見出し画像

掌編小説 いつもハッピーエンド 「会いたいよ」 ショートショート 文芸

 ああ、なんであんなこと言っちゃったんだろ。ソラ、怒ってるかな。
 昨日のこと、何度も、思いだしてしまう。放課後、がらんとした教室で、部活終わりに、ソラと机の上に座って喋っていた。
 教室は、夕陽が差し込み、ソラのショートカットをオレンジ色に変えていた。風がカーテンを揺らし、心地よ風が私たちを吹き抜ける。
 ソラは、ケントの話ばかりしていた。ケントが髪型を変えてかっこいい。ケントの服のセンスがいい。なんて、私は正直、聞きたくなかった。でも、ソラと一緒にいられるだけで幸せだった。

 ソラが、ケントがって言った時、つい、言っちゃったんだ。私とケント、どっちが大事なのって。ソラは、一瞬、驚いた顔になって、次に、困った顔になった。ソラは、ぽつり言った。どっちも大事だよ。

 ソラとは、お互い気まずくなって、黙ったまま、どこにもよらず校門で別れた。
 昨日は土曜日で、いつもならラインで会話をするのに、ソラにラインを送ったきり既読もつかない。
 やっぱりソラは怒ってるんだ。

 月曜日、恐る恐る教室に入る。
 ソラは、教室の机に座ってる。
 教室に入ってきた私をソラが見つけた。

 ごめん、アカネ、金曜日、スマホ落としちゃってさあ。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?