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短編小説

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小説まとめました ほとんど超短編小説 思いついたときに書くので不定期です
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2024年5月の記事一覧

超短編小説 家族全員FIRE

家族4人仕事をしていない家があった。4人とも仕事はしていた。母親は事務員だった。父親は会社で母親と知り合い結婚。結婚と同時に母親は専業主婦になり子育ても終えFIRE。 息子は二人。一人は大学を卒業して公務員に。もう一人は大学を卒業して一般企業に。数年後、二人とも仕事が合わなくてFIRE。 父親は60歳定年を迎え再雇用もなしにFIRE。 4人ともごくごく普通に暮らしている。きっと投資が上手くいって暮らしているのだろう。羨ましい限りだ。 休日になると息子たちは昼間外に出て

超短編小説 涼 初恋

高校は寮生活だった。退屈な朝礼に退屈な授業。友達も出来ずただボーっとしている毎日。 教室の壁にもたれかかっていると「涼君、たまにはみんなと話そうよ」おせっかいな琴音が話しかけてきた。その隣で心配そう縁が見ている。なんだこいつら。 「うるせーな」そう言ってその場を去った。ただただ面倒くさい。なんであんなに心配そうに縁は俺を見たんだろう。 揉め事は嫌いだ。友達なんて揉め事運ぶだけだろ。中学時代に悪い連中に絡まれて大変だったことを思い出す。もうあんなのうんざりだ。 次は体育

散文 そんな朝

雨でも降っているかのように街は灰色に覆われた 少しだけ寒く湿った空気を吸いながら足を進める 風に木々が煽られ踊っている 髪が顔に張り付くのを手で払う 今日の仕事をあれこれ考え 無事に終わるように思いを巡らす やるしかないか 少しだけため息をつくと どこからか空き缶が転がりどこかへ行った