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文章書くの大好きマンがプレイした「Blue Archive 時計じかけの花のパヴァーヌ編」の感想


●はじめに

 茹だるような常夏にお苦しみの皆さん。どうも、お喋りビスケットです!

 という訳で、今回も前回のアビドス対策委員会編に続き、「時計じかけの花のパヴァーヌ編(ゲーム部編)」を読了しましたので、まぁ、感想をね、まぁ、はい。
 元々「ブルアカプレイしてみよっかなぁ。」とボヤいていた所に決め手のオススメの一押しをして下さった知人に「この編まではやってみてほしい」と言われていましたので、楽しみに読んでいきました。
 リアルタイムで実装を追っていた訳ではありませんから、分かっていない部分ではありますが、恐らくこの「時計じかけの花のパヴァーヌ編」は、ブルアカがサービスを開始して最序盤であるアビドス編を実装してから少し時間を置いて実装されたのだろうと思います。という事は、やはりゲームに物語を落とし込んでいく中でもいくらかユーザー達のプレイに対するフィードバックを受け取っている筈だと思いますし、実際にプレイしている中でそういうプレイ感の変化を感じる所もあって中々楽しかったので、そういう事を書いていければと思います。

 それではそれでは!Let's!透き通るような世界観!!

●ストーリーの読み応え

 お話しの通り、本記事の書き口としてどうしても前回のアビドス編からの比較が述べられますが、決してゲーム部編が全てにおいてアビドス編より優れていると述べたい訳ではありません。むしろ、前回の記事でも述べたように、このブルアカというゲームのシナリオは非常に巧みに「浮き沈みがなく明るい印象」というゲームの雰囲気に沿ったライティングを一貫しています。私は、これはとてもテクニカルで職人技だな、と思っている訳ですが、その点への賛辞は置いておいて、要は、どんなユーザーフィードバックがあったかは想像もできませんが、少なくとも最初からメインストーリーのシナリオやキヴォトスという舞台の世界観には一貫したプロットが丁寧に、そして力強く定義されているのだろうという事を感じさせる安定感と安心感のあるシナリオだという事は、まず感じた事でした。

 では、何が良くなったと感じたか。2点あります。

・先生(プレイヤー)の発言が介入するタイミングが増えた気がした。
・登場キャラクターと勢力が多く、非常にバラエティ性を感じた。

 という事でした。

 先生の発言回数が増えた事は、予想以上に「ゲームへの没入感」という点において満足感を高めてくれました。アビドス編は、賑やかな読み応えのある楽しいシナリオではあったものの、少し「眺めているだけ」というか、少し、自分よりも一回り背の低い子供たちが胸の高さでワチャワチャしているのを見下ろしている、みたいな、そういう感覚で、蚊帳の外とは言わないものの、なんだか少しプレイしているというよりも「読まされている」ような感覚がありました(よくよく思い出してみると、その感覚は前回記事でも『実質ミニゲームありの読書みたいな感じだった』という記述に現れていたかもしれません。)。

 これは私の予想ですが、ゲーム部編での先生の発言回数の増加は結構意図的で、しかも強引気味な改変だったんじゃないかと思っています。そう思うのは、ゲーム中で先生の発言ターンになった際、UIは一見すると伝統的なノベルゲームの選択肢のようなのに、実際には2つの選択肢枠を使って2行分の先生のセリフを画面に出力し、どちらの選択肢を押しても分岐せずにテキストが進行していくような仕様だったからです。実は自分、プレイを進めていてしばらく経つまで、先生のセリフが2行分を2枠で表示している事に気付かず「なんか変な切れ方のセリフだな・・・」と勘違いしていました。だからこそ、この違和感にも気付いた訳ですが。
 先生として発言しなければいけない回数が増えた事は、必然的にシナリオの進行が一時停止する回数も増える事でもあります。その為、自分のようにセリフをオート再生にしてプレイしている人間にとっては明らかに不便に感じる事ではあります。しかし、とりわけキヴォトス世界への没入感が増加するというメリットと比較すれば、全然許容できるトレードオフだと感じました。
 やっぱり生徒に話しかけられるのは嬉しいし楽しい!キヴォトスという世界に自分の存在感が投影される事はゲームシナリオにおいてとても重要な事だと思います。勿論、あまりにもプレイヤーの存在感が強すぎるのは、それはそれで不快感の素にもなり得ますが、ブルアカのメインシナリオは今の所そんな事でミスってるようには感じません。そういう安心感のあるシナリオがずっと一貫している。文筆をする人間にとっては凄く大事な事だなと思わされました。

