【side A】市場規模とポジショニングのお話

要約


マーケティングでポジショニングのお話をすると、ポジショニングマップを思い浮かべませんか?

また差別化って言葉よく聞きますけど、本当の定義って知ってます?というお話

要約終わり



さて、本文に入りましょう。

新しい商品やサービスをリリースするにあたって、やることの手順といえば

1.市場規模の資料をまとめて参入するに値するかの検討をする(ブルーオーシャンとかですかね)
2.競合他社のリサーチをしてベンチマークをする(3Cとかですかね)
3.自社の強みをまとめる(SWOTとかですかね)
4.それらを検討する

間違いではないですね。有名なコンサルティングファームもやってますし。

同じように既存の商品の見直しでも、これらに基づいて、市場の何パーセントにリーチしているとか、競合に比べて自分たちのどこが良くて、どこが悪いのか、チャレンジャーなのか、ニッチなのか、ポジショニングマップや自社イメージのコレスポンデンス分析の結果を交えてそういった議論をする姿が想像できます。

が…、

イケてる会社の会議室風景に見えますが、僕は違和感いっぱいです。

まずは市場規模からみてみましょう。

市場規模の出し方ってどれぐらいの方が意識しているのでしょうか。
何とか総研が出しているという出典と統計の時期ぐらいは意識しているでしょうか。

市場規模を出すには、まずは市場を定義する必要があります。
例えばお持ち帰りの食材(中食とも言いますが)を想像してみましょう。

デパ地下の総菜、オリジン弁当などのお弁当屋さん、もちろんコンビニやスーパーのお弁当やお惣菜もあれば、最近の冷凍食品は解凍するだけで食べることができたりするので、これも中食なのでは?と思ったりしてしまいます。

これらは産業・業態別、目的や効用など、その観点の置き方で、市場のサイズも隣接する類似商品サービスの含め方も違ってしまうのでなかなか難しい線引きですね。
ザクっと言ってしまえば、これから自分たちが戦おうとしている競合だったり、売り上げに影響する周辺環境で定義づけするのが市場規模データの用途としては正しそうです。

ではいったん範囲を決めたとしましょう。
次にやることは市場規模の推定ですが、ここで出てくるのはトップ何社かの売上データと市場シェアです。
トップ5社があってそれらが20%ぐらいのシェアを握っているならば、5倍してあげれば市場規模の出来上がりですね。

※ちなみに市場規模の似た概念で経済効果みたいな話も出てきますが、これは経済学では誘発される副次効果も複利的に折り込むので、ニュースで出てくる規模はいつも「え。そんなに?」という大きさになりますね。

さて、話を元に戻して市場規模ですが、これには少し罠があって同じ100億円でも違いがあります。

A.トップ1社がシェア50%を握っていて、あとは数パーセント台の企業がひしめく100億円市場
B.トップ5社がシェア15%ずつを握っている(計75%)の100億円市場
C.トップシェアと呼べるような企業がおらず100社以上が1%のシェア争いをしている100億円市場

さて、ここに参入、あるいは現在すでにサービス展開しているとして、同じマーケティングが通用するでしょうか?

Aのケースが最もわかりやすいですが、この市場はトップ企業が実質デファクトスタンダードなので、たとえ10%のシェアを目指してその他大勢の競合を駆逐したとしても、トップに勝てる要素があるのかないのかの勝負になります。
また、このケースの場合、この市場のルールはトップ企業が決めているので、相手の土俵で常に戦い続ける必要があり、それをひっくり返す必要がありますね。

Cのケースは仮に大企業が参入をするとなると、たとえ同じレベルのサービスを出したとしても、知名度や資本力でひっくり返してしまい、力技でAの状態に持っていけるかもしれません。
実際はそんなに簡単なことではないのですが、これらは実はシャンプーやら冷凍食品やら、消費財市場に多く、マーケティングの教科書によく載っている事例です。このため、マーケティング理論の多くが実はこの市場とルールを前提に構築されています。

さて、Bですがこの中で言えば、僕はBが一番参入しやすいように見えます。
トップといっても拮抗しているため、どこかが特許を持っていたり、業界のルールを変えられるほどのパワーを持ってなさそうですし、残り25%のその他大勢の市場があります。
トップ企業をうまくベンチマークしながら、下位のシェアから吸収していき、戦えるレベルのサービスが提供できるステージになってくれば、トップ企業のシェアも少しずつ奪っていくシナリオが想像しやすいですね。

※実はDパターンがあり、一人当たりの購入単価から年間消費を出して、それを買いそうな人数を掛け合わせて積み上げていって市場規模を出す方法もあります。
この方法だと、よく使う商品やサービスなら購入額も利用する人数も想像しやすいので、現実的なフェルミ推計になりそうですね。
ただ、ここで議論に混ぜてしまうとA~Cをディズれない…ではなく、例示として混ざってしまうので、省きました。

ここまでの説明を眺めると、
気軽に「シェア10%を目指します。」
みたいな企画書がありますが、10%の攻め方、ずいぶん違うと思いませんか?
僕は企画書に市場規模が載っていたら、それは企画書の枕詞程度だと思って眺めています。

さて、前置きが長すぎるのですが、やっと要約で触れたポジショニングの話です。

想定される市場が違うのに、同じポジショニング戦略が通用するかといわれると通用しないので、長々市場規模の思い込みを解説してみました。


ポジショニングとはその名の通り、市場での立ち位置を決めることです。

ここで、立ち位置を決めるとなると、競合のベンチマークをしたことだし、ポジショニングマップを作って比較して…。
というお話になりそうですね。
まあ、作ってもよいですが、だいたいXとY軸で4象限に分けたマップを作りそうで、競合や自社をその軸に従ってプロットして…。
という作業になるかなと思います。
手の込んだ方なら、位置関係だけではなく、売り上げ規模でバブルチャートを合わせるかもしれません。

さあ、マップが出来上がりました。眺めてどうですか?なにかできそうですか?
自社と近そうなもの、あるいはベンチマークできそうな企業がどこかあたりをつけて、そこを攻めようみたいな話ですかね。

うーん。ダメですね。(言っちゃった。)

ポジショニングマップを作るなら、注目すべきは出来上がったマップではなく、どの軸をどの観点で作るかです。

なぜなら、企業にとって自社のサービスを比較されてはいけないからです。

え。なにそれ?
という話になりますので、それは答え合わせのノートに書きますね。
※差別化の話をここでしようと思ったのですが、ネタバレになるので予告編ってことで…。





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