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ありきたりではない休日

あたらしい仕事を始めた。
高級ホテルのフロントなので、特に忙しくもなく、仕事も複雑ではないのに時給が良く、いままでやってきた仕事のなかではトップクラスに入るほどいい条件が揃っている。もちろん、働いている限り、ああもう消えてしまいたいと思うような出来事もあるが、それでもとりあえず働いている。

はじめてのオフの日に、髪を切りに行った。
新年気持ち新たに、そして仕事で長い髪を結くことがかなり面倒になったので、少し髪を切ることにした。
渋谷に新しくオープンした美容室に行ってみた。
予約のときに、「たくさん話したいか、会話は控えめか」と選択する欄があったので、控えめにしてみた。わたしは、会話を振ってこない美容師を知らない。また、その会話が劇的に面白かった記憶もない。
その美容室で髪を切ってくれたのは、わたしがはじめて出会った寡黙な美容師だった。マスクは上唇までずり落ちていた。鼻まで上げるか顎まで下げればいいのにと思った。第一印象。
その美容師とは必要最低限の会話しかせず、わたしは一時間弱で髪を切ってトリートメントをしてもらって、その美容室を出た。3500円。なかなかいい経験だった。あとで少しだけいい口コミを投稿した。
かなり軽くなった髪を手ですくと、なんだか気持ちも軽やかになった気がした。
その後、ドトールに入り、コーヒーとかぼちゃのケーキを頼んだ。一人で(チェーンとはいえ)カフェに入るなんてなんて贅沢だ。でもわたしはなんといったって職があるのだから。と思いつつも、コーヒーはSにしておいた。
そのコーヒーを飲みながら、なんて素敵な休日なんだろうとしみじみ感じた。かぼちゃのケーキはかなり美味しかった。美味しいに決まっている。かぼちゃなんだから。それをコーヒーとぐっと流し込むのがたまらない。これ以上の幸せはない。甘いものとコーヒー。パンプスとクレーム、慣れない環境にやられていた心が、一気に満ちた。

わたしの生涯の目標は働かないことだが、働いたことで休日が有意義になるのは働くことの数少ないメリットだと思う。わたしはこの三か月ほど、自分の目標にしたがってニート生活を続けていた。毎日が休日なのはたしかにとても素晴らしいが、その価値がだんだん薄れてきていたようにも感じる。休日とはいいものだ、と再確認できた一日。こんな素晴らしい一日が、ずっと続けばいいのに。

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