見出し画像

必然


                 2357文字


とある村にハナという娘が住んでいた。

ハナは両親と3人暮らし、田畑を手伝いながら暮らしていた。
決して裕福とは言えないがハナにとっては優しい両親との暮らしは幸せそのものだった。

そんなある日のこと、隣村で猛威を振るっていた流行病がついにハナの住む村を襲い始めた。

流行病は次々と村人の命を奪った。

そしてついにハナの両親も流行病により命を奪われた。
悲しみに暮れるハナに寄り添うものは誰1人としていなかった。
そればかりか
「あんたには悪いがこの村から出て行ってくれないか、流行病で多くの命が奪われた。あんたの両親も流行病で亡くなった。亡くなった者の家族で唯一助かったのはあんただけだその体にまだ宿っているかもしれん、あんたがいる事で村全体を脅かす事になる、悪いが出て行ってもらえないか?」

ハナにはどうする事もできなかった。
家を一歩出れば石を投げられ罵倒される。

ハナの心は日に日に悲しみから村人に対する憎しみへと変わっていった。

(もう私も15になる。誰の助けも借りるものか!私は1人で生き抜いてやる)

ハナは何かに取り憑かれたようにその思いだけで山へと1人向かい奥へ奥へと進んで行った。
不思議と怖くはなかった。誰かに見守られてるようなそんな感覚だった。

気づけば洞窟の奥深く、そこは初めて来た場所とは思えないほどに心底落ち着ける空気でハナを優しく包み込んでくれたのだった。



月日が経つのは早いもので3年の月日が流れていた。
いつものように、動物や植物と会話をし、子猿たちがハナのために食べ物を持ち寄り、植物たちは柔らかな衣を作ってハナに着せた。

3年の月日はハナの心も変えていた。
ハナは少しずつ1人でいることに不安を抱くようになり、人を恋しく思うようになっていた。

ある日ハナがいつものように植物と会話をしていると草むらからガサゴソと音がした。
「何?何かいるの?」
そうハナが言うと静かになった。

ハナが恐る恐る近づくと、そこには
真っ白なとても美しい一頭の白馬が立っていた。
ハナはしばらく見惚れていた。
「なんて美しいんでしょう。あなたはどこから来たの?迷い込んだのかしら?」


白馬は静かに言った。

「あなたをお迎えに参りました」

「え?どういうこと?」

「あなたはこの3年間1人で自分と向き合って来ました。あなたの心は更に美しく変わった。もうあなたは1人でいる必要はないんです。私と一緒に新しい世界へ参りましょう」

その白馬の声は男性でも女性でもない優しい穏やかな声だった。

ハナは少し戸惑った。
だが、何故だか分からないがその白馬の言葉を信じ、今がその時だと思ったのだ。

「さぁ、私の背中に乗って下さい」

すると白馬の背中から白く輝く翼がゆっくりと広がり、その翼を羽ばたかせてみせた。

「しっかり掴まっていてくださいね」

白馬はハナを乗せゆっくりと空へ舞い上がった。

ハナの頬を優しい風が撫でる。

「あ〜なんて気持ちいいのかしら」

白馬は優しい目でハナを見つめた。

「ねぇ、あなたは何故、私があの山にいる事を知っていたの?それにあなたはこの世に生を受けている者とは思えないわ」

白馬は暫く沈黙していた。

そして
「信じてもらえないかも知れませんが、私は百年もの間あの山の守り神でした。あなたがあの山を選んだのも私がそう導いたのです。私はあの山の全ての者達にあなたを守るようお願いしました」

「何故そんなことを?」

「私は、、、あなたの子供だからです」

「え?私はまだ子供はいないわ」

「ええ、あなたはこれからある男性と出会いそして子供を授かります。それが私なのです。百年間山の守り神としてのお役目が終わり、私は人間として生まれ変わる事になったのです」

「よく分からないけど、、でも不思議ね、あなたといると穏やかな気持ちになれる私がいる」

やがて白馬はある村にゆっくりと近づいた。

翼をゆっくりと羽ばたかせながらハナが怖がらないように、そっと降り立った。

「着きましたよ。ここがあなたがこれから新たな人生を始める場所です。この道を真っ直ぐ歩いて行って下さい。決して振り向かず、そして最初に出会う方がこれからあなたを一生支えてくれる方です」

「あなたは?」

「私はここまでです。あなたはこの先多くの人から必要とされる人になります。私はそんなあなたを母として選びました。私はあなたの子供としてこの世に生を受け、またあなたに会いに来ます。さぁ、この花を持って進んで下さい。決して失くさないように。必ず意味のある花です」

そういうと、白馬は雪のように白く美しい小さな花びらとなり空へと舞い上がった。
光を浴びながら綺麗に輝く小さな白い花びらが再び白馬の姿となりゆっくりと消えていった。

ハナは白馬の言ったように振り向く事もなく真っ直ぐその道を進んだ、どのくらい進んだのだろうか、ふと見ると目の前に一人の青年が立っていた。

ハナは声をかけずにはいられなかった

「どうかなさいましたか?」

すると青年は
「探し物をしているのです。花の絵柄の櫛なのですが」

「大切な物なのですね」

「ええ、母の形見なのです。いつも肌身離さず待っていたのですが、畑仕事に夢中になってこの辺りに落としたのかと」

青年の話を聞いていると、ハナが手にしていた一輪の花がみるみる形を変えていった。

「え?」

見ると、ハナの手の中で花の絵柄の櫛に姿を変えていた。

「あの、、これ、、」

「あ!そうです!それです!母の形見の櫛。ありがとうございます!」

そう青年は言うと、櫛を持ったハナの手をしっかりと握り微笑んだ。

その青年の笑顔を見たハナはなんとも言えない優しさに包まれ、そして微笑んだ。

二人は、そのまま暫く見つめ合った。

やがて二人は結ばれ元気な男の子を授かり、二人はたいそう喜んだ。

二人の出会いは必然、白馬の思いは届いた

しかし、ハナが白馬の事を思い出す事は一度もなかった。

                    完




長文、最後までお付き合い下さりありがとうございました🙇
皆さんの貴重なお時間を頂きありがとうございますm(__)m
今回、KeigoMさんの絵を使わせて頂きお話を書いてみました。
KeigoMさんの絵から一気にお話が浮かんだのですが、
自分の語彙力のなさ、力不足を改めて痛感しました😓

KeigoMさん
絵を使わせて下さりありがとうございました😊

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?