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上野でみた大道芸【2009年7月】

2009年7月の、とある土曜日に見たもの。

東京、上野公園の土曜日の昼さがり、薄曇りで気温もそれほど高くなく、過ごしやすい日和でありました。
上野駅正面にある文化会館の裏手を歩いていると、金髪の男性がひとり、公園を訪れる人にしてはなにか違和感のある動きをしていました。
地面に足をつけて180度開脚してます、びたーっと。
しかも掌の上で数個のボールをくるくると回転させている。
上野公園へ散歩しにきた人にしては、なにか違和感がある、というよりも違和感ありすぎ。金髪の男性はやがて片膝をついた状態で腰を下ろし、掌の上で4個の水晶玉をくるくるさせ始めました。
男性のいう話を聞けば、いまウォーミングアップ中でこれから30分間の大道芸パフォーマンスショーを始めると言います。
その行動に違和感があったのも納得です。
金髪の男性の正体は公園を散歩する人ではなく大道芸人の人だったからです。
正体さえわかってしまえば、遠目で様子を見ていた人たちも、その大道芸人の人の周りに集まってきました。
特筆するとこの大道芸人の人、なかなかのイケメンさんです。
やけに小顔に加え、いわゆる細マッチョを想像させる体型です。
爬虫類顔の、いい意味でイグアナみたいな顔に似合わず、さわやかな語り口調につい油断して通りを行く人も近寄ってしまいます。

大道芸人の人は、ずいぶんと小さなサッカーボールを手にすると、3つのボールを使ってお手玉を始めました。
野球のボールに比べると大振りな小さなサッカーボール(日本語ムズカシイ)で行われるお手玉はそれだけでも見ごたえがあり、物珍しさもありました。
3個のボールが不思議な動きをしたり、上を向いた状態で投げ回したり、ボールを投げあげている間に一回転、二回転したり、といろいろ見せてくれて最後は後ろ手でキャッチ。
自然と拍手が起こります。
それからサッカーボールの数は増えていき。
5個のボールが宙を舞ったかと思いきや、、、地球の重力に引かれて悲しく落ちていきました。
失敗してしまった大道芸人の人は、「反省します」の言葉とともに腕立て伏せを開始。
すごい反省だ、自衛隊に入隊できそうです(いや、そうじゃない)。
しかし大道芸人の人の反省腕立てはエスカレートしていき、両腕から片腕になり、挙げ句の果てに片腕のまま両足が宙に浮いてしまいました。
つまり右腕一本だけで体を支えた状態になってしまいました。
もはや反省を超えて、懺悔。
自分を見つめ直したことが良かったのか、そのあと再び投げ上げられた5個のサッカーボールは、美しい放物線を描きながらジャグられて大道芸人の人にキャッチされました。

そのあとも大道芸っぽい道具を使ったりしながら集まったお客さんたちを楽しませ、最も得意だというパフォーマンスを見せてくれました。
それは輪を使ったパフォーマンスでした。
サッカーボールのように赤いリングを上空に向かって投げまわしたとき、その美しい流れるような動きに圧倒されました。
大道芸人の人の手元から放たれるリングが、空中で優雅に舞い、複雑なパターンを描き出します。
リング同士が交差する瞬間の対称性や、高速で動くリングのダイナミックな動きは、まるで魔法のようでした。
イナズマは光ってませんがベギラマみたいな衝撃でした。
また、音楽との調和も見事で、リズムに合わせてリングを操る姿はまさにゲージツの域に達していました。
大道芸人の人の技術と練磨された演技は、集まったお客さんに感動と興奮を与えると同時に、美しい視覚的な体験を提供してくれました。

最後のほうの文章は少し大げさに書きましたが(笑)、大道芸人の人のビジュアルとも相まってアートのような大道芸でした。

おわり

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