掌編小説 ミニトマト ショートショート 文芸
朝。ぼくはベッドから起き上がると、録画しておいた世界を旅する番組を見ながら、ルーティンのストレッチ体操を始める。
首を回し、次に肩を回し、腰を回す。そして、胸筋を広げ、左右に動く有酸素運動。これで、耳に溜まっていたリンパ液が流れる。
ぼくは、リンバが溜まりやすい。梅雨の季節は、特にめまいや偏頭痛が酷かった。
ストレッチと有酸素運動を始めてからは、ずいぶん体調も良くなった。
ぼくは、麦わら帽子をかぶると、玄関から、かごを持って外に出る。
日が昇り、木々が明るく見える。山はまだ、上の方が白くもやっている。微かな風が心地よい。
ぼくは縁側の下から、長靴を取り出す。黒い野暮ったいやつだ。
だけど、長靴を履くと、野菜についた朝露がつかない。結構、便利だ。
ゴム草履から、長靴に履き替えると、ハサミと、水色のたらいを手に取り、裏庭の菜園に向かう。
ぼくの菜園は、いろいろな野菜を少しづつ植えている。たくさんのものを飢えていると、収穫の時期がずれて、生長が楽しめて、収穫が楽しみになる。
昨日、夕立ちがあったから、野菜はどれも葉や茎に、雫がついている。とうもろこしの上には、かたつむりがのんびり寝そべっている。
サラダ菜の伸びた葉を、少しづつ切って、サラダ菜から命を少しわけてもらう。パセリからも少し。みつばからも少し。
ミニトマトもずいぶん伸びてきた。青い実が連なっている。その中に、赤い実がある。
赤い実をそうともぐ。青い実が落ちないように。
赤い実は、3つあった。今にも弾けそうなくらいにみずみずしい。
ミニトマトをたらいに入れ、野菜たちを洗うことにして、手水の蛇口を開くと、たらいに水が満たされていく。野菜たちを洗い。かごに入れる。
水に磨かれた野菜たちは艷やかだ。
かごからミニトマトを摘んで、口に含む。ミニトマトを噛むと、口いっぱいに果肉が弾ける。
甘酸っぱい朝のひととき。
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