見出し画像

(2024年5月)上野でみた大道芸(2)

2024年5月の、とある日曜日に見たもの。

JRの上野駅から公園口改札を出ると、休日だけあって付近はけっこうな人がいました。
前日は5月にもかかわらず30℃近くまで気温が上がり、「夏本番!」前の「夏準備!」のような暑さでした。
それに比べれば過ごしやすい気候ではありましたが、上野恩賜公園は薄曇りで天気の崩れも予想されました。
午後の時間帯、中央の広場へ向かって歩いて行くと、繁る木の下あたりに、随分と華やかな髪色をした人がなにかの準備をしていました。
「華やかな髪色」とは具体的にいうと、向かって左側半分がエメラルドグリーンで右側半分がピンクというツートンで、ずっと移動せずにいてくれたら待ち合わせの目印に使わせてもらえそうなほどの存在感でした。

椅子に座る男性の前に準備されたのは、小型のピアノ、足元には足で操作できるようにセットされたドラム、片手でバイオリンも持っています。
一人で何役もこなす演奏が始まると、口にはアフリカの民族楽器・カズーが咥えられ、スポーツ観戦の応援でもされるようなブーブーブーブー♪とあの独特な音色がリズムよく奏でられました。
男性を中心に半円で取り囲むように、遠巻きに数十人の人が足を止めていました。
初めから見ていた外国人のカップルは、音楽に合わせて自然と体で小さくリズムを取りはじめていました。
右手でピアノの鍵盤を弾きながら、左手で持ったバイオリンを演奏し、足でもドラム操作をするなど、ひとりで何役もこなしているのがすごい。
泡立て器・トング・おたまにも使える多機能キッチンツールみたいです。
公園内を行く人は立ち止まり、その独特な演奏スタイルと曲を「観て」「聴いて」楽しみ始めました。
楽しい気分であふれたお客さんが歩いて行き、前方に置かれたバイオリンケースに投げ銭を入れました。
一瞬。
男性は投げ銭が入れられる瞬間だけ、すべての演奏を中止しました。
静寂。
そして、無人受付に置いてあるような呼び出しベルを手元で鳴らしました。
チン!
再び演奏が再開されました。
呼び出しベルの「チン!」という音は、投げ銭を入れてくれた人に対しての男性からの「ありがとう」の意味であり、周りで楽しんでいる人たちにはユーモアを伴って響きました。
その後も、投げ銭が入れられるたびにストップし「チン!」
3人つづけて投げ銭すれば「チン!チン!チン!」
このすごいところは、その都度、演奏が止まるにもかかわらす、曲が分断されている感じがほとんどなく、「チン!」というベルの音まで一緒に楽しめてしまうという。
なんとも良くできたシステムでした。

数曲演奏するうち、男性の後方で音楽に合わせてチビッコが踊り出しました。
それに共鳴するように、兄弟?と思われる同じぐらいのチビッコも踊り出しました。
全身で自由に、それでいてリズムよく踊る二人のチビッコは、実に楽しそうに見えました。
魂のけがれの無さを象徴するような二人の踊る姿。
やがて踊るのをやめ座って演奏を楽しむけがれ無き二人のチビッコに気づいた男性は、チビッコたちを無言で呼び、二人とともに地面に仰向けになって寝ました。
仰向けで横になって、まるで大地の力を地表から全身に浴びているように上空を見ています。
わけもわからないながらもケラケラと破顔の笑いがこぼれるチビッコたち。
周りで見ている人たちからも、クスクスと微笑ましく笑い声が聞こえます。
チビッコを残し、男性はピアノの前の演奏定位置に戻って再開。

終盤になると、ピアノの鍵盤前にかわいらしい合唱隊が賑やかに登場したり。
投げ銭を入れてくれた女の子にバルーンのプレゼントをしたり。
やがてポツリ、ポツリと雨の気配を感じて終了。

おわり

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?