【創業ストーリー】「中古車業界のプロが感じた3つの課題」中古車の取引を根底から変えるサービスはどのように生まれたのか?
「車を利用するのに掛かるコストを1/10にする」をミッションに掲げ、自動車フリマサービス「カババ」を手がける株式会社アラカン。
「業界の課題を解決するには、儲けることを目標とせずに、ゼロベースでプロダクトを作る必要があった」と話すのは社長の田中です。
今回は、創業の経緯、会社のカルチャー、ビジョンを語って頂きました。社長の想いや事業の原点に焦点を当て、会社のカルチャーを紐解いていきます。
日本は、世界で最も車の個人売買に向いているにもかかわらず、世界で最も多くの業者を仲介して取引されている国
ーなぜ会社を立ち上げようと思われたのか、また、なぜ今の事業だったのか教えてください。
会社を立ち上げる前は、中古車販売会社で長年役員を務めていました。私が役員に就任した当時は田舎の小さな中古車屋さんのイメージでしたが、上場させて大きな会社にしたいという創業社長の意向に沿って、役員として会社の成長に尽力しました。結果として、その会社は上場し、業界では新車ディーラーを含めても日本で最大の時価総額を誇る企業へと成長しました。
しかし、会社を成長させていく中で、中古車業界の流通には3つの大きな課題があると感じていました。消費者にとってより良い体験を届けるためには、今のビジネスモデルではどうしても解決できないと気づいたんです。
会社を大きくすることや儲けることを目標とせずに、業界の課題を解決することを前提にゼロベースでプロダクトを作り上げる必要があると考えました。
ーこのプロダクトで解決できる、3つの課題とは具体的に何でしょうか?
3つの課題とは「ムリ」「ムダ」「ムラ」です。
まずは「ムリ」を説明します。この業界では売上や利益を最大化するために、消費者や従業員に無理を強いています。法律の範囲内で、消費者のためにならないことをやっているのも事実ですね。
競争が激しい業界の中で、従来のビジネスモデルでは、無理をしないと生き残っていけない現状がありました。
次に「ムダ」に関してですが、端的にはこの業界は中間マージンが多すぎるということです。実は、中古車の流通には、車を売りたい個人と買いたい個人の間におおよそ7社もの業者が入って各々のマージンをとっている状態です。情報仲介業者や買取業者、陸送会社や販売会社などですね。多くの業者が入ることで、流通コストは膨大になります。
さらに日本は、世界で最も中古車の質が高い国です。中古車の質が高い理由は、日本の国土が狭く走行距離が短いこと。2年に1度の車検制度があるためです。
日本の車は質が良いので、中古車の販売時にメンテナンスをする必要がない場合も多いんですよね。
つまり、日本は世界で最も車の個人売買に向いている国なのに、世界で最も多くの業者を介して取引しています。
最後は「ムラ」についてですね。ムラとは、消費者にメリットが無い取引が行われる商談のことです。中古車業界の倫理的に問題のある取引はほぼ商談で起きています。
例えば、自動車ローンの金利が高い中古車販売店は金利をHPなどで公開していません。これはネットで閲覧して他社比較をされないようにするためであり、実際の店舗に出向いて初めて金利が分かるような仕組みになっています。そこで消費者は商談の中で言いくるめられてしまい、高い金利を払ってしまっているという現状があります。
また商談にいくと、不要なコーティング等のありがた迷惑の商品を提案されることも多いです。オンラインで車を選ぶなら買わない商品も多いですし、購入メリットを実感できないものもありますね。
このような取引は、消費者にとってメリットがありません。このような課題を解決するために、商談をしなくても車を取引できるサービスを作りました。インターネットで情報を透明化することで、倫理的に問題のある取引を構造的にできないようにしました。
また、このサービスを実現するには、オンライン完結型のビジネスが必要でした。なぜなら既存の販売店は、莫大な人件費、家賃や建築費にコストがかかり無理が強いられているからです。それにより、「ムリ」「ムダ」「ムラ」の3つの課題を構造的に無くそうと考えました。
ー顧客にとってのメリットは何ですか?
車を購入したい人は、市場価格より安い価格で購入することができます。また、高金利の自動車ローンや余計なサービスの購入が発生しないため、購入に関わる全体のコストが下がります。そして商談が無いため、時間を短縮できることがメリットです。
またオンライン取引なので鑑定に不安を持つ方もいるかもしれませんが、資格を持ったプロが出品者の自宅に行って、事前にチェックしているので安心です。利用者はオンラインですが、我々はアナログで動いています。
車を売りたい人は、市場価格より高く売ることができます。
一方で、カババのデメリットは、車が売れるまでの所要時間が従来の買取業者よりも長いことです。その分、出品にリスクはありません。もし売れなくても、ペナルティなどは無いからです。
ー売りたい人は市場価格より高く売ることができ、買いたい人は市場価格より安く購入することができるのはなぜでしょうか?
