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第22回:為替リスクの発生理由と、その回避方法をお話します【日本型オペレーティングリース】

こんにちは、JOLアドバイザーです。

日本型オペレーティングリース(以下:リース事業)に出資した場合、円貨で出資するにも関わらず、その償還がドル貨の商品が多いです。

その場合、投資家が為替リスクを追う事になってしまうのですが、できるだけそのリスクは避けたいですよね。

そこで今回は、①なぜリース事業では為替リスクが発生するのか、そして②為替リスクを回避する方法をご説明します。

今回の記事を読んでいただくと、為替リスク発生のメカニズムと、その回避方法が分かり、出資案件を選択する際の参考になるはずです。

※私について知りたい方は自己紹介をご覧ください


⒈為替リスクが発生する理由

リース事業は航空会社や海運会社(以下:賃借人)に対して行いますが、賃借人の産業はグローバルに展開しており、その決済通貨が原則として全てドルであり、原則として賃借人が円貨を有していない事が理由です。

例えば、航空会社の場合、その利用機材はボーイングやエアバスといった航空機メーカーから購入しますが、それらは北米と欧州の企業でありドル貨で決済されます。

その為、購入代金もドル貨で調達する必要があり、借入金や匿名組合出資金も全てドルで行われるのです。

その結果、航空会社から行われる借入金の返済や、匿名組合出資金の償還も、調達時と同じドル貨で行われる事から、投資家が為替リスクを負う事になるのです。

※海運会社に向けて行うリース事業ので為替リスクが発生する理由も、前述の航空会社の場合と同じです。

※匿名組合出資金は、リース会社がドル貨で代行出資を行い、その代行出資時の為替レートで算出された円貨の持分を、後日投資家に販売しています(その理由は本記事で後述しております)。


2.為替リスクの回避方法

しかし、為替リスクを回避する方法はあります。

(1)航空会社が賃借人の場合

航空会社が賃借人のリース事業の場合、下記のいずれかに該当する場合為替リスクを回避する事ができます。

①日系航空会社
②日本に就航している外資系航空会社

 ①日系航空会社

日系航空会社の場合、その主たる収入は日本の旅客から支払われる円貨の運賃です。その運賃で獲得した円貨を投資家の償還原資に充当する建付になっている事から、日系航空会社が賃借人のリース事業は、為替リスクが発生しない商品設計になっています。

 ②日本に就航している外資系航空会社

日本に就航している外資系航空会社の場合、日本人旅客からはその運賃が円貨で支払われているケースがあります。日系航空会社案件の場合と同様、その円貨を投資家の償還原資に充当する建付にしたリース事業であれば、為替リスクが排除されます。

ただし、この場合の注意点は、当該外資系航空会社が将来日本への就航を無くした場合は円貨の収入が無くなるという事です。

円貨で投資家出資金を償還する契約のリース事業において航空会社の日本就航が無くなった場合は外資系航空会社の円貨収入が無くなります。

その場合、外資系航空会社自ら円貨を調達する必要が生じますが、その円貨の調達コストがネックとなり購入選択権を行使しない選択をする可能性があります。

以上の理由から、外資系航空会社の案件に出資する際は、日本と関係が深く、またその就航が無くなる可能性が低い航空会社の案件を選択するという視点も持っておくと良いでしょう。


 (2)海運会社が賃借人の場合

海運会社が賃借人のリース事業の場合、下記のいずれかに該当する場合為替リスクを回避する事ができます。

①日系海運会社
②日本の荷主を有する外資系海運会社

 ①日系海運会社

日本郵船、商船三井、川崎汽船と言った日系海運会社の場合、主な収入源では日系の荷主(輸送の委託者)から円貨で支払われる運送料である為、円貨を保有しています。

日系海運会社向けのリース事業はその円貨を投資家の償還原資に充当する建付になっている事から、為替リスクが発生しない商品設計になっています。

 ②日本の荷主を有する外資系海運会社

日系海運会社の場合と同様に日系の荷主と契約を抱える外資系海運会社の場合は円貨収入があります。その円貨を投資家の出資原資に充当する建付にしたリース事業であれば、為替リスクを追わずにすみます。

ただし、船舶を対象とするリース事業は、新造船の場合一般的に7年以上である事が多いですが、外資系海運会社と日系荷主が運送契約をその様な長期間で締結する事はほぼありません。

仮に、外資系海運会社向けリース事業で、投資家の償還原資が円貨の場合、当該外資系海運会社が日系荷主との契約が無くなると円収入が途切れ円貨の保有が無くなります。

しかし、その場合おいても、投資家出資金の償還は円貨と定められている事から、外資系海運会社自ら円貨を調達する必要が生じますが、その円貨の調達コストがネックとなり購入選択権を行使しない選択をする可能性があります。

その為、外資系海運会社のリース事業で円建て償還の案件については、投資家への償還原資である円貨をどの様に調達するのかを、出資時にリース会社にしっかりと確認を行う必要があります。


(3)直接出資(航空会社/海運会社共通)

航空会社、海運会社を賃借人とするリース事業に共通する方法ですが、直接出資をするという方法を選択する事で為替リスクの回避が可能です。

直接出資とは代行出資を挟まない出資方法の事です。

<直接出資と代行出資>
一般的なリース事業では、投資家からの出資金を集めてリース事業を開始するのではなく、リース事業を開始させてから投資家出資金を募集します。

そこで、リース事業を開始させる為、投資家持分の匿名組合出資金を一旦リース会社が代わりに出資します。

そして、リース会社はその出資持分を、出資日の為替レートで円転し、その円転した匿名組合出資の持分を円貨で投資家に販売しています。

この一連の流れを、代行出資を介したリース事業への投資と言います


反対に、この代行出資を行わず、投資家自らがリース開始時にドル出資を行う事を直接出資といい、直接出資を行う事で為替リスクを排除できます。

ただしその場合、①投資家は損金計上を意図する決算期の1年以上前に投資をする必要がある事と、②ドルの余剰資金を保有していなくてはならないという、2つの問題があります。

①については、リース事業はのスタートは匿名組合決算日の1年前である事が多い為、投資家は損金計上したい決算期の1年前というかなり早いタイミングで出資の決断をしなくてなりません。多くの投資家にとって、1年前に出資を決断する事は非常に困難なのではないでしょうか。

また、②についても、事前にドル貨の残余がある事が条件です。

これらの理由から、理論上直接出資をする事で為替リスクを回避する事は可能ですが、多くの投資家にとっては、そのハードルが高い方法と言えます。

⒊まとめ

為替リスクを追わない為には、できるだけ日系企業を賃借人とするリース事業に出資するのが望ましいですね。

ただし、日系の賃借人を対象とするリース事業の組成件数自体が少なく、それ故どうしても外資系賃借人が多くなってしまうというのが、昨今のリース事業におけるマーケットです。

今回の記事が、リース事業への出資におけるご参考となれば嬉しい限りです。

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元本割れリスクの低い商品選びのポイントについてここだけの情報をこっそり記載していますので、これから出資を検討している方は是非読んでみてください。

<こんな方にオススメです>
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・税理士や銀行の紹介で出資を検討している
・過去リース事業に出資した経験がない
・出資リスクをしっかり把握したい


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