労働者の賞与(ボーナス)について

賞与が支払われない場合,請求できるか

賞与(いわゆるボーナス)というものは,就業規則に規定されているからといって,当然に請求できるものではありません。

各期の賞与につき,労使の交渉または使用者の決定により算定基準・方法が定まり,その算定に必要な成績査定もなされて初めて発生するものと考えられています。

したがって,就業規則に「賞与を支給する」とだけ規定されていても,具体的に請求できる状態とはなっていないと考えられます。

例えば,営業社員のインセンティブボーナスにつき,会社が支給基準を決めていないので賞与請求ができないとなれています(UBSセキュリティーズ・ジャパン事件:東京地判平成21年11月4日)。

もちろん,算定基準・方法が定まっている場合には,成績査定を実施するように請求できますし,得られるはずの査定点による賞与の請求も可能であると考えられます。

支給日における在籍要件は有効か

次に,賞与は,就業規則等において,支給日や基準日(支給日の1か月前など)に在籍する者にのみ支給するという取扱いをしていることをよく見かけますが,この取扱いは,概ね適法と判断されるケースが多いです。

実際に,賞与について,基準日に在職するか,基準日前1か月以内に定年退職ないし死亡した者にのみ支給する,とする取り扱いが有効とされています(JR東日本事件:東京高判平成29年12月13日)。

したがって,賞与の支給について在籍要件を規定している会社では,労働者は,支給対象期間に勤務していても,支給日や基準日に在籍しなければ,賞与が支給されないという可能性が高いです。

具体的には,支給日において在籍しているという要件が,自発的に退職した者との関係で適法とされています(大和銀行事件:最一小判昭和57年10月7日)。

さらには,

・退職日を自ら選択できない定年退職者(カツデン事件:東京地判平成8年10月29日)
・労働協約により退職日を夏季賞与の支給対象期間満了前の日とされた希望退職優遇制度の利用者(コープこうべ事件:神戸地判平成15年2月12日)

などの場合においても,支給日在籍要件が有効とされています。

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