我々が車を買い取っていないからです。売り手と買い手を仲介して、取引が成立したら固定の手数料をもらうようにしました。
これにより、我々が持っているプロの知識を使って、中立の立場で双方が納得する適正な価格を提示できています。
我々がやりたいのは、安く買うことでも高く売ることでもなく、適正価格で取引することですね。
しかし、7社入ってきた流通が1社になることで、流通コストが減るため、結果的に今までの買取価格よりも高く売れる、小売価格よりも安く買えることになります。
余計な駆け引きなく、気持ち良く取引をできる世界を創りたい
ー今後の目標を教えてください。
資金面では、2027年にIPOを目標として動いています。サービス面では、リアルに買える状態の車を5,000台以上にすることが目標です。
現在はサイト上には、リアルに買える状態の車は2,000台くらいあります。ほか3,000台は、相場情報のために載せている「売れた車」などですね。
リアルに買える状態の車を、2年以内に5,000台まで増やしたいと考えています。
現在カババで出品している車のほとんどは、他社の同じ状態の車と比べると日本一安い価格になっています。低価格の車が5,000台以上載っているサイトは、見ていてワクワクしますよね。ユーザーにとって、ワクワクするサイトを作りたいんです。
ー今後会社として見据えている、実現したい世界を教えてください。
端的に言うと、気持ちの良い中古車取引をできるようにしたいです。価格、利便性、安心感において、ストレスなく取引できる状態が理想と考えています。
現在、車を売る際は、売り手はなるべく高価で売却したいと考える一方、買い取り業者はできるだけ安価で購入したいと望みます。また、車を購入する際は、業者はオプションや金利が高いローンを提案するなど、双方が自身の利益を最大化しようと様々な駆け引きがあります。そのストレスをなくしたい。
世間には、本当はそのような駆け引きはしたくないという人が多いのではと思っています。
将来的には、車を売りたい人が素人であっても、カババを見れば適正な相場価格がわかるという状態が理想です。
そのために、カババでは2種類のコンシェルジュが売買をサポートをしています。
取引が決まるまでは、車の査定をするプロのスタッフが買い手と売り手の両方に担当で付きますね。取引が成立してから納車までは、取引サポートチームがついて、名義変更や陸送の手続きなども行います。
車は高単価の商品なので、購入後の手続きや納車に対する不安やストレスはなるべく抑えたいです。
取引や流通を効率化した上で、安心感は今まで以上、さらに流通コストを10分の1にすることが理想ですね。
ー会社のビジョンを実現するために大切にしている価値観を教えてください。
会社説明会に参加した学生さんは、「お客さまに嘘をつかなくて良い」というビジョンに共感してくれます。車に関するプロとしてのノウハウを、お客さまに寄り添うことを前提にビジネスモデルを構築していることに共感して入社する社員は多いです。
「先義後利」の精神で利益を最大の目的にせず、世の中の役に立つことを第一とする考え方がありますね。
そのために我々は、誰もが平等に中古車を取引できるサービスが必要だと考えています。
ビジョンへの共感と業界を変えられるのではという期待感
ー今の会社にはどのようなカルチャーがありますか?
先ほど話した価値観の通り、お客さまに寄り添って誠実に対応する文化があります。
例えば先日、カババの出品では売れなかったお客さまがいらっしゃいました。そのお客さまは、ディーラーでは800万円の査定を受けていたらしく、それ以上であれば売りたいとおっしゃっていました。そこで、お客さまの車を弊社の提携先で一括査定したところ、1,200万円の査定を出してくれた業者があったんです。
一般的な中古車売買のビジネスモデルであれば、お客さまからは850万円で買い取り、業者に1,200万円で売るという流れが普通でした。しかし私たちは、情報を透明化してお客さまに喜んでもらうために事業をやっているため、お客さまに1,200万円の査定を出してくれた業者を紹介したということがありました。
ーそのような価値観は、どのように浸透させていますか?
採用する段階で似たような考え方を持っている人を採用していることと、業務にあたる上で浸透していくことの両方ですね。
弊社は車関係の中では給料が特段に良い訳ではありませんが、他社とは違ったビジョンを掲げています。アラカンのビジョンに共感した上で、業界を変えられるのではという期待感のもと働いてくれているはずです。
仕事をしていく上で目先の利益など色々な誘惑があったときに、会社としてのジャッジがブレないことで浸透していくと考えています。
ITの力を駆使して「プロ集団」にしていきたい
ー今後どのような組織を目指しているのか教えてください。
目指しているのは、当然ながら「プロ集団」です。全ての業務において、まだプロとしての高いレベルにいるとは言えません。新しく入社した社員への教育プログラム、プロセスの修正などについても、ITの力で解決したいことが多くあります。
今は口頭で伝えているノウハウの部分を、システム的に補完できるような状態にしたいです。
ーどのような方が会社に合うと思われますか?
エンジニアであれば、ユーザーのことを考えながら一緒に要件定義ができる人ですね。
作ったサービスを実際に使う人たちが社内にもいるので、身近なユーザーからのフィードバックもあります。自分が作ったものが誰かの役に立っていることに喜びを感じる人が、すごく向いていると思います。