「蔑む笑い」は古臭くて笑えない

今、人を傷つけることや差別に対して視聴者の見方は変わりつつあると思う。

たとえば私は、アインシュタインの稲田さんが「キモイ」とか言われてテレビの編集でいじられているのを見ると不快になる。

もちろん稲田さん自身が売り込み、受け入れてお笑いに還元しているからこそ面白い感じになるわけだが、彼の内面ではなく外面だけで蔑んだように軽くいじるのが嫌いなのである。
そこの塩梅というものは人それぞれだと思うし、上手くいじっている番組もあると思う。でも私は大体の番組で笑えないし、いつも逃げるようにチャンネルを変える。

外見は個性だ。全員違うし、似ている人もいれば特に違いが大きい人もいる。そこに対して目を瞑れという話ではない。

ただ、「蔑む」のは絶対に違うということだ。
ここをお笑いに落とし込むと途端にナイーブな話になるから難しいし、稲田さんは自身の特徴的な見た目を武器にして売れているわけで、いじられてなんぼみたいなところもあるのだと思う。

人柄を全て知った上で合意の下の「鉄板のやり取り」ならば、まだ受け入れられる。その言葉を発する前に関係性があって、お笑いのスタイルに落とし込むならばフォローはあるのかもしれない。例えば相方がつっこむとか。

でもTV番組は編集者が印象操作をすることが出来る。テロップをおどろおどろしいフォントにしたり、まるで本人の感情かのようにナレーションをつけることもできる。本人の意図とは異なる方向性に転んでしまう場合だってある。

お笑いは、今やいじるだけで生まれるものではないことが証明されている。ぺこぱは「ノリつっこまない」スタイルを確立したし、お笑いの選択肢は何かを下に見て笑うだけではないのだ。

私はSnow Manというアイドルが好きで、彼らはParaviで「それSnow Manにやらせてください」という番組に出演している。

先日の配信でメンバーの深澤くんをモノマネ芸人のコロッケさんに紹介するくだりがあった。そのときにコロッケさんが「彼はイケメンだから…」と言ってくれた事に対してスタッフが「メンバーの中ではあまり…」といじる場面があった。
確かに深澤くんはいじられキャラで、「顔デカイ」いじりは鉄板となっている。これはよくメンバーの佐久間くんが振っている。
でも佐久間くんは深澤くんがどうすれば魅力を発揮できるかちゃんと計算しながらやっているし、雑誌のインタビューなどではやり取りにおける2人の信頼関係が伺える。
そしてSnow Manは、アイドルである以上カッコイイと思って応援しているファンがいることを決して忘れない。だから絶対に蔑んでいじることはないし、「不細工」なんて言わないし、むしろ ふっか(深澤くんのあだ名)はカッコイイ!とよく言う。(ふっかはマジでカッコイイです。色気があって、MCができて、めちゃくちゃイケメンです。YouTube見てね)

もちろんその前提を知っていたとしても、たまにSnow Manを見て「これでいいのだろうか」と思うこともある。でも深澤くんとメンバーが選んだ道ならば、正解なのだと信じたい。

そんな中で、先述したスタッフの言葉に対して、笑っておもしろポイントにしようとしつつも「そんなことない!!」とニコニコ柔らかく否定するメンバーの阿部くんを見て心の底からほっとした。

Snow Manは、人を傷つける笑いをしない。YouTubeの人狼ゲームの動画を見てほしい。誰かをいじらなくても、とても面白い。スタッフさんも編集に愛がある。それはきっと、視聴者にファンの割合が多いからというのも関係しているとは思う。でも、Snow Manを知らない友人も面白いと言うような作品になっているのだ。

それSnow Manにやらせてくださいのスタッフさんも、Snow Manに対する愛を節々から感じる。とてもよくリサーチしてくれているなと感じることが多い。だからこそ、もっと違うアプローチができるはずだと思ったのだ。

TV番組の露骨ないじり方は、きっと変われると思う。誰も傷つけずにお笑いをすることは出来るのだ。

毎日の制作に追われ、新しい教科書もないまま変革するのは大変なことだと思う。一度染み付いたやり方を変えることは、きっと私たちが想像する以上に難しい。
それでも、アップデートして欲しいのだ。YouTubeが台頭し、「テレビはつまらない」と言われるようになった時代の原因の一つはきっとここにあると思っている。
視聴者は必ずしも大きな起承転結やフリとオチを見たいわけではない。リアルで、優しい世界で笑いたいと思っている人は確実に増えている。

きっと新しいポピュラーは作れる。
蔑まない笑いが、もっと増えますように。

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