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オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第26回 新規で農業事業を成功させるには?

第26回 新規で農業事業を成功させるには?

一般的に農業事業は、「市場価格が高価な農作物栽培=儲かる」と考えられがちですが、実際にはそうではない場合が多々あります。新規参入した多くの生産者(企業含む)は数千万~数億円単位の多額の初期投資で高級農作物を栽培しようと試みますが、ROI (Return On Investment)に苦しみ最終的には失敗するケースが多く見受けられます。今回は失敗しない農業事業について詳しく解説していきます。

現在、豪州農業は、労働者不足、異常気象などによる影響を受けているため、食糧生産を安定させることが最優先事項となりつつあります。そのため、国を挙げて現在抱えている問題を解決しようと、アグリテック(農業+テクノロジー)を大いに活用し、異業種を含めた企業が相次いで農業に参入しています。しかし、投資をする前には、大きな落とし穴があることも念頭に入れておく必要があります。

落とし穴:一毛作(年に一度の収穫)の作物栽培のリスク

例えば、いちごは新規参入企業にとって人気な作物であり、豪州で日本いちごブランドとして販売すれば、「高級いちご=儲かる」とイメージされがちです。ただ、年に一度しか収穫(株につき)チャンスが無いいちごは、販売できる期間は年間のうち数ヶ月間で、現金を回収できる期間が限られています(太陽光を使用しない完全閉鎖型植物工場で栽培される環境下では異なる)。例えば、収穫期間中に通常のいちごとの販売価格の差別化に失敗し赤字になった場合、撤回のチャンスは一年後しかありません。また、栽培期間中に病害虫が大発生し、駆除作業等に想定外の人件費が嵩んでしまう場合がよくあります。

オーストラリアでのいちごと葉物野菜(ホウレンソウ等)の施設栽培(太陽光利用型植物工場)下での年間リスクなどの比較表:

※ポイント
作物は、定植後数週間程の期間は、病害虫のリスクが小さく、収穫までの栽培期間が長ければ長いほど、病害虫リスクが上がる。それを数値化した。
定義は、
・スタート=1.0
・約2週間=0.1リスク

データ上では、いちご事業の方が売上があり、一見同事業の方がメリットがありそうですが、収穫タイミングが近くなるにつれ病害虫のリスクが上がるため、注意深くリスクを分析しなければなりません(トータルリスク:いちご=21、葉物野菜=13)。
総合的にみると、栽培期間が短く栽培中のリスクを最小限に抑えることができる葉物野菜の方が、新規参入においては参入障壁が低いと言えます。また、ランニングコストの面においても、栽培期間が短い方がコスト計算し易いメリットもあります。特に、ランニングコストで最もウエイトを大きく占める人件費は、栽培期間が短い方が、突発的な作業等の想定外の労働によって生まれる人件費を考慮する必要があまりないため、システム化したビジネスモデルを作り易い特徴があります。

最終的な利益を考える場合、いちごと葉物野菜の事業の売上にそこまで差異がなくなり、かえって葉物野菜の方が収益が上がるパターンも考えられます。ただ、葉物野菜等は、定期的に収穫できるため、事業を始める前に安定した納入先を確保しておくことが重要なポイントとなります。

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