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孤島の鬼

以下の文章は自分の読書感想を思いつくまま書いたもの。個人の主観を多分に含んでいるため、苦手な方は回れ右してください。ネタバレあり。

本の情報(読了日:2022/1/28)
書名:孤島の鬼
作者:江戸川乱歩
出版社:オリオンブックス
ASNI:B077HRT275

この本は江戸川乱歩による長編推理小説である。主人公は30歳にもならない青年だが、すべての髪の毛が真白になっており、主人公の妻の腰には大きな傷の痕がある。これらの事柄についての経験が主人公の回想という形で語られている。

自分はこの話が推理小説だけでなく、怪異談や恋愛小説の要素や様々なマイノリティの要素も含んでいる部分が好きである。

注意!ここからネタバレあり。物語詳細を知りたくない人はここで回れ右してください。

主人公が当時(主人公25歳のとき)、同じ会社に勤めていた初代さんに恋をしたことからこの話は始まる。内気で少年のような主人公は初代さん殺人事件を解決しようとする。主人公はただの文学青年であり探偵ではない。にもかかわらず、耐えがたい恐怖に巻き込まれるまで事件を解決しようとするところは本当にすごいと思う。主人公の我慢強さや好奇心、女性への執着心がよく現れていると感じる。

主人公と初代さんがいい雰囲気だったものの友人諸戸が求婚者となり、不気味な老人の姿をみるという不可解な出来事があった矢先のことだった。主人公は大変な衝撃を受け、この事件の犯人を解決しようとする度胸には本当に脱帽したく思う。

この事件の不可解さと主人公とその友人との関係には複雑で難解ながら、興味深く引き込まれる。密室殺人事件であり、誰も侵入した形跡がない中で初代さんはなくなっていた。このトリックの種明かしは奇想天外で、面白かった。この事件解決には黒幕がおり、犯人だけでは終わらないところが面白さのポイントだと思う。

自分は前回読んだときと違い、主人公の恋愛に関する要素よりも事件解決のために1つ1つの要素を吟味している場面の方が面白いと思った。場面描写が繊細かつ丁寧で読者が容易に想像できるところがとくに気に入った。事件解決への展開が早すぎず遅すぎず、テンポよく進むためスピード感があった。事件詳細の各要素と主人公自身の解説が交互に展開され、推理小説にしては珍しく読みやすかった。

事件解決後、諸戸とともに雑記帳と彼自身の奇妙な生い立ちを糸口として黒幕を探りにいくところはハラハラしたし、印象深く思えた。この部分は冒険にでるような何か恐ろしいものを見に行くような気がした。自分にとってそれは、少年時代にいった肝試しのような気がしてなんだか懐かしく思えた。


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