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第24話 トナカイとビルの瓦礫

ドールの街にある食堂から、勢いよく飛び出したトナカイのプランサー。
仲間のトナカイであるルドルフとヴィクセンが、彼女の後を追います。
外はもう日が沈んでいて、空には月が登っていました。

トナカイのプランサー

プランサーはサンタのトナカイの中でも、最も聴覚ちょうかくに優れています。
今回、遠くで鳴るジングルベルの音を聞き取れたのは、この耳の良さによるものです。

プランサーの話によると、南端なんたんにある海岸の方角から鈴の音が聞こえたらしく、その場所に向かって走り出しました。
けっこう距離が離れていたので、俊足しゅんそくのトナカイたちでも海岸に辿たどり着いたのは明け方近くになってしまいます。

「そろそろ海岸線に着くぞ」

しかし月明かりに照らされた砂浜の光景を見たトナカイの3人は、絶句することになります。

「おい、おい、おい 何だよコレ」

巨大なビルの瓦礫がれきが、砂浜にめり込んでいたのです。
しかもあちらこちらに、同じような瓦礫がれきがいくつもあります。

ビルの瓦礫

「どうやったら、こんなことになるんだ」
「空から降って来たとか」
「まさか」

300年前に人類滅亡の危機に陥った時、数多くの施設が破壊されました。今でも片付けようがない廃墟群はいきょぐんが、全国各地に放置されたままです。
そういう意味では、瓦礫がれき廃墟はいきょは特に珍しくもないものでした。
しかし砂浜にビルを建てるなんて話は、さすがに聞いたことがありません。

「せめて砂浜から移動させたいところだが、巨大すぎて無理だな」
「サンタ・クロース様なら、サンタ袋に入れてくれるんじゃない?」
「仮に入ったとしても、その後どうすんの? どっかにまた捨てんの?」
「あ!そうだよね。困ったね」

いつも運送屋として大量の荷運びをしているトナカイたちも、さすがに巨大なビルの残骸ざんがいは運べないようです。
何か妙案みょうあんが浮かばないものかと、しばらく巨大なビルの瓦礫がれきを見上げていると、今度はトナカイのヴィクセンが変なことを言い出します。

「あのさ、ルドルフ。どこからか、何か甘い香りがしてこない?」
「甘い香り? しおの香りならするけど」
しおの香りの中に、ほのかに甘い香りが混じってるの」

トナカイのヴィクセン

ヴィクセンは、サンタのトナカイの中で最も嗅覚しゅうかくに優れています。
大のお菓子好きで、特に甘い香りに関しては敏感びんかんです。

「ほら、あの森からだと思う」
彼女は、海岸沿いにある森を指さしています。

ルドルフ          ヴィクセン          プランサー

するとプランサーが、また変なことをつぶやき始めました。
「まさか・・・いや、やっぱりそうだ。こんなことしてる場合じゃないぞ」
変な独り言ひとりごとを言い終わると同時に、またもや突然ダッシュして、勝手に森に向かって走り出しました。

あわてたルドルフとヴィクセンが、プランサーの後を追います。

「またこのパターンかよ。いったい今度は、何だって言うんだ」
「いるんだよ、あの森に」
「いる? って誰が?」
「ネネちゃん」
「は?!」

天上界と人間界を繋ぐサンタ・ツリーが地上から消えた今、お互いの世界を行き来する手段は何も無いはずです。
この時ルドルフとヴィクセンの2人は、あまりにもネネのことが好きすぎるプランサーが、ついに幻覚を見るようになったのかと思ってしまいました。

しかし森に着いた一行は、さらに驚きの光景を見ることになるのです。
そこは、この季節にはあり得ない雪景色が広がっていました。

つづく


【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です

サンタのトナカイは全員で9名います
それぞれに特徴的な能力を持っていました
ルドルフ  危機察知能力に優れています
ヴィクセン においを感じる能力に優れています
プランサー 音を聞き取る能力に優れています

今回感じ取った「ジングルベルの音」「甘い香り」は、いずれもサンタ・ネネに関係するものでした

ちなみに彼らが滞在していたドールの街は、道化師ピエロのオレンジたちが次の公演先として予定していると話していた場所です

全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます

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