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仕事は大変だ。やめて暮らせたらいいと何度思ったことだろうか。
そんなことを考えながら路地を歩いていると足音が聞こえてきた。非常に遅く、うなり声も聞こえてくる。
酔っ払いか? 後ろを見ても誰一人いない。
だが、前を見るといた。だが、人間じゃない。体は腐っていて、目はぎょろぎょろと見渡している。口は開けたままで匂いは言葉にしなくてもいいほど臭い。服からの匂いか体か口の中化はわからないがわかることは一つだけ、
ゾンビだ 180度回ると全速力で走った。何も考えない。ただ走り続ける。その先にはもっとゾンビが現れた。
真横にあった塀を乗り越え、走り続けた。息が荒くなってくる。もう手に持っているバッグはいらない気がして投げ捨てた。スーツも上に来ているものは脱ぎ捨てると体が軽くなった。もう少しは走っていける気がする。
だが、少し行くと目の前からもゾンビが来た。遅いが、足が諤々としてうまく体を動かせない。
後ろを見ると向こうからもゾンビが来ていた。
慌てて近くにあった家に飛び込んだ。

中には誰もいない。ドアを閉め、ロックをすると音が聞こえなくなった。家じゅうを駆け回りドアをロックし、窓も占めているとゾンビが襲い掛かってきた。
悲鳴を上げつつ、近くにあった酒の瓶を手に取りゾンビにめがけて打ち付けた。死んだ後なのでまだ動いていたがそのすきを使って襖にもぐりこんだ。
外ではゾンビがうなりながら歩き回っている。まるでさっきのことを忘れ去っているかのようだ。
やばいやばいやばい… 頭の回転がいつもよりも早くなった。ピンチの時はこうなるのだろうか。わからない。
頭が回転しているといい案を考えることができた。
ちょうどそこにはベッドがある。そのベッドを手に取り、ごそごそと頭の上からかぶせた。
これがあっているのならばこれで逃げることができるはずだ。

考えたことを説明しよう。
さっきまで襲い掛かってきたのになぜ襖に入ると襖を破ってでも襲ってこないのか。
もしも考えていることが合っているのならば見える生き物を攻撃する。
なので見つからなければいい。
今考えていることはたった一つ、ほかの生存者がいるのかを調べることだ。
もしも食べられてはどうなるかわからない。彼らと同じゾンビになる可能性だってあるし普通に死ぬ可能性だってある。
襲われるといつまで意識を保つことができるかも疑問だ。もしも死なない程度に食べられ続けると痛みが続き、いやだ。
だが、一瞬で死ねばなんか生きていて無駄だったって気分になる。
だから生きる。仲間がいればまだいないよりは心強い。

布団をかぶったままもぞもぞ外に出ると布団をのけた。言い方を変えよう。
布団をのけそうになった。一瞬外を見るとゾンビがうようよといた。やはり自分の考えはあっていたようだ。
そのままもぞもぞと進むと躓いて転ぶ者もいた。
進んでも進んでも終わりがない。実際的には進む速度がゾンビたちよりも遅かったからだ。
無理もない。この布団の中で動くことは結構苦労するのだから。
少しするとフェンスの前にまで行った。

一度しかチャンスはない。これは必ずこなすしかないだろう。
思い切って布団を放り投げるとフェンスの上めがけて飛び跳ねた。
「ゔ~!」

運よくてっぺんをつかむことができて反対側へと飛び越えた。
だが、もしも自分が飛び越えれたとすれば… 今考えていたことが現実になった。
飛び越えることは可能だ。ゾンビたちも同じだ。ゾンビたちはどんどん塀を飛び越えてきた。最後には塀まで倒れてしまった。
逃げ続けていると車の中から手を振っているのが見えた。腐ってもいない手だった。なぜかそれにつられて車の中に飛び込んだ。
そこには普通の人が立っていた。するとすぐにハンドルをつかみ、走り始めた。
「つかまっててね!」煙草を口に挟んだままハンドルをぐるりと回した。
普通の車にはできそうにない曲がり方をした。まるでスポーツカーのようだ。
少し行くとゾンビの数が減っていた。だが、道路にもゾンビはいる。そこらじゅうはボロボロだ。
だが、車はゾンビたちに突っ込んでいった。まるでこのゾンビたちが死なないことを知っているかのようだ。
ガタガタとしていたが少し進むと一つの倉庫についた。

