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会津銀山街道~六十里越(会津若松駅〜浦佐駅)2024.5/17~5/19

164.7km +7658m
会津若松駅~銀山峠~西山温泉~美女峠~吉尾峠~只見~六十里越峠~入広瀬~浦佐駅

銀山街道は会津若松市大町札の辻(四ツ角、起点)から南会津郡只見町小林まで、延長約72km。お城と会津盆地、奥会津を最短距離で結びながら六十里峠や八十里峠を経て新潟県にも通じていました。 江戸時代は小出(現・魚沼市)と小千谷に会津藩の陣屋があったため藩士の往来、9回及ぶ諸国巡見使の視察、銀や塩、苧麻などを運ぶ重要な経済路線でした。
明治になって開鑿された現在の国道252号線、只見川やJR只見線と並行しながら、銀山、石神、美女、吉尾とそれぞれ特色ある峠を有している歴史街道です。
平成26年3月「銀山街道を活用して地域を元気にする会」が設立され、沿線住民と行政が一体となって、歩きやすい環境づくりに取り組んでいるところです。

銀山街道を活用して地域を元気にする会HPより)

【春の会津、春の魚沼、会越横断の旅ラン】
春の会津や魚沼を旅したくなり北陸から帰ったばかりだというのにすぐに新しい旅に出た。
朝のバスタ新宿発で12時半に会津若松駅に到着。少し遅い旅の始まりだ。

会津若松駅

会津若松の魅惑的な城下町を気分よく走り抜けるまでは良かったが、続く吹きさらしの田園地帯では昨日からの強風でなかなか前に進まずいきなり苦戦する。
遠くに見える磐梯山や雪をまとった飯豊連峰に励まされながら山地に入り、ようやく強風地獄から逃れることができた。

磐梯山

長い山間のロードを走りようやく銀山峠のトレイルの入口に到着。
ここはかつての軽井沢銀山跡地で最盛期には周囲に1000戸の家々が軒を連ねていたというが、今は雑草が生い茂るのみで採掘に使われていた大煙突のみが遠望できる寂しい場所になっていた。

銀山峠のトレイル
遠くに飯豊

登山道といえどかつては栄えた街道だけあって道幅も広く往時を偲ばせる。時折樹間から垣間見える南会津の低い山の連なりに癒される。

無条件に日本人に愛される心の風景というものがあるがこの場所はまさにそれだ。若い頃は高い峰々を愛したが今ではそれと同じように静かな里山も好きになっている。南会津…沢登りや雪山で何度訪れたことだろう。
口にするだけで穏やかな気持ちになれる特別な場所。

この日は温泉神社で有名な西山温泉のさらに山奥に分け入った大谷峠の林道脇でビバーク。
夜の山らしくこの晩は賑やかな夜だった。トラツグミやヨタカ、フクロウ、沢山のヒキガエルやカジカガエル、人がうるさいのは勘弁だがこういう隣人なら歓迎だ。山に抱かれているのを感じながら眠りについた。

翌朝テントの結露で目覚めそのまま3時半には出発する。
昨日は林道で熊を見かけたので熊鈴を盛大に鳴らしながら明け方の林道をもくもくと走る。
つげ義春の漫画に出てきそうな集落をいくつか過ぎ美女峠のトレイルに入ると、こちらもよく整備された道でとても歩きやすい。
峠付近のブナ林は巨木こそないが美人林で朝の陽光と木陰がとことん爽やかだ。

趣のある集落をいくつも過ぎる
整備されているトレイル
ブナの美人林トレイル
美女峠

季節がらゼンマイ採りの人も結構多い。一度は僕を熊と勘違いしたおじいさんが腰を抜かすほど驚かせてしまった。申し訳ない。
そういえば今朝も子連れの熊を見かけたのだが会津の山は本当に熊が多い。いや、昨年も今時分にみちのく潮風トレイルを歩いていたのだが毎日のようにクマの目撃情報がスピーカーでアナウンスされていた。
日本全国もはやこれが常態と化してるのかもしれない。

つげ義春も愛した南会津

美女峠を越え野尻の集落の次は吉尾峠に入るのだが、こちらは一転して草木が生い茂り道がぬかるむワイルドな道。サーフェスが悪く沢の渡渉もあるためここは全区間歩いた。しっかりした登山靴なら問題ないだろうがトレランシューズではずぶ濡れになってしまった。
峠の先は広大な空き地のような場所に出るが、ここがかつてあった吉尾の集落があった場所で今では見渡す限り何もない。
唯一小さなお墓がポツンと中央に建っており、それがいっそう侘しさを際立たせていた。

