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「ハゲタカのえじき」がなんだってんだい!

遊びのルールって?


「子どもにこんなふうに遊んでほしいなー」

大人はルール通り遊ぶ楽しさ「も」知っているので、
ついつい口を出してしまうことがあります。

ルールに書いてあるから、
これが「正しい」から、
ついついルール以外のことをやっていると
「ちゃんとやろうよ!」なんて言ってしまったりも。

せっかく準備したんだから
「思ってた通りに遊んでほしい…」
なんてことも頭によぎっちゃうかも。

例えばボードゲームを買えば、
もちろんルールが書いてあります。
作った人たちが、こんな遊び方が面白いですよ!
と教えてくれるのです。
そして確かにそのルールはたくさん考え抜いた後に
売られているのでやっぱり「面白い」です。
「なるほど!すごい!面白い!」と
唸っちゃうこともよくあります。

でもでもでもでも、
遊びは完全に自由なものなはず。

面白いと思う方に足したり引いたり
やんや言いながらつくれるもののはず。

そして、時にそんな遊びが
「私たちの遊び」となるのです。


みんなで繋いだ遊びのバトン


ある小学生とある遊びの話。

「他の子たちと遊べるだろうか…」
「みんなと楽しさや達成感を共有できるだろうか…」

2年のYくんはよく自分で作り出した遊びを
自分で作った登場人物同士で戦わせていました。

数字やサイコロ、オセロなどを駆使しながら
実にいろいろな対戦遊びを作り出していました。

ただ、他の子どもたちと交わる機会は少なく
他の人との距離感を掴むのも苦手なYくんです。
誰かと一緒に同じものを遊ぶことはほどんどありませんでした。

だけれども、タビノネの大人の間ではもっぱら
「最近、R(4年)にはかなりちょっかいかけてるよね」
「F(4年)の名前覚えたらその後報告きてくれてた!」
「どうやら他の遊びも結構気にしてますな…」
など他の子たちへの興味が出てきていることを
話したり報告しあったりしていました。

当のYくんも
「ねえ、たーこー!闇チームと光チームどっちが勝つと思う?」
と詳細はわからないオリジナルゲームの
勝敗予想をよく質問するようになっていました。

「ふっはっは。Yよ、たーこーはもちろん闇さ。」
そう聞くとYくんはカードやおはじきなどを
使ってゲームを始めます。
各チームの点数を書き込んでは、
「見て!光チーム3点!へへへ!」
と報告に来てくれるのです。

そんなYくんがある時から使い始めたアイテムが
「ハゲタカのえじき」というカードゲームでした。

ーーー

あ、初めに言っておくと、
このゲームめちゃくちゃ面白いです。
数字だけで騙し合い、駆け引き、戦略がたっぷり味わえます。
オススメ!

ーーー

だけど、Yくんが使うのは
ルールに書いてあるカードの半分の枚数。
裏側が紫色5枚と黄色10枚だけ。

もちろんこのカードだけでは
「ハゲタカのえじき」はできません。

というかそもそも、
1人では「ハゲタカのえじき」はできません。

Yくんは15枚全てのカードを裏返して、
紫の5枚を全部出す前に
黄色の10枚を出せたら勝ち。
プレイヤーは1人。
ゲーム内容も「ハゲタカのえじき」とは全く違います。

ここからYくんの1人の
「ハゲタカのえじき」が始まりました。
一歩目です。

この時にどの大人も子どもも
「ルール違うよ?こうだよ?」
と言わなかったことが、
「みんなの遊び」になるまでの二歩目。

しばらくしてから
「面白そうだね!やってもいい?」
と話しかけたタビノネの大人。スンバラシー。
三歩目。

Yくんが受け入れてくれる。
自分が作ったゲームで、
大人と一緒に勝ち負けに一喜一憂する。
これが四歩目。

その楽しげな様子を見ていた子たちが
「何してるの〜?」
と覗きにきます。

誰も「え、何これ、ルール違うよ!?」
とは言いません。
重要な五歩目。

簡単に説明をしてから
「ゲームマスター」と化したYくんが
素早くカードをシャッフルして
縦3、横5の列を作ります。
シンプルだけど絶妙な枚数のためか
ハラハラする展開が続出。

また人だかりが大きくなります。

中心にはゲームマスターYくんがいます。
Yくんはプレイヤーとなっている子が
負けても勝っても一緒に大盛り上がり。

この段階で、この遊びはYくんだけの遊びではなく
ほぼ「みんなの遊び」となりました。

「あ、これは完全にみんなの遊びになったぞ」
と思ったのはまたその翌日。

先に大人とYくんがこの遊びをしていると
遅れて帰ってきた子たちが、

「よっしゃ、今日の運試しだ!!」
「次やらせてー!」
「(先にやっていた)〇〇は勝った??」

と入れ替わり立ち替わりYくんのハゲタカをやりにくるのです…!

Yくんは、
「たーこーは今7連敗中!!!はははー!!」
と、いらない情報をみんなに宣伝しつつ(笑)

他の大人も子どもも
「今日は2回しか勝てなかったー!くそー!」
と一緒に面白がります。


そう、この間誰も

「ハゲタカのルール違うよ?」

と言わずに。

「面白いぜこれ」のバトンを
みんなで繋ぎ続け、

Yくんも誰がきても拒まず
一緒に楽しみ続けた結果、

「みんなの遊び」になっちゃいました。

そして気が付けば、
大人のいないところで
Yくんと学校も学年も違う子が
Yくんの配るハゲタカをやっているではありませんか…
おそらく一度も話したことのない2人ですよ!?

トイレに行って離席したはずのたーこーは
この光景に物陰から目を丸くして見守るのでした。

最高かよ…

ルールがなんだってんだい!
「ハゲタカのえじき」がなんだってんだい!

これがYと僕らの「ハゲタカのえじき」じゃい!!


後日談。

その後たーこーは8連敗でストップしましたが、
誰も抜けないダントツの連敗記録として君臨しています(笑われています)。

ちーん。

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