棚架ヤスヒデ

持続可能な文筆活動を目指す、働き盛りの30代。全然ゆるくない本業の合間に妄想を垂れ流す…

棚架ヤスヒデ

持続可能な文筆活動を目指す、働き盛りの30代。全然ゆるくない本業の合間に妄想を垂れ流すために書く。

マガジン

  • レッサーパンダ群

    まだ書かれる前の小説の種。 あるいは短歌や詩の類を集めてみました。

  • 文章力強化のための奥義書

    自身の文章力を強化するために、参考になりそうな記事や作品を勝手にまとめておくマガジン。

最近の記事

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備忘録〜棚架ラ牡丹餅〜

棚から棚へ、特に順番はございませんが。 小説001【金魚になったママ】 小説002【ジムニーに乗った女】 小説003【泳げない詩人は鯛焼きを頬張る】 小説004【フクロウ座】 小説005【10MINUTES1LIKE】 小説006【劇団サンキの悲喜劇】 小説007「寒くはないかな」

    • リンゴとビスマス〜月面の花嫁②

      老婆が見た化け物のことを、村の人間は【月面の花嫁】と呼んで信仰していた。 硬い鉱物のような皮膚を持った異形の怪物で、地上にいるどの動物とも似ておらず、その姿を見ただけで恐怖で震えが止まらなくなるほどだったという。 それが一体だけなのか、坑道の奥深くには他にもいるのかは分からないと老婆は言った。 「とにかく恐ろしくて、ワシは両親の墓の事など忘れて、無我夢中で村を離れた」 「それは災難でしたね。あの男達は何者なんですか?」 「逃げるときには気が付かなかったが、後をつけられていたの

      • 悪意ある采配

        たったひとりだけ信じた人は今 ため息を吐いて呆れた顔でいう 愛や恋が こんなに面倒くさいなんて 思わなかった たったひとりだけ愛した人は 涙を流してこういった 愛や恋が こんなに面倒くさいなんて 思わなかった

        • 徹底抗戦

          不採用通知が届く。アニメ声だって個性だし、ふざけてもいないし。 飲み会は断っていい社会でも、お酌はしろと言われる矛盾よ ゆとり世代上司が眠る二次会で、誰かが叫ぶ。「置いていこうか!」 悟るほど経験はない、自信もない。諦めてない。目は死んでない。 動画よりハイスピードで過ぎていく景色の中で歩き始めた 殺伐とした世の中で、唯一コンビニの光は明るし

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        備忘録〜棚架ラ牡丹餅〜

        マガジン

        • レッサーパンダ群
          9本
        • 文章力強化のための奥義書
          5本

        記事

          リンゴとビスマス〜月面の花嫁

          廃坑の村から一人の老婆が訪ねてきたのは夜の8時を回ってからだった。 近くの宿場町までは2キロ以上も歩かなければならず、かといって野宿をするにはあまりにも危険過ぎた。 路銀の代わりに老婆は、貴重な話を聞かせてくれるというので、空いていた部屋に客人用の布団を用意することにした。 もうずっとお客など招き入れたことがなかったので、その布団は黴臭く、おまけに埃っぽいものだった。 それでも老婆は、感謝の言葉を口にするので、私のほうが申し訳ない気持ちになるぐらいだった。 「婆ちゃん、なんで

          リンゴとビスマス〜月面の花嫁

          パーフェクトな被害者様

          人生すべてが他人のせい 絶対的な被害者様は苦しかろう 何も選び取ることはできなかった 全ては他人の意志の介在する人生 命の誕生から この先に続く死の崖っぷちまで ベルトコンベアーに ただ載せられていくだけ 選択の余地はなかった 選ばされていたとあなたは言うだろう 一体誰があなたの人生に対して そんな酷い仕打ちをしているのか 神か 悪魔か 運命か 抗っていたのだとあなたが言うだろう 身体一つも自由に動かせない ただ、眉を顰めることしか 嗚咽を漏らすことしかできない なにもできな

          パーフェクトな被害者様

          チームシュラスコ(仮)

          新しいTRPGのルールブックを作るプロジェクトを始動しました。 クラウドファンディングで500万円の寄付を募って国産のるるぶを作ります。 一度もGMを経験したことがないので、たくさんの人に力やお知恵をお借りしながら楽しみながら進めていきたいと思います。 資金が集まらなかったら自腹を切って作る事になると思うので、こちらのnoteでも時々宣伝を挟んでいきます。 1からではなく、ゼロからのスタート。 まずは、キャンプファイヤー様の審査を通るように申請をしていきます。 500

          チームシュラスコ(仮)

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑧

          誰もが何者かになりたくて 何者にもなれずに消えていく 最初から自分は自分でしかなくて どんなに見た目や形を変えたところで 本質の部分は何一つ変わらない 翼があっても空は飛べず。 水掻きがあっても海を泳げず。 地面に縛られ続けている私達は何者なのか。 地下牢で見たのは自分とそっくりな黒い羽を持った生き物だった。 初めてみた同胞。 だが、明確に違うのは彼ら彼女らには個性がなかった。 知性がないといってもいい。 この地に幽閉されているうちに退化したのだろうか。 かつて先生だったも

