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うつ病とは何か?What is depression ?



うつ病の流行

 メディアでよく取り上げられるうつ病、季節性うつ、寒暖差うつ、新型うつ・・・。さまざまな言葉が溢れ、流行のように新たな言葉が生まれ、姿を消していく。あまりにも多くの言葉が出てくるため、混乱することが多いのではないでしょうか。精神科医以外の身体科医師、医療従事者、福祉関係者、教育関係者と情報共有が難しいと感じる原因がこれです。実は、うつ病という言葉はいくつもの意味を持っているのです。

2つの「うつ病」 ー疾患概念の拡大ー

 「精神障害とは何か?」という私の別記事でも紹介したように、精神疾患は外因性、内因性、心因性に分類されます。本来のうつ病は脳の病気であり内因性うつ病と呼ばれていましたが、DSMやICDといった操作的診断基準の普及により、原因を一旦棚上げし、うつ病の症状を呈していればうつ病と診断されるようになりました。症状を寄せ集めて診断をする症候群としてのうつ病となります。そのため、脳の病気としての内因性うつ病はもちろんですが、性格特性としてうつうつと考えやすい人、大きなストレスがかかった人、発達特性として環境に適応しづらい人などなど、多様な人々がうつ病という枠に入れられることになりました。新型うつというのは従来の脳の病気としての内因性うつ病と異なるということで、多様な原因をひっくるめた概念として一時期良く耳にしました。ある人が脳の病気としてのうつ病のことを話しても、受け取る側が多様な原因をひっくるめた症候群としてのうつ病として捉えるかもしれません。場面によってうつ病という言葉の示す意味が異なることが混乱につながっています。

うつ病の流行により治療も多様化

 うつ病という同じ言葉で括られても、原因によって治療は異なります。脳の病気としての内因性うつ病であればセロトニン、ノルアドレナリンなどの神経伝達物質のバランスを整える抗うつ薬の効果が期待できます。多大なストレスがかかりそれに反応する形で抑うつ的になっていればストレスを軽減させるために業務量、業務内容を見直すことが有効かもしれません。業務の大変さと比べて給料の低さなど待遇に不満があり、葛藤し、「自分の能力、努力が正当に評価されていない」と職場に他罰的になっている場合には給料アップや労働契約の見直しが症状の改善につながるかもしれません。脳の病気としての内因性うつ病であれば、まるで抑うつのスイッチが入ったかのように理由なく抑うつ的になり、周りの状況に気分が反応する能力がなくなってしまうことが特徴ですから、給料アップにより症状が改善することは考えられないのです。一昔前にうつ病と言えば脳の病気をさし、最近ではうつ病と言えば症候群をさすことが多いです。あなたのうつ病のイメージはどんなものでしょうか?

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