殺生石は封印じゃないってば

 

 上記作品を投稿したきっかけについて
(拙作を読んでくださった皆さん、ありがとうございます)

 投稿したのは「妖怪やら化け物やら、人外が登場する話が好きなので書いてみよう」という安直極まる理由なのですが、他にも胸の内でくすぶる気持ちをどうにか解消したいという思いもありました。

 その気持ちは、2022年3月5日に殺生石が割れたニュースが流れた時に抱いたものでした。その時インターネット上でよく見かけたのが、2022年2月24日に始まったロシアのウクライナ侵攻と関連付けて『封印が解けて復活した九尾の狐が、戦争を起こした』という文面でしたが……
「あのー、殺生石は封印ではないんですけど。というか、割れたから復活したって、割れたから成仏した元のお話と正反対になってません?」
 と首をひねりました。
 (「殺生石」と打ち込むだけで、検索候補に「プーチン」が出るのにも辟易しましたが)

他にも、殺生石が割れた日にモスクワ行きの最終便が飛んでるからロシアに行ったとか
「2022年2月24日に始まったウクライナ侵攻の方が先なんですが」
という突っ込み待ちなんだろうか、と思うような発想も見かけましたが。
 他にも
「殺生石が割れてからろくなことがない」
 ……いや割れる前だろうが後だろうが、世の中はろくでもないことであふれてるんですが。魔女狩りみたいに、災厄や不幸が無意味に重なることを無理やり関連付けてるだけでは。
 と、突っ込みどくろ盛りだくさんの書き込みをたびたび見かけました。
「あれもこれも殺生石が割れたことに結び付ける。元の話では封印なんてされてない?知ったことか、結び付けたいから結び付ける!」
 という感じで、無理のあるこじつけ感がハンパない……。
 数か月後には、前総理銃撃事件にまでこじつける人も出る始末。
 そうしたものを見ても面白いとは思えなかったのは、それらが元ネタとなった伝説(殺生石を割られたことで玉藻前が救済されて成仏する)を捻じ曲げた上で、実際に死傷者が出ている戦争や事件に無理やり関連付けているからだろうなと思いました。
 中にはそれを、創作のアイデアだと勘違いしておられる方もいました。
 twitterで「100年後くらいに、そういうネタで書いてほしい」という書き込みを見た時は唖然としました。
 失礼ですが、酒に酔っ払った一時のうわ言みたいな不謹慎で浅慮な思いつきが、100年後も持続すると本気で思っていらっしゃるのかなと。
 個人的に妖怪の伝説や伝承は好きですし、それらを元にしたエンタメ作品も好きです。元の伝承には無い設定を付与した作品も。
 ですが新たに作り出した物語に結び付けるのではなく、実際の戦争や事件に結び付けるのはさすがにちょっと……。
 それは新しい玉藻前の物語を創作して楽しんでいるのではなく、失礼を重ねて申し上げますが、戦争や事件そのものを自分に被害が及ばない娯楽として楽しむ為に、殺生石の元の物語を捻じ曲げているように見えて、あまりいい気持ちはしませんでした。
 そうした気持ちを解消することも込めて『化け物たちのバカ騒ぎ』を書いたのですが、ご一読の上何かご意見いただければ幸いです。

 

 現在でも勘違いは続いているようで
「封印が解かれてしまった。源翁和尚もビックリだろう」
的な書き込みを見るたびに
「いや、封印なんて元の話にありもしないことがでっち上げられたことにびっくりなさってると思いますが」
と突っ込みたくなります。

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