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一時保護施設でも「楽しい学びの場」を!

 一時保護施設とは虐待やその他の理由で児童相談所に保護された子どもが、支援計画や次の生活場所が決まるまでの一定期間を過ごす施設です。Kacotamでは、社会福祉法人扶桑苑が運営する一時保護施設2か所に訪問し、学習支援を行っています。
今回は、実際に一時保護所での学習支援(ポル)に参加している職員ちーちゃんが活動において大切にしていることを紹介します。

小さな目標をつみかさね、達成を一緒によろこぶこと

ポルでは多くの場合、勉強が苦手だと感じている子どもと関わります。学習への苦手意識を持っている背景は様々です。一時保護を繰り返し学校に継続して通えなかった子ども、虐待を受け、安心して勉強をしたり人間関係を作ったりすることが難しい子ども、発達障がいや知的障がいをもつ子ども、その複数の背景を持つ子どももいます。すでに学習への苦手意識が強いため、学習に対して強い抵抗感を見せる子どもが少なくありません。
 
こうした子どもが安心して学習に取り組める環境を作っていくために、私が大切にしているのがスモールステップのつみかさねです。スモールステップとは、最終的に達成したい目標までの過程を細かく分けて考え、小さい目標の達成を継続することで最終的に大きな目標を達成する方法です。
 
学習におけるスモールステップというと、基礎的な計算ができるようになるといった段階をイメージしますが、学習への抵抗感が強い子どもの場合は「子ども自身が学習したいと思う」というステップが最初の重要な目標になります。ポルで5か月ほど関わっている中学生のSくんも、学習時間になると自室の布団にもぐって出てこなくなったり、その日の担当メンバーに「今日は違う人に担当してほしい気分だったから勉強しない!」と言い放ったりと、様々な方法で学習を拒絶していました。そのためメンバーとも相談の上、Sくんの場合は次のようなスモールステップを設定しました。

  1. 毎日参加するメンバーAと関係を作り、安定したコミュニケーションがとれるようになる

  2. メンバーAと一緒に、Sくんが好きな学習を行うことができる

  3. A以外のメンバーと安定したコミュニケーションが取れるようになる

  4. A以外のメンバーと一緒に、Sくんが好きな学習を行うことができる

このスモールステップを通じて、Sくんの学習への抵抗感は少しずつ和らいでいきました。上記のかかわりを行っていく中で、Sくんは誰が自分の担当メンバーか前日のうちに分かっていると気持ちを作りやすいこと、他の子に勉強で間違っている姿を見られたくないこと等、Sくんにとって安心して学習を行うために必要な事項が分かり、学習環境づくりの改善にもつながりました。最終的には、Sくんはどのメンバーとも学習に取り組み、習ったことが無い範囲の学習までできるようになりました。

学習の時間が「楽しみ」になるために

一時保護は、虐待や親との死別など子どもにとって非常に辛い経験が前提にあり、一時保護中も虐待のトラウマや他の子どもとの共同生活によるストレスの中で生活をしています。そのため、学習に取り組むこと自体も大きなストレスとなり、学習への嫌悪感が一層強まってしまうこともあります。こうした負の連鎖を防ぐためにも、学習の時間が少しでもポジティブな経験になるよう心掛けています。最初は机に向かうことすら難しかったSくんも徐々に学習に向かう時間が増え、「カコタムの人とする数学はけっこう楽しいかも」と伝えてくれたことがありました。関わりに頭を悩ますことも多いですが、こうした子どもの変化や頑張りに触れたときのやりがいは計り知れません。
 
ポルの時間が子どもたちにとって少しでも「楽しみ」な時間となるように、そして私自身もその瞬間をとても楽しみに日々活動しています。


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