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祖父と私の彼岸話

気づいたら祖父が亡くなって5年が経っていた。
祖父が入院してから亡くなる日までの間、
私は祖父に会いに病院へ行ったことがなかった。
私は祖父が亡くなった今でもそれを後悔している。

そんな中、
春のお彼岸の時期に夢で祖父と逢うことが出来た。

こどもの頃の私が泣いていると、祖父が助けてくれた。
祖父が
「すずなろはこれが好きだったろう?」と
飴をくれた。
その時、これが夢であることに気づいた。
独りで待つ寂しさから開放された安心感と
目が覚めたら祖父はいなくなるという物悲しさから
また泣いてしまった。
ずっと泣く私に、祖父はしょうがないなとでも云うように
微笑むだけだった。

そうしてたら、夢から覚めるときがきた。
薄れゆく意識の中で
祖父はただ一言、
「ありがとう」
と言った。


夢から覚めた朝は、
ほんの少しの寂しさと温もりが
私の中にあっただけだった。


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