見出し画像

小説 となりのひきこもり3

何台ものサイレンの音がしてしばらくしてガヤガヤと声が聞こえてきた。窓の曇りガラスからのシルエットを見るとどうやら警察官らしい。

えっと事件?朝なので頭がよく回らないのか認識するまで時間がかかる。コウちゃんが刺されたのか。ちょっとだけ戸を開けて様子を見ようとした。その瞬間、スーツの人が走って寄ってきた。

「すいません。警察です」
うわ、ドラマみたいな展開だ。何か聞かれるのだろうか。
「隣の家で何か気になることはありませんでしたか」
ちょっと怯んだ。正直、ほとんど交流はないので何も知らない。
「隣の息子さんがひきこもりっぽいのは知っていますが、それ以上は。交流がないので」私はそう答えるとスーツの人は呆れたような表情で
「わかりました。ありがとうございました」と答え、隣の家の中に消えていった。

あの呆れ顔は近所づきあいも出来ない人間なのかということなのだろうか。警察手帳も見せてくれなかった気がする。そういうものなのだろうか。何があったのかすら教えてくれないのか。あれは刑事なのか。

考えても仕方ない。戸を閉めて部屋に戻る。窓に映る警官たちのシルエットはなかなか消えなかった。

つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?