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【短編】ガラス瓶

透明なガラス瓶が窓辺に 飾ってあるのが見える
ガラス瓶は、窓から差し込む光を反射してキラキラと光を無数に放っている
キラキラという音が聞こえてきそうなくらいガラス瓶を通して光が踊っている
それを私は、ぼーっと眺めながら、綺麗だなと 感じていた
そのガラス瓶を私はいつ手に入れたのか
そして、いつから窓辺に飾ってあるのか
誰が窓辺に飾ったのか
全く思い出すことができない
そんなことを考えながら、キラキラと踊る光をまとうガラス瓶を眺めていた
秋の日曜日の午後の私の部屋にはFMのラジオ番組が流れている
リクエスト曲のボサノバが耳に静かに引っかかる
熱いコーヒーを飲みながらガラス瓶と光を眺めながらFM放送を聞く休日は悪くない
と思いながら、何かしら心にほんの少しだけざわつきを感じていた
そのざわつきがなんなのかは考えてもわからない
そんなモヤモヤを感じながら、バタークッキーを
齧ったら、突然子供の頃に読んだ本が頭に浮かんだ
確か外国の童話だった
と私は思った
詳しいストーリーは思い出せないけど、ガラス瓶が印象的な話だった
そうそう、主人公が海岸に行くと浜辺にキラキラと光る光を見つけて近づいてみると半分砂に埋まったガラス瓶を見つけるんだった
そして、そのガラス瓶を砂から取り出してみると
そのガラス瓶の中には、手紙が入っていたんだった
そこまでは、思い出したけど、それからその主人公がその手紙を読んで、どうしたのかはいくら 思い出そうとしても思い出せなかった
なんだか今日は、思い出せないことばかりだな
と、ぼんやりと思った
耳に届くラジオはいつのまにか番組が変わっていた
軽快なポップスが部屋中に流れている
なんとなく、無意識に聴きながら、リズムをとっていると、ふと思い立って私は立ち上がって、隣の部屋に行った
私は、便箋とペンを持って、隣の部屋から戻ってきた
そして、便箋にペンを走らせた
そう童話のように、あの窓辺に飾ってあるガラス瓶に手紙をいれて海に流してみようと思ったのだ
私は、手紙を書き終えるとガラス瓶のコルクの蓋を外して、丁寧に書いた手紙をいれてコルクの蓋をしっかりとしめた
海に行くのは、次の休みになるので、私は手紙をいれたガラス瓶をまた窓辺に戻した
そして、次の休みの日に私は、電車を乗り継いで
出かけた
鞄の中に手紙をいれたガラス瓶を忍ばせて、駅に着くと私は、海の見える丘行きのバスに乗った
バスの窓から光がキラキラと反射して踊る海を眺めた
バスの心地よい振動を感じながら、バスは海の見える丘へと真っ直ぐに進んでいく
かすかに波の音が聞こえる
私は、なんとなく鞄の中のガラス瓶を確認する
大丈夫、ちゃんと入っている
と、私は心の中でつぶやいた
背中でバスの扉が閉まる音がする
3分ほど歩いて
私は、海の見える丘にたどり着いた
潮の匂いを感じる
岸壁に砕ける波の音が聞こえる
私は、ちょうど良さげな場所を見つけると鞄の中から手紙の入ったガラス瓶を取り出した
しっかりと蓋が閉まっていることを確認すると勢いをつけてガラス瓶を海へと投げ込んだ
私の手を離れたガラス瓶は波間にユラユラと頼り投げに揺れている
キラキラと光を反射させて光る海が眩しかった
海に放たれたガラス瓶が、キラキラと光を踊らせ
波にみをまかせているのをみていると、私の胸のあたりにも何かキラキラとした光が入ってきたような感じがした

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