 登場キャラクターと勢力が増えたなというのは、やはり感じました。
 アビドス編では「アビドス対策委員会」「便利屋68」の2勢力がメインで、味付け程度の「ゲヘナ風紀委員会」、更に影の薄い「ティーパーティー」以外はほぼモブキャラで(柴関の大将もここではモブに入れさせて下さい)シナリオが進行していきました。黒服も登場はしましたが、シナリオの時点では情報量が少なすぎるし登場シーンも少なかったので、先生の「大人のカード」という概念も含め今後のシナリオの為に配置された伏線としての構造的配置義務に近い印象を受けました。要は、ゲームにおいて最も重要な「プレイヤーが求めている展開」と「ゲームが提供したい展開」が交差する、ゲームプレイ体験としての本質的なシナリオの骨組みにあるコンテキストは「生徒キャラ vs モブ」だった為、よりプレイヤーの関心や興味をメインシナリオに留める為の”引力”はどうしても弱く感じられるタイミングがありました。

 こう比較してゲーム部編について考えて見ると、これがかなり変わっています。まず前提として、先生(プレイヤー)の視点はゲーム部の部員たちと共有されています。そしてアビドス編の場合ではおおよそカイザー社などのモブで構成されていた相手勢力も、今回は「セミナー」「メイド部」など、頭上にヘイローを持つ実装キャラクターたちになりました。さらには、ゲーム部の味方勢力として「エンジニア部」「特異現象捜査部」が登場し、シナリオの構造上、プレイヤーがどこを見渡してもモブではないキャラクター達が取り囲んでいる状態を作り出しています。シナリオ内に登場する全ての意思や選択肢の先に愛着を持ちやすいキャラクターが配置されている状態は、前述したプレイヤーをシナリオに留める引力を最大化させられる方法の1つではないかと感じました。
 また、今回の編における「メイド部」は、最初は敵として登場し、一度の戦闘を経てから最終的に強力な味方として物語に同伴してくれる存在になります。アビドス編における便利屋68と非常に似た立ち回りになりますが、これは、王道RPGにおける「強敵が更なる強敵を前に結託して味方になる」という熱い展開手法の良い事例だなとも思いました。

 実は、冷静かつ客観的にシナリオを俯瞰してみると、アビドス編とゲーム部編のシナリオはイベントの発生タイミングやイベントの性質が非常によく似ていて、構造的な骨組み、例えるなら自動車で言うシャーシ部分を共有しているような類似性があります。
 もっと具体的に言うなら、アビドス編でのホシノがゲーム部編でのアリスに当たり、このキーパーソンが「戦闘能力が強い→何かしらかの事情がある→その事情のせいで誘拐される→誘拐された本人が半ばその状況を受け入れて抵抗しない→仲間に救出され塞ぎ込んでいた心を開放する」というストーリーラインをなぞった上でそれぞれのオリジナリティを肉付けしているという感じです。自分はそう感じました。

 じゃあ、なんでこの両編の間に自分が体験性の違いを感じたかと言うのが、この記事で前述した2つの点になりました。キャラクターの増加が加速させる物語の熱量と興味、プレイヤーがよりキヴォトスの世界に関与できているという実感を得やすくなってきた事。これが、私が「時計しかけの花のパヴァーヌ編」を楽しむ事ができたシナリオの根拠だと感じました。

●「アリスと導かれる者たち(1)(2)」という最高の幕間

 実は、「時計じかけの花のパヴァーヌ編」で自分が一番好きなのは、1章と2章のおよそ中間地点に設けられた箸休めの幕間的なエピソードである「アリスと導かれる者たち(1)(2)」でした。
 「なんで?」と思われる方も「自分もそう!」と感じた方もいらっしゃると思いますが、こと自分の場合はなぜこの幕間が最高だったかと聞かれれば、それは

・プレイヤーから見た世界観やキヴォトスでの視野がグッと広がる感じがした。
・ずっと銃撃戦をしていたキヴォトスの学生たちの女子校生らしい私生活をやっと垣間見ることができた気がした。

 からだと思います。

 自分という人間は、どうしてもこの目で見たり理解した事でないと「自分の知識」ではないような気がして、いまいち世界観や状況に入っていけない人間です。特にブルーアーカイブというゲームは、終始して先生を取り囲む登場人物たちは先生に対して異常なまでに友好的ですから、状況が一切飲み込めていない先生に対して「こんな事もわからないの!?」とか「もっとキビキビ動いて下さい。愚図。」とか言ってこないので、ボゥっとしていてもほんのりと居心地のいいプレイ体験が迎えてくれます。それ故にここまでのメインストーリー、もっと言うとサイドストーリーも、「元からそうあるもの」を取り敢えず途中から傍観しているような気分にさせられる事が非常に多かったと感じていました。しかしそれは、居心地は良くても、先生としての自分自身がその世界に本当の意味で所属できていないような甘い疎外感を常に与え続けていると思っています。

