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超短編小説 そこの銀行

寂れた商店街の中にその銀行の支店はあった。銀行なのに店内の掃除は行き届いていない。専門の掃除業者など費用がもったいないのだ。

よれよれのワイシャツでボサボサ頭の行員はため口。面倒なことになったら専門用語を並べ立て顧客を黙らせる。本人もよくわからないまま話しているのは秘密だ。行員たちの使命は焦げ付きそうな債権を頭の弱そうな自営に買わせること。訴訟なんてできない人たちだ。

特別室という個室に誘い出せば周囲の目も安全。特別というのは名ばかりでただの小さな会議室。小金持ちどもにはそこがお似合いということらしい。

どこかの銀行は問題になったが、その銀行は金融庁を黙らせる力はあるようだ。マスコミもスルー。

今日も朝礼で目標額について支店長が怒鳴るように説明している。ノルマが達成できずにいなくなった行員も多い。支店長の前で行員たちの目は死んだように泳ぐ。

「すいません 人身事故で遅れました」行員が慌てて入ってきた。
「またかよ いい加減にしてほしいよな」

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