第27話 サンタクロースへの伝言
お互いザックリとではありますが、ネネは「天上界の現状」を話し、トナカイ達は「人間界の現状」を話してくれました。
どうやら人間界は、すっかり様変わりしてしまい、ネネが知ってる世界ではなくなっているらしいです。
人間だけではなく、獣人・妖精・精霊・聖獣など様々な種族が共存する世界になり、まだ魔物や悪霊の脅威にさらされ続けているとのこと。
かつて栄えた科学文明はすっかり衰退し、それに入れ替わるように「神術」「魔術」などの新技術が急速に発展しているようです。
まだまだ全世界の完全復興には程遠い状態で、世の中には野党や盗賊による犯罪や、魔物や悪霊の襲撃に対応しきれていないとの話でした。
「人間界も、けっこう変なことになってんのね」
「そういえばサンタ・ルチア様とサンタ・ナナちゃんのお二人は、元気なのか?」
「ママちゃんは元気だよ。妹のナナは、すごすぎるかな」
「すごすぎるって何が?」
「そだなぁ、例えばだけど、そっくりな人いるんだけど」
「どこに?」
「目の前に」
「・・・マジか」
ネネが指さしたのは、トナカイのプランサーでした。
でも彼女は何を言われてるのか、全く理解してません。
すごいニコニコ顔です。
「あぁ、ナナちゃん今こんな風になってるのか。こっちにいた時は、引っ込み思案でおとなしい娘だったっけ」
「あはは、今は、ちょこまか走りまわる小型爆弾って感じかな」
「いや、それはちょっと、どうなんだ」
トナカイのルドルフは、少し苦笑いしました。
なぜならプランサーには、いつも振り回されているからです。
ちなみにですが、今現在。
天上界に残されてしまった妹ナナは、姉に置いていかれたと泣きべそをかきまくっていて、母ルチアを困らせている最中でした。
トナカイのヴィクセンが、いま一番気になっていることを質問します。
「ネネちゃん、このサンタ・ツリーって、天上界と繋がってるのかしら?」
それにネネが答えます。
「んとね、全部で7本植えないと繋がらないみたいだよ」
「そっか残念。ナナちゃんにも、会いたいんだけどな」
「最後の7本目は、サンタ・クロース爺ちゃん家に植えるつもりだから、それまで待っててよ」
「そう言えば、連絡できてるの? サンタ・クロース様に」
「それが、まだなんだよね」
「あら、まぁ」
今度は、ルドルフが気になってることをネネに尋ねます。
「一緒にいた赤いバイクのサンダー・ボルトも、いま天上界にいるのか?」
「あ!!忘れてた。こっちに一緒に来てるんだけど、いま行方不明だった」
「おい、行方不明って大事じゃねーか」
「まぁ、そのうち会えるだろうから、大丈夫」
「大丈夫なわけないだろ。その適当な性格、いまでも変わらないのな。安心したと言うか、逆に心配になるというか」
ネネの方はと言うと、何やらニヤニヤしています。
「何だよ」
「いや今気づいたんだけど、ルドルフの性格にサンダー・ボルトはよく似てるんだなって思って」
「どこが似てるんだ?」
「その心配性なところ」
「は?! 俺が心配性だって?」
「あはははははは。その通りじゃない」
ヴィクセンがルドルフの背中を、バンバン叩いてきました。
実は口にすることはありませんでしたが、ヴィクセンもずっと同じことを思っていたようです。
でもこの心配性な性格になってしまうのは、当然のことなのです。
人間界にいた頃のネネはプランサーと組んで、あちこちにイタズラしまくって回っていました。
その度に謝罪に回っていたのは、ルドルフだったからです。
今度はヴィクセンが、皆に提案します。
「じゃ~さ、ネネちゃんにお手紙書いてもらったら? 私たちで、サンタ・クロース様の家まで届けてあげるってのはどう?」
「それは、いい考えかもな。プランサーは、どう思う?」
「ん?? あ・・・そだね、んーーっと、いいんじゃないかなー」
プランサーの返事は棒読み口調だったので、またもや全く話を聞いていないようでした。
ずっとネネの顔を見ながら、抱き着いているので仕方ありません。
ネネの髪の香りをくんくんし始めて、ニコニコ笑顔になってます。
さすがのルドルフも、これにはドン引きです。
ネネはサンタ袋から、ペンとメッセージカードを取り出しました。
そこに祖父と祖母に、あてた文章を書き始めます。
サンタらしいデザインのそのカードに、簡単な内容でしたが、丁寧な字で真心こめて書き上げていました。
『親愛なるじいちゃん・ばあちゃんへ
ネネはいま人間界にいます
さっき1本目のサンタツリーを植えたんだよ
最後の7本目は、爺ちゃんたちの家に植えようと思います
しばらく時間かかるけど、それまで待っててね
ネネは元気だよ
天上界にいるママちゃんと妹ナナも元気です
じいちゃんたちに早く会いたいんだけど、人間達も大変みたいなので先に人助けして回りたいです
サンダー・ボルトも一緒にいるから心配しないでね
追伸)
私やっとサンタになれたよ。光の精霊とも契約したんだよ
サンタになった姿を早く見せたいけど、しばらく我慢だよね
わたしのサンタプレゼントは、ぬいぐるみにしました
サンタ・ネネより』
【あとがき】
この小説の題名は「赤と黒のサンタ」です
サンタの聖獣トナカイは全部で9名いるのですが、普段は3チームに分かれて活動しています
人間界で正体を隠しながら「運送ギルド(協会)」に所属していて、全国各地で配送業の仕事を請け負っています
それぞれ個性が強いトナカイ達ですが、今回ネネが出会ったのは最も仲が良かったAチームのメンバーでした
ルドルフは他のトナカイ達にも、サンタ・クロースの家に緊急召集するよう指示を出しました
そしてルドルフからネネ帰還の報告を聞かされて、皆が湧きたつことになります
A. ルドルフ
A. ヴィクセン
A. プランサー
B. ダッシャー
B. ダンサー
B. コメット
C. キューピッド
C. ドナー
C. ブリッツェン
全てAI生成画像です。「leonardo.Ai」さんを利用させて頂いてます
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?