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【短編】旅するクマ

クマのぬいぐるみをギュッと抱きしめた赤いリボンをつけた小さな女の子が不安そうにキョロキョロと何かを探している
到着する電車の案内のアナウンスが構内に響く
女の子は、ここで何をしてるのだろう?
何を探しているのだろう?
と、私は不思議に思った
なぜなら、女の子の周りには女の子の保護者と思われる人の姿が見当たらなかったからだ
迷子かな?
と、私は、思って、女の子に話しかけた
私に話しかけられて、女の子は、少しビックリしたようだった
そして、次の瞬間、女の子は、ギュッと唇を結んで、何かを決心したよう見えた
女の子から私が聞いた話しはこうだった
女の子には、おばあちゃんがいるらしい
ところが、おばあちゃんは、ここ最近足を悪くしてしまって、外に出ることができなくなったらしい
おばあちゃんは、とてもアクティブで、旅行好きな人だったらしい
ところが、足を悪くしてからは、旅行に行けなくなってしまったとか
すっかり、元気をなくしてしまったおばあちゃんをなんとか元気にしたいと思っていること
女の子が、抱きしめているクマのぬいぐるみは、そのおばあちゃんからもらったもので、もともとは、おばあちゃんが大切にしていたクマのぬいぐるみだったこと
おばあちゃんの1番の友達に旅行に行けなくなったおばあちゃんの代わりに旅行に行って欲しい
と考えたこと
だから、旅行に行く人にクマのぬいぐるみを一緒に連れて行って欲しいと頼もうと駅に来たこと
連れて行ってくれる人を探していたということ
私は、女の子の話を聞いて、胸が締め付けられるような感覚を覚えた
そして、私は、女の子に 
「私が、その役をやってもいい?」
と言った
私の言葉を聞いて、女の子は、とても驚いた顔で
私の顔を見た
私は、肩にかけたボストンバックを指差して
「これから、ちょうど出張で北海道に行くのよ」
といった
それを聞いて、女の子は、全てを理解したようだった
そして、私は、女の子にひとつ提案をした
それを聞いた女の子は、頬を赤くして喜んだ
そして、私は、女の子からクマのぬいぐるみを
預かると駅の改札を抜けた
北海道に着いた私は、時計台を背景にしたクマのぬいぐるみの写真をスマホで撮った
そして、コンビニに行って、その写真をプリントアウトした
なかなかいい出来だった
次の日、私は、女の子から聞いた住所にその写真を送るために手紙をポストに投函した
数日後、女の子から私のスマホに電話がかかってきた
おばあちゃんは、一番古い友達のクマのぬいぐるみが遠い北海道に旅行に行った写真をみて、とても驚いて、そして喜んでくれたとのことだった
私は、女の子の弾んだ嬉しそうな声を聞いて幸せな気持ちを 感じた
それから、女の子のクマのぬいぐるみは出張の多い私の会社の人たちの出張のお供として、全国を旅して歩くようになった
そして、行く先々で、旅をエンジョイするクマのぬいぐるみの写真が送られてくるのを女の子と女の子のおばあちゃんはとても楽しみにしてくれている

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