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内向きな日本人の具体的な特徴(日本人の性質の根幹シリーズ)

はじめに

 上の記事では日本人の性質の根幹には小規模なコミュニティ規模での内向きの思考があり、それゆえに個人という概念が乏しかったのではないかと論じた(詳しくは上の記事にて)。本記事ではその詳細な内容を具体例とともに紹介していこうと思う。なおこの記事はあくまで個人の妄想であり、学術的根拠は全くないことをご了承のうえ、お楽しみください。

第一章 日本人の他者とのかかわり方

 2021年に東京オリンピックが大盛況となったが、そのスローガンに「おもてなし」という概念があった。「おもてなし」とは日本人が接客をするときの矜持である。一方で前記事では日本人の善悪の判断には敵味方の区別が極めて重要であり、それ故に排他的となるという話をした。このように一見して矛盾する概念がなぜ日本人の価値観に同居しているのだろうか。本章ではそれについて詳しく論じていく。
 日本人が旅人を盛大にもてなすという風習は全国各地にあった。その理由はそもそもムラ社会は基本的に外とはほとんど隔絶された独立社会であり、外とのかかわりがほとんどなかった。それ故に旅人という外との接点を見逃してはならず、絶好の機会とばかりに外の情報を聞き出すのである。そのために料理や酒、時には自分の娘まで差し出して過剰なまでの饗応をするのである。これが「おもてなし」のもととなる風習である。
 このとき主人は客を味方と認めてはいるわけではない。あくまで客を外との玄関口としか認めていないのである。つまりこのとき客は他者であるが、自分にとって有益な他者である。それゆえに酒をたらふく飲ませて酔わせて本音を吐かせたときに自分らに危害が加えられそうな場合は寝静まった旅人を殺すのが当然であった。折口信夫が提唱する「客人」の文化すなわち外から来た旅人は精霊のようなものであるという概念は、つまり敵か味方かを判別する以前の境目の上に客が定義されていたという表れではないだろうか。

第二章 日本人の文化の形成

 現在日本を代表する文化といえば、やはりアニメや漫画といったいわゆるオタク文化と呼ばれるものである。今でこそオタク文化は広く市民権を得ているが、そもそもは少人数の仲間内(サークル)で自分らだけで楽しむという性質を有していた。それは仲間内だけに伝わる価値観であり、外から見れば異質な集団であり、迫害こそされないものの白い目で見られたものであろう。しかし、日本人の根本的な性質として内向きな思考があるという前提を置くと、このオタク的な文化の消費方法こそが日本の伝統的な文化の消費方法であったのではないかと考えられる。本章ではそのことについて論じていく。
 日本人らしい発想には常に内向きであるという特徴が存在するが、それは文化の消費方法にも如実に表れている。例えば和歌の読み方の変遷である。かつて和歌は短歌と長歌というジャンルがあり、五七調の中では比較的自由に詠めた。詠み手も貴族だけに限らず、防人など姿勢にも幅広く存在した。しかし、国風文化が形成されるに至って徐々に貴族の中だけという閉じられた空間でのみ発達するようになっていった。鎌倉時代には和歌の技法や作法というものが先鋭化しすぎていることに、藤原定家が嘆いていた。古今和歌集の解釈を伝える古今伝授などは非常に閉ざされた文化であった。能や歌舞伎も本来は、それぞれ農民の文化の田楽、町衆の女かぶきというように大衆に開かれた文化であったが、その発達の中で担い手を(世襲制などにみられるように、おそらく意図的に)削り、今では流派が云々など余りにも尖りすぎていて初心者には敷居の高いものとなっている。
 これらのようにメジャーな文化ではなくとも、例えば地域に根差した風習などは外から見たら訳の分からないものである。そういったものはやはり閉ざされた空間の中で時間をかけて醸成されいていったものであろう。オタク文化などもやはり価値観を同じくする少人数で集まり(もしくは一人)、閉ざされた空間の中で尖りに尖った文化を作り上げていくという性質を持つ。
 他者に背中を見せて壁を作り、内側で向き合ってこそこそと文化を形成させることこそが日本人本来の文化の形成の仕方であったのではないだろうか。

おわりに

 本章では内向きな日本人の気質が表れている例を「おもてなし」と「オタク」という観点から示した。特にオタク文化については本記事では扱いきれなかったものもあるため、今後につなげていこうと考えている。
 ここまで駄文にお付き合いくださりありがとうございました。読了後はぜひ忌憚のないご意見をお寄せいただきたいです。また、どこかで誰かがすでに似たようなことを発信しているなどの情報がございましたら、今後の糧になりますので是非とも教えていただきたいです。よろしくお願いいたします。

 

 

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