落下の解剖学

3/3(日) TOHOシネマズ 流山おおたかの森
評価 3.9

 裁判ものでやたら時間が長いという前情報を持って、鑑賞。
フランス映画ということで、やはり長い。152分もあった。つまらなかったという訳ではないが、久しぶりに映画を観ている途中にうとうときてしまった。でもうとうとしたのは序盤なので、時間は関係ないはずなので単純にフランス映画特有の静謐な間にやられた感はある。

 基本的には会話ベースで、派手な演出は一切ないので高い集中力が求められる作品である。

 フランス映画ではあるが、主人公の女性はドイツ出身?とか言ってたかな。夫がフランス人のため、公用語として英語を話しており、ほぼ英語で喋っていた。裁判では頑張ってフランス語を話していたけれど、繊細なニュアンスを伝えきれず途中からはずっと英語で話していた。裁判では誤解を招くことを防ぐため、慎重な発言が求められるのだ。こんな些細な描写も描くくらいこの映画は裁判の様子がリアルに描かれていた。実際の裁判行ったことないけど。。とにかく他作品のよくあるような裁判ものとは違って、緊張感が伝わる映画だった。

 物語の大枠としては、旦那が家の補修中に落下死をきっかけにこの落下死が自殺なのか、妻による他殺なのかで裁判が執り行われる一連の様子を描いた作品である。ちなみに僕が寝落ちしてしまったのは、ちょうど裁判が始まるあたりで気がついたら主人公が裁判に立っていた。
 この映画の面白いところは、まるで観客も傍聴人の1人になったかのように、裁判で明らかになる事実がゴロゴロあるということだ。初めは主人公に対して同情的な感情を持っていたのだが、裁判が進んでいくにつれて、検事側から提示される事実(と印象操作)の数々によって、一体何が真実なんだろうと疑いの気持ちが芽生え始めるのが印象的な作品だった。結局、死人にくちなし、何が真実なのかは明かされることなく、この話は終わりを迎える。よくあるあなたはどう思いますか?で終わるパターンの映画である。

 というわけで裁判に決着はつくもののビシッと回答が示される訳ではないので、好き嫌いは別れる作品であった。考察するのが好きな人にとっては非常に面白い作品なのではないだろうか。1番見どころはやっぱり夫婦喧嘩のシーン。会話のシーンがめっちゃリアル。このシーンのためだけに今まで練り上げたんじゃないかってくらい真に迫るものがあった。

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