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患者に病院を選ぶ場所に行けば「なんでも治せるお医者さん」になれる【総合診療医のなり方】

この話は、「なんでも治せるお医者さんってどんな医者だろうか」ということについて語ったものであり、特定の病院に勤務する医師を擁護するものでも、揶揄するものでもありません。

著者記す


「なんでも治せるお医者さん」って、なんだろうか。どうやってなるんだろうか。

19番目のカルテ 徳重晃の問診」に登場する滝野先生が、子供の頃から夢見ていたものだ。


例えば実習に行っていて、こんなことを思う。

大学病院の消化器内科にいる人間は「黄疸」とか「腹部膨満」とかそういう、腹部に関係する症候学ばかり診療しているな‥

大学病院の血液内科にいる人間は「貧血」「易出血性」の患者ばかり診ている印象がある。


そしてこんなことを妄想する。

総合診療医は、37あるとされている症候学(医学部コアカリキュラム参照)の全てに精通しているんだよな‥エグくない‥?血痰、間欠性跛行、腹痛、呼吸困難まで全て‥



故に総合診療医には「幅広い知識が必要」だと考えるのだろう。

でも、実際にそんなことをしているわけが無いじゃないか、とも考える。

そんな事(37の症候全てに対応する)をするのが総合診療だと言うのならば、総合診療医を目指す人間は、知識モンスターしかいないはずじゃないか。


というわけで、私は総合診療医のイメージを取りそこねている気がするのです。極端な例を考えて自分の仮説を誤っている、とするのはよくあること。


そもそも、先生の方から進んで消化器内科(狭義)になっている訳では無いのだと思う。

狭義、というのは消化器内科的疾患しか診ない医師、ということ。総合診療医が37の症候を診ている、とした時に対比される表現)

では、一体どんな因子が消化器内科(狭義)たらしめているのか、ということを考える。
今日考えたいのは、どこに就職するか、ということだ。

大学病院では、患者は医師の意志で進む

大学病院という場所は初診は紹介制であるから、消化器内科のところには腹痛とか血便の精査の人とか、そもそも消化器内科的な疾患があると疑われる人しか来ない

大学病院の消化器内科に、耳鳴を主訴とする人間は来ない。というか、紹介されてこない(患者が大学病院に紹介されて来て突然「最近耳なりがするんです」と言い始めるパターンはあるが)

そこに勤める人の立場からしても、来ないのだから勉強する必要は無いし、する気も起こらない。これは非常に単純な話だ。病院の看板とか制度が、患者を振り分けてくれているのだから。


疑問1: じゃあ、大学病院の総合診療医はどんな人が来るんだろうか?



市中病院やクリニックには、患者は自分の意志でやってくる

では、市中病院に就職した場合はどうだろうか。

腹痛だと思った人が実は消化器に関係ない疾患だったりするし、それ以前に耳が痛いとか言い出す可能性は上がる。

紹介制度ではない場所では、患者が自分で病院の科を選んでやってくる

市中病院はクリニックなどの紹介状を持ってやってくることが多いです。ここでの市中病院、クリニックは「紹介状を持ってやってこない場所」という風に捉えて下さい。

市中病院には都合良く耳鼻科の先生が居なかったりするので、その消化器内科がその耳痛に対しても処理する必要が出てくる。

こうして行われるのが「必要に駆られた学習」である。



なんでも治せるお医者さんになりたいなら、患者に病院を選んでもらえる場所に行け?


何でも見たいと言うのであれば、ど田舎に行けば良い


ドがつかなくても、その地域にいる医者が自分と、あと数人、外来患者は1日に5-60人、という環境に行けば、自ずと「必要に駆られた学習」の範囲は広くなるはずだ。だって自分しかいないんだもん。


やったね、「なんでも治せるお医者さん」の完成だ(簡単に言うな)

地域に医者が自分と後1人、2人しかいないからと言って、別に勉強しなくても良いんだ。

でも貴方が知らないと匙を投げた時、それを拾ってくれる人はその地域に居ない。だんだん不安になってきた。


勿論知識がない人間(例えば国家試験が終わったばかりの初期研修医)を1人でそんな地域に放り出すほど上もバカじゃないと思う。

ちゃんと指導医というか、FBしてくれる上級医は付けてくれるはずだ。
そうじゃなかったらその地域を諦めているに違いない。


これが今の私の思う総合診療医だ。

なんでも治せる医師になりたいのであれば、何でも診れる場所に行く必要がある。少なくとも、大学病院は選択肢から外れるように思う。
知識モンスターでは無い何か、に私はなりたい。


もし読者の皆様の中に「いや、ここはちょっと違うよ」「総合診療医って、こういうのじゃないかな」というのがございましたらTwitterのDM, Noteのコメントで是非宜しくお願いします。



では。


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