「ここだ」その倉庫は入り口があった。鉄でできていて、ゾンビたちが壊せそうには見えない。
ガラガラとドアを閉めるとくるりとこっちを見てきた。「それで、君だけなのかな?私達以外の最後の生存者は」
少し考えてから首を振った。「違うと願いたい。でも多分あっているよ」倉庫の中を見渡すと静かだった。
ここにはゾンビがいないようだ。食料は様々あった。ソファだってある。テレビだってパソコンだってあった。
そこには大きな箱があった。てっぺんを目の前から見ようとすれば上を見上げないといけない。
「これは世界にたった一つしかない電気をためる機械だ。これを使えば一生ゲームを遊んでいれる。まあゲームを持っているのならばだがな」
軽くたたくと中はぎっしりと詰まっていることが分かった。とても響かない音だ。
すると、手を伸ばしてきた。「石丸だ。よろしくな」頷いて握手をした。「小林、よろしく」
周りを見ると壁で囲まれている。天井もある。地面はコンクリートでできている。
「でもこんなものでゾンビから身を守れる?突き破ってくれば終わりだよ」
すると、にやりとわらった。「だってゾンビたちは見えない限り攻撃してこない」
そのことはほぼ完全に忘れていた。
そのまま周りを見ていると様々なものを見た。
その時思った。いったいこの世界はいつからこうなったのだろうかと。
だが、訊くことはもう少し後にしておこうと思った。訊けば少し失礼だと思ったからだ。
すると一つの武器を見た。普通の日本刀だが本物だ。とがっている。試しにそこら辺のリンゴを空に投げ、切り落とそうとした。
だが、まだ特訓画筆賞なのかミスってしまった。「もう少し特訓が必要か」地面に落ちたリンゴを切ろうとすると真っ二つに切れた。だが、少し中心からはずれていた。

戻ると一つ知りたかったことを訊きに行った。
これはこれからのことでとても大事なことだと判断した。
歩いていくと向こうではバナナを向いていた。
「ねえ」問いかけるとこっちを向いた。「どうした?」
一度深呼吸をすると口を開いて訊いた。
「ゾンビって回復する?」

思った通りバナナを向きながら変な顔をした。「試したことはないけど不死身だと思うよ。もう死んでるからね。もしかしたら頭を切ったりどこか死ぬ場所があるかもしれないけど回復するかはわからないね。映画とかでは腕を切ると腕が勝手に動くということがあったから。でもそういうことはあいつに聞いて」バナナを口に入れると後ろを指さした。さっきまでは気が付かなかったが、そこには小さな箱があった。ガレージのようだ。
ドアは普通のドアで、中に入ると研究室だった。そこには試験管を持っていて、白い服を着た研究者が立っていた。「ん?」研究者の横にはコルクボードがかけられていた。そこには写真がたくさん貼ってあった。その中にはゾンビの大群や巨大なゾンビなどが張られてあった。
こっちを向いて歩いてくると顔をじろじろと見てきた。「見たことない顔だね」少し引いてから軽く頷いた。「少し前に初めて来たんだ」すべてを話すと最後まで真剣に聞いてくれた。「そうか、運が良かったのか悪かったのか…とりあえず生きたということでは運がよかったね。もしも運が悪ければ今頃君はゾンビとしてうろうろしていたよ。ゾンビたちは殺しても生き返る。回復をすることはほぼないけどもしも腕を披露ゾンビがいれば話が別だがね、どのゾンビでも腕を振れると元通りに戻る。どこまで遠くにいるゾンビでも落とした腕をゾンビが踏めば戻る、触れば戻る。だが、靴を履いていれば話が別だ。踏まれれば終わり。戻ってくることはない。」シャツの裾を少しめくりあげた。「!」見たもので驚いた。腰らへんには傷跡が残っていた。そこまで深くはないように見えるが、そこからはいやな、殺気のようなものを感じ取れた。
「この通り、僕はゾンビの爪で引っかかれたんだ。だからもう寿命は知事待ってるんだよ。だから死ぬ前に治療法を見つけようと考えてね。この傷も治すことができるかもしれないと思ったんだ」少しは希望があるのかと思ったがため息をついていた。「でもダメだった。この1年間、ずっと調べてきたけど何の手掛かりも得ることはできなかった」そこで声を出してしまった。「一年間!?」ずっと普通に生きていたが何も気が付かなかった。今日だって会社に行き、普通に仕事をして帰った。違ったことといえば息途中も道路が静かだったということだ。そのことはほかの社員も言っていたがそこまで気にすることではないと思っていた。
だが、その時のことを考えていればよかった。1日前までは普通に道路もにぎやかだった。ということはずっと1年間ほど夢を見ていたのかもしれない。今は夢なのかと思い、ほっぺたをひねってみると違うと分かった。
「ということは…」自分の手を眺めていた。何も考えることはできない気がする。「そう、君はこの1年間、どこかで夢を見ていたんだ。君の知らない間にね。しかもその記憶はすべて残っているから夢だとは思えなかった。だが、これが今の現実だ。もうこの世には人間が存在しない。引っかかれるか食べられると終わり、引っかかれると2年ほどでゾンビに変わってしまう。」この世は終わったかのような苦笑いをして続けた。
「この世はもう終わったんだよ」