 そういう疎外感から、キヴォトスのハレとケの”ケ”を認識させるという手法で自分を解放してくれたのが正に今回挙げている「アリスと導かれる者たち(1)(2)」です。このエピソードは、きらら系統の作品によく見られるいわゆる「日常モノ美少女コメディ」の文脈を、アリスという「ゲーム好きな女の子」の存在を媒介してRPGにおける勇者の冒険的なテンプレートに当てはめながらミレニアム内を散歩するエピソードです。
 まず「エピソードの持つ『RPG調日常系コメディ』という特性を上手く明示的に暗示できている」という時点で個人的には凄く面白いのですが、それにしても会話テキストそのものもとても上質でした。このエピソードのテーマの1つには「アリスという変わった転入生がミレニアムの面々に受け入れられ、楽しく生活できている」という事を先生に教える事があった筈ですが、こうして話数を2つ分確保して丁寧に展開させる事でそれがよく伝わって、それまで「アリスって大丈夫なのかなぁ」と内心渦巻いていた不安感をスッキリ解消させてくれた、その爽快感がまず気持ち良かったです。

 また、このエピソードについて特筆すべきだと自分が感じたのが特殊CGがやたら多かった事でした。とにかくノベルゲームにおいてはCGカットがプレイ体験において非常に重要で、ここぞ!という時にドンとCGを挿入するのは伝統的な同ジャンルのお作法でしょう。それが凄く多かったのがとにかく印象的で、テンションが上がりました。
 なぜかゲーム部編に登場する特殊CGにはメイド部のネルが被写体として採用される事が凄く多かったんですが、このネルというキャラクターが、1章ではラスボスのような風体でゲーム部と対立していたのに、幕間の日常描写においては、非常に友好的かつ積極的にゲーム部の面々と遊ぼうとする一人の女の子として登場します。作中でもネル率いるメイド部は「仕事だからやっている」と自身の仕事と内心は分離している事を発言していますが、その補強として十分すぎる程に、幕間のネルは1人の少女として可愛らしく健気に振舞い、そのギャップがとにかくプレイヤーの自分を惹き付けました。

 なぜ「アリスと導かれる者たち(1)(2)」にこれほどCGが多く登場したのかは正直分からなかったですが、少なくとも自分は、このエピソードでブルーアーカイブのコンセプトである「透き通るような世界観」をメチャクチャ肺いっぱいに吸い込むことができました。このままだと肺が透き通って無くなってしまいそうなので、しばらくは透き通るような世界観を禁煙しなければいけないかもしれません。

 個人的に最高のエピソードです。

●余談1:リオという女について

 今回の時計じかけの花のパヴァーヌ編にはたくさんのキャラクター達が登場しましたが、個人的に、当初の予想を大きく裏切って最終的に凄く好感度が上がったのが、今回のラスボスであるミレニアムサイエンススクールの生徒会長、リオでした。
 リオの何が美しかったかといえば、やはり、「自信満々に独断で突き進んだ結果、見事に滑り散らかして何も成し遂げられずに後始末も放り散らかして敗走する」という、まるでキンキンに冷えた氷水を喉一杯に飲み流すような清々しいまでの失敗劇と、その失敗を唐突に、しかも想像以上に自覚してしまった瞬間に彼女の中に芽生えた自責の悔恨と無力感のマリアージュです。美しい。
 リオは本当に美しい女性です。もし彼女の取り組まなければいけない課題というのが、もう少し簡単で、もう少し平和な問題だったとしたら、彼女は間違いなくそれを全知を以て解決し、彼女自身がキヴォトスの勇者としてその功績を大勢に称えられていただろうと思える程に、彼女は力強く美しい気高い女性だと感じました。しかし、キヴォトスの事情はそんな彼女のキャパすらも上回る程に壮大でヘヴィだった。
 世界に翻弄され、内心を打ち明ける事もできぬまま、大多数の幸福を守る為に合理的に暗躍し続けた孤独な少女が自己犠牲も虚しく完膚なきまでに失敗し、最後の最後には稚拙な謝罪文を置いて逃走する。まさか美少女モノソシャゲシナリオでここまでのクオリティの読み物を体験できるとは思ってもみませんでした!
 きっと、描写はされていないものの、「ごめんなさい」という置手紙を机に置いた彼女の顔は、あの美しい顔には似合わない程の大粒の涙でグショグショに濡れていたと思います。考えるだけでゾクゾクしませんか。

 ブルーアーカイブ、私にリオという女性を教えてくれてありがとう。

●余談2:エイミのブラについて

 ねぇ、あのファスナー、何?何?てか服装。服装。ねぇ。
 え?開くんか、あれ?
 ・・・まさか!!ヒマリ!!お前病弱をこじ付けてエイミの!!
 まったく!業の深いゲームだぜ!!ブルーアーカイブ!!

●おわりに

 全くどんどん面白くなりやがる。最高だぜBlue Archive!!実は次の補習授業部編も個人的にかなり楽しみなので、またまた節目で感想文を書いてみたいなと思っています。それでは。

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