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【短編】森の友達

団子の文字が書かれたのぼりが、はためいてるのが見える
だんご、だんご
と、繰り返す陽気な歌が聞こえる
甘辛い香ばしいにおいがして、空腹感を刺激される
僕は、串団子の売っている小さな店に入った
そして五本入りの串団子を20パック買った
自分用とこれから回る営業先への差し入れ用をついでに買った
店を出て、しばらく歩いてると、小さな公園が見えてきた
僕は、そこで串団子を食べることにした
東屋になっているベンチに座ると、早速、串団子の入ったパックを開けた
そして、串団子をほおばろうとすると
「くんくん!
いいにおいですね
それは なんですか?」
という声が聞こえた
声のした方をみると、一匹の白いネズミが興津々の目で僕の方をジッと見ていた
「串団子だよ」
と、僕がいうと、それを聞いた白いネズミは、ピクピクと耳を動かして
「あのお
それを一つ、僕に分けてもらえませんか?」
と、潤んだキラキラした瞳で、まっすぐに僕を 見つめていった
なんとなく、ものすごく断りづらい感じがしたし 一つぐらいはいいだろうと、僕は串から一つ団子を外してネズミにあげた
白いネズミは、両腕に団子を抱えて、はむッと団子をかじった
そして、なんともいえない美味しそうな顔をして 微笑んだ
団子ひとつで、こんなに幸福感を感じられるなんて羨ましい
と、僕は思った
そして、ひとつ減った団子を食べようとすると 
「くんくん!
美味しそうなにおいがするぞ?
それは、なんですか?」
という声が聞こえてきた
聞こえた方をみると、キツネが一匹たっているのが見えた
「串団子だよ」
と答えると
それを聞いたきつねは
「どうか、その串団子とやらを、ひとつ、私に いただけないでしょうか?」
と言ってきた
ネズミにやって、キツネにやらないというのは不公平な感じもするし、キツネが妙に丁寧に頼んできたので、おかしくなって、僕は、キツネにひと串、団子をあげた
キツネは、目を細めて、美味しそうに串団子を食べた
美味しそうに食べるネズミとキツネを見て、僕は 
少し嬉しい気持ちになった
そして、僕も団子を食べようとすると
「くんくん!
なんだか、いいにおいがするぞ?」
という声が聞こえた
またか、今度は誰だ?
とみると、茶色いくまが一匹たっていた
「串団子だよ」
と僕が答えると
「串団子? 
食べたことがないなあ
さぞかし美味しんでしょうな
できれば、わたしにも、その串団子というやつを いただけないでしょうか」
と、クマは頭をかきながら、言った
僕は、そのクマの言葉を聞いて、ネズミにやってキツネにやって、クマにはやらないという道理はないなと思ったので、クマに1パックの串団子を あげた
クマは、串団子を、うまい、うまいと言いながら 食べた
それを見て、僕もとても嬉しい気持ちになった
そして、僕と白いネズミとキツネとクマは、公園の東屋のベンチで仲良く串団子を食べた
一人で、食べるよりも100倍、美味しく感じた
結局、僕が買った串団子は、僕とネズミとキツネとクマのお腹に全部、おさまった
営業先の差し入れは、なくなってしまったけれど こんなに楽しい時間を過ごせたのだから問題ないと、僕は思った
それから、一週間後、僕の家にひとつ宅急便が届いた
差し出し人の名前をみると、
森野 友 
となっていた
見たことも聞いたこともない名前だった
間違いかな?
と、思ったが、僕の名前と住所はあっているので 間違いではなさそうだ
もしかして、爆弾とかあやしいものなのでは?
と、思ってみたが
しがない営業マンの僕が命を狙われるなんてことはありえない
と思い直した
そして、荷物を開けてみると、そこにはクリや柿やキノコが、たくさん入っていた
それを見た時に、ふわっと串団子のにおいがした気がした
森野 友
あーあの、ネズミとキツネとクマからか
と、僕は、ピンときて、そして、なんだか律儀な 森の友達をおかしく、そして、いとおしく思った

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