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【フリー台本】夜中のコーヒー

・一人、または二人で朗読することを想定した台本です。
・動画や演劇、放送などの部活動にご自由にお使いください。動画にご使用の際は、画面に台本を映しても構いません。
・著作権は放棄しておりません。
・ご使用の報告は自由ですが、頂ければ喜びます。

【登場人物】
・モッチャン:モルモットのおじいちゃん。老人ホームに入所している。認知症があり、夜中に不安になって騒いでしまうことがある。

・シマちゃん:シマエナガの看護師。老人ホーム勤務の長いベテラン。優しい性格。

【凡例】
○から始まる文章は柱です。場面を表します。
○がついていない文章はト書きです。読んでも読まなくても構いません。
モッチャン、シマちゃんから始まるカギ括弧付きの文章は台詞です。

以下から台本が始まります。

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○老人ホーム・廊下(深夜)

モッチャン「助けて! 助けて!」

 巡回していたシマちゃん。

シマちゃん「あら、またモッチャンだわ」

 シマちゃん、モッチャンの個室へ向かう。

シマちゃん「失礼します。モッチャン、どうしたの」

モッチャン「助けて!」

シマちゃん「何を助けてほしいの?」

モッチャン「うん……何だったかな……」

シマちゃん「怖い夢を見たの?」

モッチャン「分からないんだけど……」

シマちゃん「分からないけど、助けてほしいの」

モッチャン「そうなの。シマちゃんなら、何だか分かる?」

シマちゃん「さあ、私にも分からないわ。モッチャンが分からなかったら、誰も分からないんじゃないかしら」

モッチャン「そうなの……。……コーヒー飲めばだめ?」

シマちゃん「夜中だからだめ」

モッチャン「あれは? カフェイン入ってないやつ」

シマちゃん「デカフェっていうんだったかしら。モッチャン持ってるの?」

モッチャン「うん、この前の面会で持ってきてもらったの。キャビネットに入れたよ」

シマちゃん「それじゃあ、探してみましょ」


○老人ホーム・サービスステーション

 モッチャンがコーヒーを啜っており、シマちゃんは介護記録を読み返している。

シマちゃん「モッチャンはコーヒー農園をやっていたのよね」

モッチャン「そうだよ。家業だったし、コーヒーが好きだったの」

シマちゃん「ご兄弟の農場もたくさんあるんでしょ」

モッチャン「兄弟も、子供たちも、孫たちも、みんなコーヒーを作ってるよ」

シマちゃん「そうなの。じゃあ私も、モッチャン一族のコーヒーを知らずに飲んでたかもしれないわね」

モッチャン「知られなくてもいいの。美味しいコーヒーは名前関係ないもの」

 モッチャン、プラスチックのカップを置く。

モッチャン「ごちそうさま」

シマちゃん「もういいの? おかわりは?」

モッチャン「もういいの。寝るかな」

シマちゃん「じゃあ、お部屋まで行きましょ」


○モッチャンの個室

 シマちゃん、モッチャンに布団をかけてやる。

モッチャン「よかったな」

シマちゃん「何がよかったの」

モッチャン「何だか分からないけど……」

シマちゃん「そう」

モッチャン「助かったな」

シマちゃん「もう助かったの」

モッチャン「うん、助かった。どうも」

シマちゃん「どうも。おやすみなさい」

 シマちゃん、部屋の照明を消し、退室する。

【終】