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【映画評】マイケル・ケネディ監督『ロビン・フッド―学園参上』(Robin of Locksley, 1996)

 現代のアメリカを舞台とする少年少女向けの「学園ロビン」物語(TV映画)である。親が宝くじを当てたお陰で金持私立学校に編入したロビン・マカリスター(デヴォン・サワ)は、そこでジョン・リトルやウィル・スカーレットと友達になり、ジョン・プリンス率いるいじめっ子たちと弓競技で対決する。中盤、ロビンは怪我をした友人の治療費を捻出する為、ジョンの父の会社のコンピュータに進入し寄付金を横領する。これを諌めるガール・フレンドのマリオンはロビンの両親が経営する馬競売会社の厩番だ。その厩舎で飼われている馬の名前がライオン・ハートでロビンを追うのがノッティンガムFBI捜査官といった具合である。
 中世のアウトローならいざ知らず、現行の州法下に生きる高校生ロビンが犯罪を犯して無罪放免となるはずもなく、仮装学園祭の弓競技会でジョンに勝利したのも束の間、直後に保護観察処分を受けることに。大統領との接見など望むべくもなく、ジョンの父に教会への寄付を認めさせるのが関の山なのだった。
 ロビン・フッド物語は「再話」される度に舞台となる「中世」を言わば「出し」として、実際にはそのときどきにおける「現在」を語っているという、これはその典型例というか、現代劇そのまんまなのであった。もともとは、19世紀に児童文学として再度かたちを整えたことで——とりわけ挿絵付きのハワード・パイル本によって――イギリスからアメリカ、世界へと広まった物語なので、その意味でもこの「子供向け」TV映画には正統性があると言えよう。

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