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育児で大切なことは比叡山が教えてくれた(2) 一隅を照らす ギャン泣き

第2回目は、「一隅を照らす」とギャン泣きです。

「一隅を照らす」という言葉を聞いたことはありますでしょうか。
アフガニスタンで医療人道支援を最期まで尽力された中村哲さんやYahoo Japanの川邊社長(2020年現在)の座右の銘にもなっております。

「一隅を照らす、此れ即ち国宝なり」  伝教大師最澄

比叡山で天台宗を創った最澄さんが1250年程前に遺した言葉です。
さて、この意味。 皆さんはどう考えますか?

仏教界でも色々な解釈がありますし、真意は最澄さんしかわかりませんが、私自身一僧侶としてはこう捉えています。

世界は広くて大きいが、あなたの世界はそこにある
住んでいる街、暮らしている家、共に生きている人
一人、一つずつ世界がある
そして人は必ず、火種を持つ
その灯で世界を照らしていますか
照らせば、あなたは世界の宝

「一隅を照らす」を英訳した高僧がいらっしゃいます。
"Light up your world" と。この訳には驚きました。戸田奈津子もびっくりです。
「一隅」は"Corner of the world"ではなく「あなたの世界」なんだと。
腑に落ちました。そして、上のような解釈をするようになりました。

では、なぜ赤ちゃんのギャン泣きが一隅を照らすのか?

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赤ちゃんの世界は大人に比べると本当に小さな小さなものです。
その小さな世界の中で一所懸命にミルクを飲み、排便をし、身体を動かし、泣いて一日を過ごします。
赤ちゃんは、狭い狭いその世界でも、与えられた命を、火種で照らそうと頑張っています。
笑ったら皆が喜ぶか、泣いたら皆が悲しむかすらもわからない中で、ただただ生きています。
「子は鎹」 存在だけで十分な孝行をしてくれますが
赤ちゃんは伝家の宝刀「ギャン泣き」を使って、少しでも明るく世界を照らそうとしているのかもしれません。

ネグレクト、暴力、虐待、と悲しくて耳を塞ぎたくなるニュースが巷には溢れかえっています。しかし、僧侶としてはそこに至ってしまった親御さんも辛かったのだろうな、ボタンの掛け違いがあったのかな、と思いを馳せます。

子は、ただただ一隅を照らしている。
親を困らせるつもりもなければ、迷惑をかけようとも思っていない。
火種だけはどうか消さないでほしい。

子の小さな明かりに照らされて、親は親の一隅照らすだけ。
そうして、家は明るく照らされて。
街は明るく照らされて。
国は明るく照らされて。
世界は明るく照らされる。

そんな明るい世界を作ろうとした最澄さんの想いが、赤ちゃんの泣き声から聞こえてくるのです。

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一隅を照らす赤ちゃんは、親の、国の、世界のたからもの。


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