猛禽類のように曲げる秋葉探偵。アホか。

「….まずは、探偵らしくホシを尾行するところから始めようか」

その目線の先には先程、メイドさんの呼び込みを無視した1人のオタクが、一心不乱に何かを求めるかのように歩いて行く姿があった。

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