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小説 となりのひきこもり1

ひきこもりはいろんな事情でひきこもっているのは知っている。広い意味では私もひきこもりだ。人のことは言えない。周りから見れば私は昼間家にいて適当に暮らしている人間なのだろう。規則正しく健康に気をつけて暮らしているなど周囲には言えない。お前なんかが長生きしてどうするんだということを言われそうである。かかりつけ医は血液検査で異常がないことを怪訝に思っているらしく健康診断の結果を言うときに物凄く不機嫌な顔になる。

私はマンション暮らしだ。隣に30代の息子がいるのは知っている。平日昼間、買い物から帰ってきたときに宅配の荷物を受けっとってるのを見たことがある。私を見て物凄く驚いたようで戸を閉めた。大声が何となく聞こえる。これは平日昼間に家にいることを知られたくないので騒いでいたのだろうか。

なるべく刺激を与えないように彼のことは話題にはしないが気になることは気になる。その家の問題で他人が口出すようなことではない。それはわかる。だがひきこもりは社会問題だ。うちの区でも大規模調査をしている。

むりやり家から出したところで何もできないだろう。本人が思う本人の能力と社会が思う本人の能力の差が凄いのだ。

とりあえず隣のことだし放っておく。こちらの生活に干渉してこない限り無視でいいだろう。そう思っていた。

つづく


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