見出し画像

オーストラリア農業の先進性から学ぶ! 第15回 持続可能な農薬管理

今回は、オーストラリアで使用されている「農薬」についてご紹介します。農薬にはネガティブなイメージがつきものですが、オーストラリアのような大規模農地では、農薬がなければ人手不足や土地管理の問題が生じ、農業事業の維持が困難になることがあります。このような状況では、農薬は必要不可欠な存在と言えるでしょう。
しかし、近年では環境保全型農業の推進が進んでおり、これに対応するための様々な試みや取り組みが実施されています。
日本の農業者の皆さんにとっても役立つ情報が盛りだくさんですので、ぜひ最後までご覧ください。

オーストラリアの農薬事情

オーストラリアは、特有の動植物が豊富に生息する国です。そのため、農作物の品質管理において、農薬の使用には環境への配慮が欠かせません。また、オーストラリアは人権を重んじる政策を採用しており、人体や環境に安全であることが確認された農薬のみが使用許可されています。これにより、農薬の使用が制限されつつも、効果的な農業が行われています。

世界一の有機農産物
オーストラリアは、世界一の有機農産物の栽培面積を誇ります。そのため、農薬の使用量は最小限に抑えられています。多くの農業生産者が、生物学的防除(IPM)を取り入れています。IPMとは、病原菌や害虫の天敵となる微生物や昆虫類、性フェロモンなどを使って病害虫を防除する方法です。これにより、農薬の使用量を減らしながらも、作物の健康を保つことが可能となっています。

低湿度と病害虫の発生
オーストラリアは広大な国土を持ち、地域によって気候は大きく異なりますが、多くの農業地帯は比較的乾燥した環境にあります。湿度が低い地域が多いことは、病害虫の発生に大きな影響を与えます。病害虫の発生には、一定の湿度が必要です。多くの病原菌や害虫は、湿度の高い環境で繁殖しやすくなります。例えば、以下のような理由があります。

菌類の発生抑制

  • 菌類の発生条件:多くの植物病原菌は、高湿度の環境で繁殖します。湿度が高いと、植物の表面に水分が残りやすく、これが菌類の繁殖を助けます。

  • オーストラリアの低湿度効果:オーストラリアの乾燥した気候では、植物の表面に水分が長時間残ることが少なく、結果として菌類の発生が抑制されます。

害虫の繁殖抑制

  • 害虫の発生条件:多くの害虫は、湿度の高い環境で繁殖しやすくなります。湿度が高いと、昆虫の卵や幼虫が生き残りやすく、成虫へと成長しやすくなります。

  • オーストラリアの低湿度効果:低湿度環境では、害虫の卵や幼虫の生存率が低下し、成虫になるまでの過程での生存率が下がります。

農薬の定義と種類

農薬とは、農作物を害虫、病気、雑草など有害生物から守るために使用される薬剤のことです。ただし、肥料や畜産に使われる薬剤は含まれません。具体的には、以下のような種類があります。

効果的な農薬の使用法

農薬には「使用適期」があり、この時期を逃すと十分な効果が得られないことがあります。農薬のラベルや製品安全データシート(MSDS)をよく読み、特に「使用適期」を理解して使用しましょう。使用適期は、数多くの薬効試験の結果に基づいて定められています。これを守るだけで、防除の効率は格段に向上します。

例えば、「For the prevention..」(予防のため)と記載されている農薬は、病害の発生後に散布しても効果がありません。「For the control..」(制御のため)と記載されている農薬は、既に成長した害虫には効果が出にくいです。使用適期を逃さず、適切な時期に使用することが重要です。

オーストラリアで農薬を使用する前に確認すべきこと(日本の農業現場でも参考になる)

  1. 農薬がオーストラリアで許可されているか確認する
    Agricultural And Veterinary Permits Search で農薬名または許可番号を検索してください。

  2. 農薬のラベルをよく読む
    使用方法、使用量、使用時期、使用地域、使用上の注意などを必ず確認しましょう。使用資格が必要な農薬もあります。

  3. 農薬を適切に使用・保管する
    使用方法は必ずラベルに従い、農薬は子供やペットの手の届かない場所に保管します。使用後の容器は適切に廃棄してください。

  4. 環境への影響を考慮する
    農薬は水質汚染や生物多様性の減少を引き起こす可能性があります。使用量を減らし、有機農薬など環境負荷の低い農薬を選ぶことも検討しましょう。

オーストラリアの主要農薬会社

以下の企業は、オーストラリアで農薬を供給している主要な企業です。各社の製品や情報を参考にして、農薬の選定に役立ててください。

  1. Nufarm Limited (ヌファーム・リミテッド)

    • 本社:メルボルン

    • 主な製品:殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤など

    • ウェブサイト:Nufarm

  2. Bayer CropScience Holdings Pty Ltd (バイエル・クロップサイエンス・ホールディングス・オーストラリア)

    • 本社:シドニー

    • 主な製品:殺虫剤、殺菌剤、種子処理剤など

    • ウェブサイト:Bayer CropScience

  3. Sumitomo Chemical Australia Pty Ltd (住友化学オーストラリア)

    • 本社:メルボルン

    • 主な製品:殺虫剤、殺菌剤、除草剤など

    • ウェブサイト:住友化学

  4. BASF Australia (BASFオーストラリア)

    • 本社:シドニー

    • 主な製品:殺虫剤、殺菌剤、除草剤、植物成長調整剤など

    • ウェブサイト:BASF Australia

  5. Syngenta Australia Pty Ltd (シンジェンタ・オーストラリア)

    • 本社:シドニー

    • 主な製品:殺虫剤、殺菌剤、除草剤、種子など

    • ウェブサイト:Syngenta

日本の農業者の皆さんへ

日本の農業者の皆さんも、オーストラリアの事例を参考にすることで、環境に配慮した農業の実現が可能です。特に、生物学的防除の導入や農薬の使用適期を守ることは、効率的かつ持続可能な農業経営に繋がります。また、有機農薬の使用を検討することで、環境負荷を軽減し、作物の品質も向上させることができるでしょう。環境に優しい農業を目指し、効率的な農薬使用を心がけることが、持続可能な農業経営への第一歩です。
日本の農業がさらに発展することを願っています。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?