掌編小説「フレンチとーすと」 3分 #ショートショート #文芸
「おはよー、いつも早いね」彼女が起きてきた。彼女は、日曜日の朝が遅い。僕は、彼女が洗面台に行っている間に、キッチンに向かう。
フライパンを火にかける。
冷蔵庫から、バターとタッパーを取り出す。
バターのアルミホイルを開けると、切り分けておいた、一カケラをフライパンにそうっと、入れる。
熱せられたフライパンに、バターがじわりと溶けていく。バターのいい香りが鼻の中に広がっていく。
フライパンを円を描くように回し、バターをフライパン全体に広げていく。
タッパーから、ひと晩寝かせた、たまご液シミシミの食パンを取り出すと、フライパンにのそっと、載せる。
僕のたまご液は、少し茶色い。
たまごに牛乳、黒砂糖。それにアイスコーヒーが入れてある。
カフェオレ風味のフレンチトースト。これがこだわり。
食パンを弱火でじっくり焼く。シミシミなので、中までゆっくり火を通すんだ。
片面が焼けたら、菜箸でつまんで、ひっくり返す。
おお、なかなかいい感じに焼けている。
彼女は、洗顔を終えて、顔を水色のタオルで拭き拭きしている。
フライパンのバターがチリチリと焼ける。もうそろそろ良さそうだ。
フライパンから、フレンチトーストを菜箸で、白い皿に載せる。
ほんのり茶色のフレンチトースト。
フレンチトーストの横には、ベランダ菜園のレタスとプチトマト2個を添える。
レタスもプチトマトも採れたてだから、ツヤツヤ、美味しそう。
「出来たよー」
髪をゴムで留めてる彼女に声をかける。
彼女は、
「ありがとー」
と、スリッパをパタパタさせて、テーブルにつく。
彼女はフォークで、フレンチトーストを口に運ぶ。
「おいしー、やっぱこれだよね」
彼女の笑顔が弾ける。
今日もいい日が過ごせそうだ。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?