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普通に生きたい僕であった(57)

『ここは何ですか?』僕はこれを何より知りたかった。ここがいったいどこなのかを。いったいなぜ僕がここにいるのかを。彼は答えた。「ここは異世界さ。君はどうやら魂だけ異世界に飛ばされたようだね。変える方法は俺にもわからない。だが、手伝ってやることはできる」僕は頭を下げた。ここでは超能力も使えない。いったい何なのかがわからない。なぜここにいるのかもわからない。
彼は僕に食べ物を渡してくれた。別に腹は減っていなかったが、食べてみると、とてもおいしかった。「どうやら異世界者にしか君のことが見えないようだね」僕もそう思った。殺気から日本人らしき人しか僕のことを見なかった。日本にしか存在しないはずのアクセサリーをつけている人もいた。その他にも見ている人はいたが、すべての視線はこのスライムに向いていた。いったい何者なのかと僕は思った。かつては日本人だったということだろう。
「それで、君は何か知っていることでもあるのか?」僕は首を振った。「そうか…それならこっちに来てほしい」彼は僕をある場所に連れて行った。

それを見たとたんに僕は目を見開いた。驚いた。こんなものが存在するのだと。そこは森の中だった。光は届いてくるところが美しい。それは魔法のような模様が描かれた地面だった。その周りには様々なものがある。その一つは穴だ。
「これは地球、あるいは日本とつなげる魔法模様だ。でもまだ完成していない。問題だ。でもこれが完成すれば君も戻れるかもしれない」彼は僕を見た。「僕は数年分日本に遅れている。君に今の日本を教えてほしい」僕は協力することにした。その代わり、成功すれば僕が帰れるようにするというのが条件だ。それより前に帰るのでも帰れるなら同じことだ。

「そこまで変わらないんだな」彼が言うに今の日本と数年前の日本は全く変わっていないらしい。変わっているとすれば交通事故の多さだ。数年前にはめったになかったらしい。今では毎日日本ではある。
「ありがとう、それじゃあ…」ちょうどその時、何かが飛んできた。スライムの体を突き抜けるとはるか遠くに飛んでいった。「!?大丈夫!?」僕は慌ててスライムを見た。「ああ、大丈夫だ。この体は不死身といっていいほど強い。こんな銃弾で死ぬわけないよ。スライムだからね」ほっとしたが、銃弾が来た方向を見た。「始末できるか?」彼は彼を持っていた女の人に聞いた。「はい」彼女は茂みの中に飛び込んでいった。
数秒後に、向こうから悲鳴の声がしてきた。僕は何が起こったかは予想できた。「こんなものを見せてごめん、だがこの世界では弱肉強食だ。殺されるのならば殺す。これがこっちの世界では常識だ」わかっている。そんな世界だと予想はしていた。僕は首を横に振った。これは昔にも見たことがある。どこかはわからないが、見たことがある。誰が殺したのかはわからない。僕が殺したのかもしれない。小さい頃なのかもしれないしただ記憶がないだけかもしれない。「そうか…とりあえず聞いてみるよ」そういうと彼は歩いていきだした。といっても跳ねていった。
「あ、ちょ」声は出ないが、追いかけようとすると足滑らせた。そこまでは良かったが落ちてしまった。たった一つしかなかった、穴に。

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