蝿の王子と蛆の姫⑤
ただしく、導かれている。
ルールはまだ解らないが、少なくともどこに行けばいいのかは理解できた。
神社の鳥居をくぐると、空気が変わる。
人影が見えたのでお堂に歩み寄る。
「来たか」
頭上から声がする。
「なんなんですか?このゲームは」
「未完成版のヴィレッジライフ」
「そんなものを僕らやらされてるんですか?」
「〜をやらされているという設定の鈴木崇」
「どういう意味ですか?」
「私はまだ貴方もNPCだという可能性を排除しない」
「は?それを言うなら貴女だって」
「それは各々の自覚によるものだ」
「あなたの現実世界での名前は?」
「有坂悠和。テストプレイヤーであり、製作者の一人だ。」
「一人?」
「原作者は他にいる。私は実は君と会っている。現実世界で」
「え?覚えてないんですが……」
「というのは嘘だ」
「いやいや、知りませんよ。カマをかけられたのかどうかもわからない」
「その反応は、とてもらしい。70%信じよう」
有坂は13〜15ぐらいの少女の姿をしていた。
藍色の着物をだらしなく着込んでおり、その肌は異様に白い。
「わかりました。そのテストに付き合いましょう。貴女の知っている鈴木崇の情報はそういう設定だからという可能性は排除できない」
「模型を作ったはずだ。この街の」
「はい」
「必ず綻びがあるはず。この世界はどこにも繋がっていない。だからこそ、生じる矛盾がある」
「監督が言ってました。このゲームは蝿の王を模したサバイバルゲームだと」
「80%」
「この村の出口はトンネルと、桟橋。見る限りトンネルへの道は塞がれているが、医薬品や食料は物流トラックで運ばれてくる」
「それはもういい」
「製作者なら、ゲームクリアの方法は分かるんですよね?」
「この村は十二時間後、山城の盗賊達によって滅ぼされる。君や私の家族、その他大人達は殺される」
「なるほど」
「生き残った子供達は自分たちだけの村を再興する」
「もっとゆるいゲームだと思っていました。監督のノスタルジックな趣味かと」
「まぁ、それもある」
このあと殺戮が起きる村にしてはここの空気は穏やか過ぎた。
どんな殺気もかき消す徹底されたのどかさに支配されていた。
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