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特別寄与料とは?誰がどのように請求できるか。

みなさん、こんにちは。
行政書士の黒澤正人です。
朝ドラ「虎に翼」を毎日楽しみに視聴しています。心震えるセリフや、当時の社会背景と今とを重ねながら法律家の端くれとして身が引き締まる思いをしてみています。どうやら今週(6/24)からは、相続問題について触れられるようですね。人間ドラマとしてどのように描かれるのか楽しみです。

さて、今回は平成30年の民法大改正によって新設された「特別寄与料」についてお伝えします。端的に言えば、「相続人以外の人間の寄与を認めそれに報いる」というものです。従来認められていた「寄与分」と名前が似ていますが、請求方法や対象が異なりますので、正しく知っておくと相続時に損をすることもなくなるでしょう。


特別寄与料の定義

民法1050条1項に次のように定められています。
「被相続人に対して無償で療養看護その他の労務の提供をしたことにより被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をした被相続人の親族(相続人、相続の放棄をした者及び第891条の規定に該当し又は廃除によってその相続権を失った者を除く。以下この条において「特別寄与者」という。)は、相続の開始後、相続人に対し、特別寄与者の寄与に応じた額の金銭(以下この条において「特別寄与料」という。)の支払を請求することができる。」
いくつかポイントを整理してまいります。

①被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与
例えば、被相続人に対して献身的な介護をすることによって、介護サービスを頼まなくてよくなったというようなケースが当てはまります。夫の両親を妻が介護して、プロに頼めば一定額かかるはずが、結果かけなくて済んだということであれば、財産の増加について特別の寄与が認められることになります。

②被相続人の親族(相続人や相続放棄、廃除された相続人を除く。)
親族とは配偶者、6親等内の血族、3親等内の姻族を指します。このうち、相続人は除かれますので、請求できるのはわかりやすいところだと、相続人である夫の妻が該当します。むしろ妻の献身的な努力に報いるために設定された規定ともいえますね。
夫が先に亡くなっていた場合でも親族でなくなることはないですが、離婚してしまうと親族関係は解消されてしまうので請求できなくなります。

③特別寄与者の寄与に応じた額の金銭
法律上いくらにせよ、と定められているわけではありませんのでまずは相続人との交渉によって定めます。そこで不和となると、調停・審判へとすすみます。そこまで審判件数が多いわけではないので、交渉または調停で収まることが多いようです。金銭については、目安として次のように算出されます。

「生じたであろう療養看護費×療養看護日数×裁量割合=特別寄与料」

介護のプロに依頼したら生じたであろう費用と自身が監護した費用とが全く同額とはなりませんので、裁量割合を乗じて計算することが妥当とされるようです。プロと全く同じとはできないということですね。
また、そもそも貢献したことを認めてもらうために、療養監護をした証拠(レシートなど)は残しておくとよいでしょう。

寄与分との違い

民法904条に似たような制度として寄与分というものがあります。非常によく似ていますが、こちらは相続人のみが対象となる点が大きく異なります。
また、請求期間に制限がないことも1つ特徴といえるでしょう。
分かりやすく違いについて下の表にまとめましたのでご参照ください。

寄与分と特別寄与料の違い

相続税はどうなるの?

特別寄与料として金銭を受領した場合は、相続税の対象となります。また、法定相続人以外となるので相続税が2割加算になることも注意しておきましょう。とはいえまずは交渉によって金額を決めますので、税金を考慮したうえで配分を検討することも可能ではないかと思います。

まとめ

療養介護において、被相続人に十分貢献していたと感じるものの相続人ではないから財産を受取ることはないなと諦めていた方は、特別寄与料を主張できるかどうか検討してみましょう。特別寄与料については、裁判所の手続を利用して請求できる期間制限があるため、早急に対応しましょう。また何をもって特別の寄与となるかは裁判所の判断からもケースバイケースといえそうです。証拠があれば心強いでしょうから、今のうちから準備しておくことが望ましいでしょう。

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