吉尾峠へ続くトレイル
吉尾集落の跡地
楽しいナメ床歩きもある

しばらく進むと荒れた登山道から林道、そして舗装路に変わりここから只見への長いロードが始まる。
伊南川の左岸をひたすら行くのだが股関節の内転筋がかなり痛みだし思うようにペースが上がらない。そして暑い。
休憩や歩きを交えながら只見の街中に入ったのは13時過ぎで、これから越える予定の六十里越が残雪の浅草岳を従えて遥か遠くにどっしりと構えている。
戦意を喪失させるには十分な光景だ。
只見線に乗れば簡単に新潟に行けるじゃないか…などとつい弱気なことを考えてしまう。

暑い、長い、足痛い…
浅草岳

「ここは昼メシでも食って考えよう」ということで駅前の定食屋で天ざる大盛を注文。
待ち時間にXをぼんやり眺めていると「彩の国」で戦っている戦士たちの熱いポストの数々が……
こんなていたらくではイカン!とモチが奮い立つ。

今年に入ってからXを始めてどういうものかわかり自分には向いてないんじゃと考えたこともあったが、それでも続ける理由となったのは努力を続ける他人の姿を見ることができるからだ。頑張っている人を見るのが好きだし応援したくなる。そしてそれで自分も頑張ろうと思える。
我ながら単純だがそれでいい。

というわけで只見の街で食料を補給しいざ出発。天ざるパワーのおかげか思い込みの力か足の痛みも軽減し、50kmこなしたあとの長い20kmの峠走も何とか走れるまでに回復。六十里越峠を何とか越えることができた。

起死回生のリスタート。前方は田子倉ダム
浅草岳が迫ってくる
田子倉湖を見下ろす
ようやく峠を越え新潟県に入り振り返る

今日は入広瀬の集落まで降りようと考えていたのだが、何気なく小用を足していると見たことのない黒い色をした尿が…。
「えッ!?」思わずギョッとする。
自覚していなかったが極度の脱水症状だったようで急いで沢の水をがぶ飲みし、危険を感じたその日は18時前に行動を打ち切ってテントを張った。
長時間行動とシーズン始めで暑熱順化が済んでなかったせいだろうか。一晩で尿の色もすっかり回復したが自覚症状がないのが怖いところだ。

翌日は新幹線駅の浦佐までの60km程のロードランなので車が少ない早朝3時出発。前日と違い冷え込みはそれほどでない。

只見線と並行する252号線。まだ先は長い

「キョロロロ…」というアカショウビンの鳴き声が山中にこだましている。朝の車のいないロードのジョグはなんと気持ちが良いんだろう。

入広瀬の集落に辿り着いてようやく六十里越から解放され人心地つけた。
浦佐まではなるべく大きな道を避けた農道などを走る。
あれほど連なっていた山地を抜け魚沼平野に入ると今度は振り返るように越後の山々がそびえ立ってくる。

逆さ八海山がどっしり
魚沼の春

とりわけ越後三山が人目を惹く。
田んぼでは休日にもかかわらず多くの人が田植えにいそしんでいる。春は魚沼が一番忙しく華やかな季節だ。

そんな春の余韻を楽しむようにゆっくりと、ひたすら走るだけの浦佐までの時間は至福のひとときだった。

【装備】ベースウェイト3.99kg
<ギア>
パーゴワークス・ラッシュ30
ヘリテイジ・クロスオーバードームf
モンベル・ドライ シームレス ダウンハガー900 #3
山と道・ミニマリストパッド
エマージェンシーシート
モンベル・ULフォールディングポール113
スントコア

<アイテム>
インナーファクト・ソフトフラスコ500ml×2
エバニュー・ウォーターキャリー2 L
ペツル・スイフトRL(充電コード)
アンカー・モバイルバッテリー10000
プロテクトJ1
テーピング
歯ブラシ
耳栓
Shokz・OpenRun (充電コード)
薬(バファリン・ガシンサン・絆創膏)
Dang Shades・サングラス
ファイントラック・ナノタオル
ウェットティッシュ
ハッカ油
熊鈴

<シューズ>
アシックス・ゲルトラブーコ12

<ウェア>
パタゴニア・ダックビルキャップ
パタゴニア・フーディニジャケット
ファイントラック・ドライレイヤーウォームT
ファイントラック・アームスリーブ
TNF・フリーランショーツ
モンベル・クロスランナーパンツライト
メリノウールパンツ
モンベル・レッグウォーマー
インナーファクト・5本指ソックスロング
ファイントラック・ポリゴンULジャケット
ニトリル手袋
サロモン・ボナッティウォータープルーフミトン
レインウエア(ピークドライシェル・バーサライトパンツ)

<食料・補給>
粉末経口補水液
アミノバイタルゴールド
塩分タブレット
カロリーメイト
柿の種

懐かしい景色に出会えたよ


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