驚いた。恐怖に満ちた。体が動かなかった。怖い。自分もいつかはゾンビになるのだろうか。もしかしたらもう体に傷があるのではないか。そんな考えが脳の中を駆け回っていた。「もう僕はだめだ。これを見てくれ」ズボンのすそを片方めくった。そこには緑の皮膚が見えていた。「こ、これは…」ズボンから手を離すと頷いた。「ああ、数日前から始まった。体がゾンビに変わっている。これを止める方法はまだ見つけていない。僕の寿命はあと1年しかない。1年間の間に何ができるだろうか」遠目で天井を眺め始めた。考えは一つあったが言いたくなかった。しかも腰に傷を負っている。あんなことをしても意味がないはずだ。考えたことはこうだ。
足を切る。
他には方法がないのか。考えたが全くの無意味だった。研究者の言った通り、無駄だ。悔しかった。悲しかった。助けたかった。だが、今は何の手掛かりもなしで何もできない。
外に出ると日本刀を手に取った。「ん?何をするんだ?」外ではまだバナナを食べていた。「狩る」それだけ言い残し、歩いていこうとした。「ちょっと待て、そんな危ない考え…」批判されると思った。こんな危ない考え、賛成するわけが…
「一緒に行ってもいいか?」にやりと笑ってきた。「は?」すると、周りから人が集まってきた。男性女性、様々だ。「いったいどこから…」だが、そんなことを聞く暇などなかった。
全員手には武器を持っていて、やる気満々だ。「おもしれぇ、俺も入れてくれ!」一人が前に出てきた。すると、ほかの人たちも前に出てきた。「こんな状態のママはいやよ」
あの研究者も研究室から出てきた。「僕も賛成だ。もっとわかることがあるかもしれない。僕の持っている情報はすべて渡そう。がんばってくれ」ガレージを開けると外には何匹かゾンビがいた。
「お前ら行くぞ!」バナナを口に含んだまま叫んだ。「おぅ!」そこからは完全に勝っていた。ゾンビたちは生きていたが、踏まれて粉々になると動かなくなった。その時思った。ゾンビの立場だったらどうなのかと。
普通に暮らしていると突然自分に似ている生き物が現れ自分と仲間たちをどんどん殺していく。
無差別だと思えたかもしれない。だが、これが人生だと思ってしまった。進み続けると巨大な何かが現れた。今までのゾンビとは蔵びものにならないほどの大きさだ。人間のように2本足で立っていなかった。どちらかというと際のような生き物だ。角は2本生えていて、体は灰色だ。ビルをつぶしてきている。
銃はまともに歯が立たず、とにかく逃げた。「散らばれ!」皆が散らばると動きが止まった。いったいどれを追えばいいのかわからないのだと願っている。
だが、少しすると動き始めた。くるりと回ると歩いて行った。「こんな生き物がいたなんて…」ちょうどその時、空を何か大きな生き物が通り過ぎた。カラスだ。だが、目は完全に真っ赤で叫び声がうるさい。耳をふさいでも耳元で叫ばれているかのようだった。
「いったいどうすればいいんだよ…」逃げることも考えたがやめた。とにかく今は動かないのが一番だ。舞い降りてきた。
体が動かない。気を失いそうだ。だが、今気を失えば多分食べられて死ぬ。必死で動かなかった。額には汗が流れ落ちた。
「カァー!」

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