páseleで整う
その場所は店内に身を置くだけで落ち着きを与えてくれる。いいや、路地からお店までのアプローチに一歩足を踏み入れた瞬間から始まっている。
ステキな場所。この世界観は店主やその仲間たちが作り上げた場所だからこそなのだと思う。一人ひとりの想いが形になった場所。ここはそんな場所なのだ。
夏の終わり、アプローチの樹々に花が咲いている。百日紅の可愛らしい赤と白の花々。蜂がホバーリングしながら花の蜜を集めている。この木はなんの木なんだろう。トンボも飛んできた。こんな街中にも自然の営みがあることにホッとする。こんなステキな場所を見つけてくれてありがとう。ぼくにとってここは都会のオアシスのような場所なのだ。
ホットチョコレートにチュロスにコーヒー。この場所でしか味わえないものたち。谷中のこの場所で整う。チューニングする場所。都会に住んでると心がささくれ立ったりしぼんだり時には荒んだりすることだってある。そんなことがあったとしてもこの場所を訪れると、たった半刻ほどの滞在で調律され整う。「ありがとう」と心の中でつぶやく。来年の梅雨の頃にはきっと小麦が実っていることでしょう。楽しみにしていますね、店主さん!
お店を後にして余韻を楽しみながらいつものように上野公園へと向かう。途中、ヒマラヤ杉に挨拶することも忘れない。ここも大切な場所。「お元気で。また来ます」。
虫の音やそよぐ風に秋の気配を感じるようになった。季節を巡る散歩を言い訳にしてさり気なく手をつないだ瞬間、ふたりの関係もチューニングされた。
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