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魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑥

闇の中に浮かび上がる扉は、錆びた金属でできている。
触れればポロポロと、崩れてしまうような、そんな脆さを感じさせた。
すぐ側の侵入者に関心を失った鳥達は、緑色の液体の入った箱に群がっている。
扉は容易く開き、さらに奥へと進むことができそうだった。
最初に、感じたのは強い腐臭だった。
砂浜に打ち上げられた魚が腐ったような匂い。
あまりにも強烈な匂いのために、すぐに鼻は麻痺してしまった。
自分が迷い込んでしまった世界の異様さに強い恐怖を感じている反面、なぜかこの景色に見覚えがあるような気持ちにもなっていた。
スマホの消えた画面に映った自身の額に出来た擦り傷から緑色の液体が微かに滲んでいた。
現実と夢とが混ざり合って一つになり、これ以上先に進むことは難しいようだった。
壁にもたれかかり、深く息を吸い込んんだ。
深海から自分を呼び戻す声が聞こえる。
還るべき所は一つ。
あまりにも長く人との交流を続けたために、アイデンティティが揺らいでいたのかもしれない。
いや、すでに人と混じり合った結果、人そのものになって、何もかもを忘れているのかもしれない。
深き者の見た一抹の夢の風景。
「先生!」
意識が朦朧とするなかで、自分を呼ぶ声がした。

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