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一人時間の効能 東京の天丼

東京の空というものは、なにか気取っていて、自分には合わないなぁなどと思っていたのだが、今やそれにも慣れてしまっている。
気付けば茨城で暮らしていた年月よりも長い時間を東京で暮らしいているのだった。
ともすれば、何食わぬ顔で、自分が東京の人だと錯覚することがあり、そのたびに、はっと正気を取り戻し、茨城に謝罪すること25年。
あっという間の時間だった。

というわけで、わたしの散歩道(さんぽどう)は東京人を気取ったものではなく、あくまでも根底に流れる田舎者魂を軸として成り立っている。
どのような意味かと申せば、初心忘れるべからず。東京にいちいち感動するということ。
東京へ来て、25年経った今でも田舎者らしく、こちらの文化に敬意を払う、それがわたしの流儀。

その日は南千住から千束へ、その後、浅草を経由し向島というコースを楽しんだ。

ここで一つ
散歩の醍醐味といえば、途中で食するランチとそれに合うビールをセレクトすること。
新規のお店、もしくは行きつけのお店、少し歩けば小腹がすいて、なんとなく食べたいものが頭に浮かぶもの。

江戸前の寿司でもつまんじゃおうかな?
なんて思っていたら、天麩羅を揚げるあの香りが。

そこは静かな商店街。
ひっそりと営む歴史のあるお店。

こちらのお店では一択。えび穴子天丼を注文。
ビールは数種類の中からサッポロラガー。通称、赤星に。
適度な苦味が甘辛いたれと合うでしょう。 

そしてビールと香の物が運ばれ、メインディッシュを待つ。
ビールをグラスに注ぐ音をしっかりと感じ聴覚を刺激し、極上のビール体験を味わう。
これが粋な大人の嗜み。

そこへお目当ての天丼が運ばれる。

えび穴子天丼

このビジュアル。いつ見てもかっこいい。えびと穴子が絡み合うワイルドな塊の上に、しし唐をさし色に使い、タレの色を纏った、なんとも東京らしい粋な装い。

ごま油の香り。サックと厚めの衣。口に広がるタネとタレが生み出す旨味のハーモニー。もちろん、えびと穴子が主役なのだが、オリジナリティーあふれる衣とタレ達の脇役がにくい。

音楽で例えるならばピアノ協奏曲。美しいピアノの音色とメロディーを軸にしながら、オーケストラが見事に絡み合う。

この天丼。壮大な一杯だなあ。

さすが東京だ。
天丼を食べた後は、向島へ向かい、庭園を散策し草木と小鳥たちに癒された。

その後、自宅近くまで歩き、行きつけの喫茶店でアイスティーを飲みながら、読書を楽しむのであった。
東京で飲むアイスティーは、一味違うなあ、、、なんて思いながら。

アイスティーとキンドル

帰宅後は早めに風呂に入り、軽く一杯やりながらのんびりと音楽を鑑賞する。

誰にも邪魔されることなく好きなことをして過ごす休日。
一人時間が与えてくれる効能は、心地のよい疲れ。  

わたしはドビュッシーの「ピアノと管弦楽のための幻想曲」を聴きながら、夢の世界へと
寝落ちをするのでした。。。

散歩とは、そぞろに歩く一人時間。
早起きし、光を感じ家を出る。
歩けば溢れるセロトニン。
美味しいにおいに誘われて、昼からビールを少しだけ。
さらに歩いてセロトニン。
気づけば夕日が美しい。
出会った人や景色に感謝。
今日も五感を刺激され、程よい疲れが心地よい。
今夜もぐっすり眠れそう。

shiba









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