リンゴとビスマス〜月面の花嫁②
老婆が見た化け物のことを、村の人間は【月面の花嫁】と呼んで信仰していた。
硬い鉱物のような皮膚を持った異形の怪物で、地上にいるどの動物とも似ておらず、その姿を見ただけで恐怖で震えが止まらなくなるほどだったという。
それが一体だけなのか、坑道の奥深くには他にもいるのかは分からないと老婆は言った。
「とにかく恐ろしくて、ワシは両親の墓の事など忘れて、無我夢中で村を離れた」
「それは災難でしたね。あの男達は何者なんですか?」
「逃げるときには気が付かなかったが、後をつけられていたの