見出し画像

【映画評】アンソニー・ハーヴェイ監督『冬のライオン』(The Lion in Winter, 1968)。

 1183年のクリスマス、シノン城に英王ヘンリー2世(ピーター・オトゥール)とその妻アリエノール・ダキテーヌ(キャサリン・ヘプバーン)、彼らの息子達(リチャード/ジョフロワ/ジョン)、更には仏王フィリップ2世(ティモシー・ダルトン)が集い、騙し騙されの「室内劇」を繰り広げる。
 英王位継承をめぐる「アンジューヴァン・エンパイア」(アンジュー帝国)の一族の争いは、饗宴が催される広間から仏王の寝室、そして巨大なワイン樽の眠る地下室へと次第に舞台を狭め、これに従って映画も群像劇(近親相姦、男色)からヘンリーとアリエノールの愛憎劇へと収斂していくという仕組みだ。
 「ライオン」とは英王家の紋章であり、リチャード(アンソニー・ホプキンス)の後の異名(獅子心)をも孕む。かつて瀬戸川猛資は本作を「やがて花開く騎士道活劇の〝夜明け前〟を描いた」(『シネマ免許皆伝』)と「冬」に掛けて評した。本作の脚本家ジェームズ・ゴールドマンは後の『ロビンとマリアン』(1976)で騎士道活劇の「秋」を描くだろう。

〈引用文献〉瀬戸川猛資『シネマ免許皆伝』、新書館、1998年。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?