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多様性がないとどんな悲劇につながるのか~「多様性の科学」から学ぶ

株式会社アイリッジ取締役の渡辺智也(わたなべともや)です。
※Twitterもやっています!

「究極の鍛錬」、「RANGE」と紹介してきましたが、もう1冊。
「多様性の科学 画一的で凋落する組織、複数の視点で問題を解決する組織」で、組織の多様性がなぜ必要か、学びがいくつかありましたのでご紹介します。

「多様性の科学」はこちら

<目次>
1.新たなメンバーが新たな課題に気づく
2.多様性がなかったことで生まれた悲劇
3.リーダーは意思決定者ではなく説得者なのでは

1.新たなメンバーが新たな課題に気づく

私はアイリッジという“組織”を経営していますが、最近、メンバーの年齢や性別だけでなく、バックグラウンドも多様になっている実感があります。
この多様性は、時々めんどくさく、時々驚くほど威力を発揮することもあり、効果としてはどうなんだろう?という素朴な疑問がありました。
そんななかこの本を読んだわけですが、なるほどな、と思ったのはこの図のようなことです。

この図にあるように、組織として常に何らかの課題に直面するわけですが、いつもと同じような人が集まるといつもと同じような課題の幅でしか気づきが生まれません。
当然解決策も同様で、いつもと同じような解決策が生み出され、部分的には課題が解決されますが、まだ課題は残っている、という状態に陥ることになります。
ここに、いつもとは異なったバックグラウンドを持った人が入ってくるとどうなるか。
今まで気が付かなかった課題に気づいたり、今まで思いもつかなかった解決策が提案されたり、といった可能性が高まります。違う人が増えると、別の視点の課題に気づくことができる、というわけです。
その結果、課題の全体像が見えたり、より本質的な課題に気づくことになりますよね。

経営者として、先を意識しながらマネジメントをする身として、気づけなかったことに気づける可能性が高まることは、変化の激しいビジネス界ではチーム作りの必須要素になりそうだな、と感じました。

具体例として紹介されていたのが、イングランドのサッカーチーム。
チームが強くなるためにどうしたらいいか、を考えるのに、これまではサッカーチームの中に閉じて議論していたそうです。
そこから、卓球の専門家、トレーニングの専門家、軍隊の部隊長などが選ばれ、みんなでイングランドのサッカーを強くするためにどうしたらいいのかを議論してもらったそう。
そうすると、軍隊だとこういうコミュニケーションをとるよ、こういう練習の方法があるよ、というふうに、サッカー業界ではトライしたことのなかった新しい気づきが生まれました。
まさにこうした取組みが、チームを強くしたり、イノベーションを生み出したりすることにつながるんですね。

2.多様性がなかったことで生まれた悲劇

多様性がなかったことで生まれた悲劇についても紹介されていました。
「9.11」は今も記憶に残る大事件ですが、実はアメリカ・CIAは事件発生前に犯人たちの情報を入手していたのだそうです。
ところが、CIAは90%以上が白人で構成され、イスラム系やアラビア語を喋る人はほとんどいない状態で、情報が入ったとしても、彼らがどういう考え方を持っているのか、どのような価値観なのか、何に対して課題感があるのか、何を求めているか・・・などを理解することが難しかった、といわれています。
つまり、情報は入っていたけれど、その情報のとらえ方がわからなかったことで、事件を防ぐことができなかった、ということです。
これを「同質性の罠」というのだそうで、恐ろしいことだな、と身震いしました。

また、私もアメリカにMBA留学中、多くのケーススタディから学びましたが、本の中でもケーススタディの事例が紹介されていました。
ハーバード大学で取り扱われる、「カーレーシングチーム」のケースです。
内容はこんな感じ。
 ・1時間後にとても大きなスポンサーがつく重要な大会が控えている
  勝てばスポンサーを受けること継続されて、レーシングチームの運営は将来にわたり安泰になる
 ・レース車がエンジントラブルで事故を起こす可能性が残っている(グラフなどで紹介されている)
 ・あなたは、1時間後のこのカーレースに出場するかどうかの判断をする

実はこのケースは、NASAのチャレンジャー号のケースがベースになっているのだそうです。
NASAは、定量的な分析に基づいて答えを出すことが徹底されている組織です。
打ち上げの直前に「もしかしたら爆発するかも」「飛ばすか飛ばさないか」という状態だったそうですが、チャレンジャー号のパーツには定量的なトラブルがあることが証明できませんでした。
トラブルの存在を証明できなかった→トラブルがない可能性がある→発射しよう・・・という思考の流れだったそうです。
その結果は皆さんがご存じのとおりで、大変悲惨な事故となりました。
ここからNASAでは、「不十分なデータで意思決定してはいけない」「数値に頼りすぎてもいけない」という教訓が生まれたそうです。

3.リーダーは意思決定者ではなく説得者なのでは

こうした失敗事例を見ると、強烈な成功プロセスを持った組織ほど、そのプロセスを変化させるための勇気が必要になるな、と感じます。
数値を使って分析しきるという文化を捨て去る必要があるわけですが、果たしてそれを自分ができるのか。
なかなか難しいところだな、というのが本音です。

今までは「リーダーは意思決定すべき」と思っていました。
でも、意思決定するのがリーダーだとすると、リーダーは自分の意思決定を正当化しようとする "罠”に陥ることもありそうです。
そこで、リーダーは意思決定者ではなくて「説得者」だととらえると、少しニュアンスが変わってきます。
何か決めていることがあり、リーダーにそれを伝え、どう説得するか。
説明するために様々な視点を考慮するでしょうし、もしも説得できなかったとしたら、自分の意見をよりよく変えるきっかけにつながるかもしれません。
また、指示命令系統とコミュニケーション系統は同一である必要はない、とも思いました。
指示命令系統は「部長→課長→係長→メンバー」と流れていくとしても、コミュニケーション系統まで同様のプロセスに固執することはなく、「部長→メンバー」に直接たずねる、なんていうやりとりがあったほうが様々な情報が入ってくるでしょう。

組織の多様性を増やすために、リーダーとしてどうあるとよいのか、これからも好奇心をもって調べたり経験したりしていきたいところです。

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