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第19回:世界の航空機リース専業会社一覧【航空機ファイナンス】

こんにちは、JOLアドバイザーです。

世界には航空機リースを専門に行う会社があり、その様な会社をオペレーティングレッサーと言います。

今回はオペレーティングレッサーのランキングを作成したので、それを元に世界の航空機リース業界の規模感と、日系リース会社の存在感について解説したいと思います。

※私について知りたい方は自己紹介をご覧ください


⒈オペレーティングレッサーランキング

オペレーティングレッサーのランキングはこちらです。

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保有機材が多い順で表示しており、ランキング1位のAirCapは保有機材が1,000機を超えています。

その規模感がどの位かと言うと、2020年3月時点の日本航空(以下:JAL)と全日本空輸(以下:ANA)のそれぞれの保有機材は、JALが241機(内リース機材24機)でANAが307機(内リース機材99機)であり、日本の大手2社の3−5倍の機体数を保有しています。

この事から、航空機産業におけるリース需要の高さと、航空機リースを専門に行うオペレーティングレッサーの存在感がご理解いただけると思います。

⒉オペレーティングレッサーの存在意義

航空会社が新造機を導入しようと考えた際、1機単位で発註する事は稀で、運行プランや機体のライフサイクルを検討し複数機単位での発註をします。

その際の航空機価格は、ナローボディ機(B737シリーズやA320シリーズの通路が1本有する航空機)は1機あたりの新造機価格が50億円相当、ワイドボディ機(B787シリーズやA350シリーズの通路を2本有する航空機)は1機あたりの新造機価格が150億円相当です。

これらの機体を複数導入する事で、初期投資費用は、数百億円から場合によっては兆単位で必要になります。しかし、それらの資金を現金で支払える航空会社は稀です。

この様に、航空業界は莫大な金額の初期投資が必要である事から、リースを積極的に活用した航空機導入を行っており、それをオペレーティングレッサーが支えているのです。

それ故、上位のオペレーティングレッサーは、大手の航空会社を凌駕する航空機を保有しているのです。


⒊航空機リース業界における日系企業の存在感

日系リース会社は2010年以降オペレーティングレッサーの買収を行い、その存在感を高めています。上位21以内にランキングするオペレーティングレッサーと関連の深いリース会社を紹介します。

 (1)オリックス

オリックスは1991年に100%出資子会社ORIX Aviationを設立。同社の保有機数は約200機と世界17位に位置するほか、2018年にORIX Aviationを介して世界3位のAvolon株式の30%を取得するなど(取得価格約2,500億円)長年に渡り世界の航空機リース業界での存在感を示している。

 (2)三井住友ファイナンス&リース

2012年にロイヤル・バンク・オブ・スコットランドが保有する航空機リース事業を三井住友銀行並びに住友商事と共同で買収し、SMBCアビエーションキャピタルを設立(買収価格は約5,500億円)。

SMBCアビエーションキャピタルの保有機材は2020年末時点で約700機超(発注残高含む)と航空機リースの分野で世界第6位と、日系航空機リース会社の中で最大の規模。

 (3)東京センチュリー

2019年にAviation Capial Gloupを約3,200億円で買収。保有機材は約400機(発注残高を含む)であり世界第11位の規模。

 (4)三菱HCキャピタル

2012年にJackson Square Aviationを約1,000億円で買収。保有機材は約180機であり世界第21位の規模。

 (5)みずほリース

2020年に丸紅と共同で航空機リース分野で世界第12位のAircastle(保有機材:約300機(発注残高含む))を買収。持ち株比率は丸紅75%・みずほリース25%。


4.オペレーティングレッサーを保有するメリット

オペレーティングレッサーは自社で航空機を保有しており、世界の航空会社ニーズに応じたリースを提供しています。

この事から言えるのは、オペレーティングレッサーは航空機のアセットマネジメントのプロという事です。

日系のリース会社は従来から航空機の日本型オペレーティングリース(以下:リース事業)は組成できたのですが、リース満了時の中古市場での再販活動が苦手であるという欠点を抱えていました。

その為、リース事業で購入選択権が行使されず市場売却を行う場合は、手数料を払い外部のブローカーや総合商社、世界のオペレーティングレッサー等の委託先に売却活動を丸投げして委託する状況が続いていました(以下、これらの委託先を再販代理人と表記します)。

しかし、その再販代理人がどの様に営業活動を行い、本当にリース会社にメリットのある活動をしているのかは、ブラックボックスに包まれている部分もあり、日系リース会社が航空機ファイナンスの分野で事業を拡大するためには自らが再販ノウハウを手にする必要性が有ったのです。

その様な状況下、2010年台に入るとリーマンショックの余韻から、海外の金融機関が航空機ファイナンス部門の売却を推進し、オペレーティングレッサーが売りに出されました。

そのタイミングが日系のリース会社の航空機ファイナンス拡大のタイミングと重なった為、日系リース会社が世界のオペレーティングレッサーを取得をしたのです。


5.日系リース会社の今後の展望

日系リース会社は取得したオペレーティングレッサーを通じて、航空機のアセットマネジメントに関するノウハウを積極的に吸収している段階と言えます。

今後、そのアセットマネジメントのノウハウを活かし、日本型オペレーティングリースも利益の繰り延べ目的だけではなく、キャピタルゲインやインカムゲインの獲得を目的とする、純粋な投資を目的とする商品も多く組成されるのではないかと思います。

一方、昨今のコロナ禍の影響で、多くの航空会社がリース料の支払いを遅延していると耳にします。

その為、航空機を複数保有するオペレーティングレッサーに支払われるリース料も未払いや遅延が発生していると言われています。

場合によっては、株主である日系リース会社もその影響が波及する事が想定され、せっかく拡大した航空機リース事業の縮小をしなくてはならない事態も生じるものと筆者は想定しています。

⒍まとめ

世界のオペレーティングレッサーのトップ21位に、日系企業の100%出資会社が5社存在する他、世界3位のAvolon社の株式の30%をORIXグループが保有しており日系企業がその存在感を示している。

また、オペレーティングレッサーを取得する事で、日系リース会社の弱点であった、航空機アセットマネジメントのノウハウを取得し、航空機ファイナンス事業を拡大する事が期待できる。

その反面、コロナ禍により航空業界は総じてリース料の未払いや遅延が生じており、オペレーティングレッサーがダメージを避ける事は不可避。

規模が大きすぎる事により、そのダメージが株主である日系リース会社本体に大きなダメージを与える諸刃の剣となりうる可能性を秘めており、今後の動向を注視する必要があります。

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