見出し画像

「自殺学」授業動画の公開について

思い出話になりますが、私自身が自殺という現象に興味を持たざるを得なくなってしまって(自分で望んで興味を持ったわけではないのです)、初めて手にした自殺に関する体系的な知識というものは、高橋祥友先生の「自殺の心理学」という新書でした。

地元の駅前の小さな本屋の新書コーナーで買ったのですが、当時、おそらく800~1000円前後くらいだったと記憶しています。高校生だった自分にとって、週刊少年ジャンプ1カ月分弱の価格なので、出費としては痛いは痛いのですが、買えないことはない価格でした。(この本は、購入から十年以上経ってから、高橋先生に初めて直接お会いした際にサインをしていただき、今でも研究室に飾ってあります)

この本が出版された1997年という年は、1998年の自殺者の激増の前夜であり、自殺対策基本法の10年ほど前の時代ということになります。今よりももっともっと自殺という現象に対する社会的興味・関心が限局的だった時代の日本の自殺に関する科学的研究を支え、こうした活動を継続させていたという功績が、この本にはあります。読んだ当時は、そんなことを考える力は当然ありませんでしたが、今思えば、この本に最初にあたったことは非常にラッキーなことでした。書店員さんに感謝をしたいものです。

今の若い人が当時の自分と同じ状況におかれたとき、駅前の小さな本屋に行くという選択肢は、だいぶ無くなってしまっているだろうと思います。まずは、スマホで何らかの情報を検索するのが普通だろうと思いますが… これだけ情報が氾濫する世界にあって、上述のような良質な情報源にたどり着けるか否かは、けっこう心もとない部分があると思います。

そんな状況をこれで劇的に変えることができるとは思わないのですが、私の方で作成した「自殺学」の授業動画をここに公開しておきたいと思います。以下のリンク先のGoogle ドライブに、mp4ファイルで動画を保存してあります。電車での移動中などに、スマホで見てもらえるといいかなと思います。

具体的な講義の(保存してある動画の)タイトルは以下の通りです。

・自殺とは何か
・自殺の現状
・自殺生起過程
・自殺への危機介入
・自殺と精神障害
・自殺と自傷
・自殺とメディア
・自殺と文化
・自殺は予防すべきか
・自殺対策の効果
・自殺対策の価値
・幸福な人生

一応、内容については引用も含め気を使っているつもりではありますが、何か問題がありましたら、ご指摘いただければ幸いです。動画はタダですが、活字を読みたいという人は、教科書「自殺学入門」を読んでいただいた方が、よりコンパクトにまとまっているかなとは思います。

私が「自殺の心理学」を読んで、気づけば心理学者になってしまっていたように、どのような形かはわかりませんが、未来につながるといいなと勝手に思っています。

■ 責任編集 末木 新(和光大学 教授)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?