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑧

          電撃戦

          自由がない方がいいねといった君 トーストが焦げていく朝 球体のカプセルトイの内側の昭和61年の花柄 湯冷めした黄色いアヒルにぎりしめ、答えを探すふりをしていた 笑点が終わる頃、少し高い焼き芋の『包み』を噛じる 木製のテーザー銃を撃ち合って、カーテン裏で秘密の告白

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑦

          膝から崩れ落ちた体を支えるように、すっと両腕が差し出される。 グズグズにくずれた肉体から、あの異臭が放たれる。 ☓☓は一切のためらいもなく、それを支えようとしている。 「海が近くなればなるほど、記憶が、蘇っていく気がして」 蜥蜴のような鱗に全身が覆われた上半身と人間の下半身を併せ持ち、耳元まで口が裂けた異形の姿。 「ここは深き者どもの棲家だった。ようやく正しき世界へ繋がる道が開けたのに」 「この世界でも、先生は私の違和感を受け入れてくれた。信じてくれた」 「それは、君の見てい

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑦

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑥

          闇の中に浮かび上がる扉は、錆びた金属でできている。 触れればポロポロと、崩れてしまうような、そんな脆さを感じさせた。 すぐ側の侵入者に関心を失った鳥達は、緑色の液体の入った箱に群がっている。 扉は容易く開き、さらに奥へと進むことができそうだった。 最初に、感じたのは強い腐臭だった。 砂浜に打ち上げられた魚が腐ったような匂い。 あまりにも強烈な匂いのために、すぐに鼻は麻痺してしまった。 自分が迷い込んでしまった世界の異様さに強い恐怖を感じている反面、なぜかこの景色に見覚えがある

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑥

          蝿の王と蛆の姫⑧

          監督の言葉を思い出す。 「昔読んだジュブナイル小説のタイトルがどうしても思い出せないんだ」 「それも冒険ものなんですか?」 「いや、それはどちらかっていうとアレだな。ボーイ・ミーツ・ガールって感じだな」 「恋愛小説?」 「うーん、なんというか恋愛未満小説という感じだったかな」 本音を言うとき、監督は目線をわざと逸らす癖があった。 「できればそういうのを撮りたかったんだ。けど、もう俺の年齢ではそれは難しい」 監督はいつものポーカーフェイスに戻る。 そんなやりとりをした事をふと思

          蝿の王と蛆の姫⑧

          時間を告げる天使

          死を想うのと同じ速度で チーズが溶けるまで ダーツが刺さる瞬間 ハツカネズミの一生 ひとつの恋が始まって それが終わるまでの時間 最初にあったひとつ 最後に残ったひとつ 何も変わらないのに なせだかそれは とても足りない まるで何事もなかったように 時間を告げる天使が 天に幕を降ろしていく 月が欠けるまで 宇宙がはじまる瞬間 1つの星が最後に放つ光

          時間を告げる天使

          夜縋り

          あぁ明けないでくれ このままでいさせてくれ 変わりたくはないのだ 現状に満足している 憐れみの視線 蔑みの眼差し コンクリートの壁が呼吸している 作業服の亡霊達が一斉にヘルメットを地面に叩きつける ブルーシートに包まった令和のお地蔵様達が一心不乱に祈りを捧げている 指差し確認のヨシ!が聞こえる 祈りの声を風の音がかき消していく むき出しになった配線のコードが血管のように花を咲かせている

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑤

          水路から出た後は、木製の格子のある部屋に出てきた。 ☓☓は、現実世界に戻れただろうか。 それとも、あれは出口ではなく別の世界への扉なのか。 木製の格子は外側から錠前が取り付けてあり、中には顔の無い複数の鳥達が黒い2枚羽を羽ばたかせている。 また、吊るされた不気味な荷物から緑色の液体が染み出している。 できるだけ近づかないように入ってきた通路側の壁を背にして進む。 こちらには今の所は、無関心なように見える。 目や鼻がないので、こちらを知覚していないのか。 羽ばたきで、埃が舞って

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか⑤

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか④

          階段をゆっくり降りていく。 さっきまでは、目の前になかったそれは今では現実のものになっている。 地下鉄の出入り口にしては、あまりにも小さい。 踏みつけると、たしかに地面が存在している。 「滑りやすいから気をつけて」 「表面が濡れているみたいだ」 予想に反して、地下道には光源となるランプが等間隔に吊るされている。 自然にできたものではなく、人工的な建造物なのかもしれない。 「防空壕?」 「その可能性はある。最近はシェルター付きの住宅が売られているというし」 空気は湿気を含んでい

          魔導人形は深き者どもの夢を見るか④